その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

「折りたたみ傘、買ったばっかりだったの! だから、持っていこうかなって」
「え〜偶然。それ、本当にラッキーアイテムかも」
 美沙が着替え終わると、二人は手を繋いで学校まで歩いた。
「今日は塾だよね」
「うん、あかねもでしょ」
「そうだけど。私教科数も少ないし。がんばってね」
「うん。それじゃ、また昼休み」
「じゃね」
 あかねは美沙を見送ると、自分のクラスへ入った。バッグを置いて席につくと、同じクラスの神林みくが近づいてきた。
 以前、この娘(こ)に河原でひどい目に合わされている。また、何か私に不満があるのだろうか、とあかねは身構えた。
「なに?」
「え? 何が」
「こっちに来るから、なにか用かとおもって」
「何も」
 みくは何かに気付いたように教室の出入り口の方を見た。
「上条があんたに用があるみたいよ」
「え?」
 あかねが出入り口を見ると、上条麻子(あさこ)が手招きをしていた。あかねは逃げるように教室を出て麻子のところへ走った。
「どうしたの」
「あっちで話さない?」
 あかねはうなずくと、麻子の後をついて歩いた。だれもいない美術室の前まであるいて来ると、周りには誰も居なくなっていた。
「どうしたの?」
「この前、あかねさ、先生に居残りさせられたでしょ?」
「うん」
 麻子はキョロキョロと周りを見渡した。
「?」
「なんでもない。その時さ、笹崎になんかされなかった?」
「笹崎先生に?」
 麻子は真剣な表情でうなずいた。
 あかねはきつい練習があっただけだ、と言った。
「暴力とか、問題になるようなことは一切なかったよ」
 まるで問題を隠しているかのような言い方ではあったが、逆に麻子は何か問題があったような聞き方だったので、この答えで良かったのだと思った。
「そう…… 何もなかったの」
「……」
 何か問題があってしかるべき、というような雰囲気だった。
「うん。ごめんね、わざわざこんなところまで呼び出して」
 その時は、それだけの会話で終わった。
 二人で教室の方へ帰る途中、あかねは思い出したことがあった。
 笹崎先生が顧問として部活を指導するようになってまだ長くないが、あかねにそうだったように、練習中に烈火のごとく怒り出したことがあった。たしか、その時に何度も怒られていたのが上条麻子だった。
 あの時も、居残りになったはずだ。
 どんな酷いことをされたのか、自分と比較してどうなのか、そういったことを聞きたかったに違いない。あかねはもