その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

「なに? 集中が必要なんだケド」
 立ち止まって振り向いた。
 ぶつからないように止まる。
「|霊痕(れいこん)とか見えたり感じたりするんですか?」
「普通の状態で人から霊痕がつくほどのこことはないわ。おそらくだけど、今は、霊痕はさっきの『助逃壁』を壊す時の霊的ダメージのせいで霊が漏れているのよ」
「なるほど」
 橋口さんが指差す。
「神社があるんですって?」
 橋口さんの指さす、その方向だったはずだ。
「ええ。ありました」
「御神体の影が出来る場所があるわ、おそらくそこだとおもう。私に何かあったら、フォローよろしく」
 橋口さんが自身の巨乳を持ち上げながら、ウィンクする。思わず|巨乳(そこ)に目がいく。
「えっ?」
「この前、私が気絶してたところを助けてくれたの、忘れた?」
 いや、あの時は、あの、その、橋口さんのおっぱいに夢中だったような……
「ま、あなたの本能の話だと思うから、大丈夫でしょ」
「?」
 すると橋口さんは、まるで行先をしっているかのようにまったく悩むことなく道を選択する。
「ちょっと待っ……」
 自然と足が止まった。
 まっすぐ見据えた先きには、おっさんと、おっさんに金を渡していた男がいた。
 金を渡して、霊を憑けられた男は、今、軍服を着ていた。
 長身痩躯。軍服に軍の帽子、上から|外套(マント)を羽織っている。
 こっちに気が付くと、男は|外套(マント)をはらった。その手には五芒星が書かれた手袋……
「しまった!」
 橋口さんが言うと、俺は目の前が真っ暗になった。
 布が顔に掛かったようで、もがいて手に取るとそれは橋口さんのトレンチコートだった。
「……くっ」
 目の前で橋口さんが倒れている。
 抱き起そうと近づくと磁石が反発するような力を受ける。
「うわっ!」
 強力な磁石で弾かれたようにしりもちをついてしまう。
「結界よ……」
「結界?」
「単純な結界だけど、単純な分、強力なの。普段なら引っ掛からないんだけど……」
「霊痕ばかりにきを取られているからだ……」
 ニヤリ、と笑った。そしてハゲのおっさんは、こっちに手を振る。
「じゃあな、除霊士さん」
 おっさんは懐から白い紙を取り出すと片手を顔の前に立てて祈る。
 すると、白い紙が空高く飛んで行きながら、大きくなり、色が黒くなった。
「アァーアァー」
「カラス?」
「しまった」
 橋口さんは立ち上がろうとするが、何か見えない力に押し付けらるかのように地面に押し付けられる。
 長身痩躯の男が関係しているようだった。
「じゃあな」
 カラスの足に綱を投げつけると、カラスがそれを掴んだ。
 ハゲのおっさんはそのまま空へ引っ張り上げられて、消えて行った。
「くっ、逃げられた」
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 俺はそれを止めに跳び出そう、とすると、
「待ちなさい」
 と言われ橋口さんに腕を掴まれる。
「もう間に合わない」
「けど……」
「あなたは他の客を避難させて」
「なんて言って説明すれば」
「そんなこと考えて」
 橋口さんはVIPルームへ近づく。俺はホールの真ん中で言う。
「VIPループで危険物が見つかりました。慌てないで、速やかに店の外に出てください。皆さん、慌てず、店の外へ出てください」
 夜も遅くなっていて、満員という状態ではなかったが、結構な数の客が出入り口に急ぐ。慌てて会計をする店員。
 会計を任せた客はどんどん出ていく。
 VIPの扉を少し開けて、橋口さんは中を覗く。
 客が出て行き静かになったホールで、突然俺のGLPが警告音を鳴らす。
「なんだ?」
 見ると『助逃壁』の表示がフラッシュしている。
 初めて見る表示に、どう対応していいのか慌てる。
 VIPルーム側を見ると、GLPの警告の意味が分かる。『助逃壁』が捉えた霊体が多すぎて、破裂しそうなのだ。
「橋口さん、伏せて!」
「?」
 俺はジェスチャー伝えようと、手を広げて床に伏せるような仕草をしてみせる。
 意味に気が付いて、橋口さんが床に伏せる。
 遅れて俺も伏せる。
 物理的にVIPルームの扉が破壊されて吹き飛ぶ、店内を仕切っているガラスとそのガラスが一斉に割れる。
「うわっ!」
 大きな音が終わって、俺は立ち上がる。橋口さんが伏せたままなのに気付いて、助けに行く。
「橋口さん」
「私は大丈夫よ、連中には逃げられちゃったケド」
「えっ?」
 俺は破壊されたVIPルームの扉から中を見る。チーフが倒れ込んでいる以外に、人影はいない。
「チーフっ!」
 ホールの端で騒いでいる女の子に救急車を呼ぶように言う。
「チーフが倒れてる、救急車を呼んで!」
「私は奴らを追うわ」
「俺も行きます」
 チーフに応急処置をしてから、俺は立ち上がる。
「……あなた、麗子に何か指示されているわね?」  
 俺は自分の体を見た。
「?」
「いいわ。やれる範囲で。ついてきなさい」
 そういうことか、と俺は持った。冴島さんからの指示、確かにあった。『これからさき、この男に近づかないこと』つまり俺はその範囲内でしか動けないということか。
「はい」
 橋口さんが何かを感じ取るように通りを右に左に進み、気配を感じるように視線を配る。
 俺は急に動き出す橋口さんに置いていかれないように後をついていく。
「橋口さん」
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 以前、亜夢が見た、超能力者だけに見える幻影を仕掛けて置き、カメラで反応を記録するのだ。非科学的潜在力があるかを知る手法であり、超能力者避けでもある。大型商業施設は干渉波だけではなく、そういう対策が併用されることが多いのだ。
「えっと……」
 亜夢が説明すると、半ば聞いた時にアキナはホームセンターへ入っていった。
「アキナ、話は終わってないんだけど!」
「あたし調べたことあるから。それより、おトイレまにあわないのっ!」
 あっという間に、アキナの姿が見えなくなってしまった。
 亜夢は不安になった。
 美優と亜夢もホームセンターに入り、ゆっくりと店内を回りながら、フードコートに近づくと、亜夢は天井からつるされている装置に気が付いた。
 カメラもその装置から少しずれた位置から同じ方向を向いていて、間違いない、と亜夢は思った。亜夢は思い出したように、化粧室へ行くような独り言を言って、美優の手を引いて戻る。
「あそこ、あそのの天井にある。フードコートに入る時に油断する、と思っているのかしら」
 亜夢は指を上に向けて美優に伝える。
「あれか…… 緊張する」
「問題は先に行っちゃったアキナよ。このことをアキナに伝えないと。アキナ、一番近いトイレににはいなかったし」
「メッセージ送っとく?」
「うん」
 美優がスマフォでアキナに幻影装置の位置を知らせた。
「あっ、既読になった」
「どこにいんのよ、あいつ」
 そのまま美優が入力して、アキナの居場所をといかける。
「1Fに降りるエスカレータだって。あそこじゃない?」
 見ていると、アキナが降りてくる。
 二人が駆け寄る。
「どうしたの? 亜夢も美優も」
 さわやかな笑顔でそう言った。
「アキナが心配だったんだよ」
「え~ 大丈夫だよ? 何が見えても、怖がらなければいいんでしょ?」
「……簡単に言えばそうだけど」
 亜夢は思念波世界を使って、以前見せられた足元がなくなるような幻影を、二人に伝えた。
「へぇ。こんなだったんだ」
「こわいね」
「まあ、何かくる、と思って準備しておくしかできないわ」
 三人は互いにうなずいた。
「手をつないでいれば、どうかな」
「感覚から思念波世界を共有するの?」
「うん」
 それなら矛盾した世界を送り込んでくれば互いに比較して、すぐわかるし、一人が実世界を認識できなくなっても、思念波世界で実際の風景を送って補完することも出来る。
「それ、いいね。やろう」
 亜夢が先頭になって三人が手をつないでフードコートの入り口を通過する。
 いきなり、亜夢にはホワイトアウトするようなブリザードが吹き始める。美優は、大きな隕石が正面衝突してくる状況に、アキナは床に大きな穴が開いてそこへ落ちていくイメージ……
『見えてる?』
『先進んで』
 亜夢が一歩、一歩、自然な雰囲気で入っていく。
 亜夢のブリザードはなくなって、クリアな世界が見え始めた。
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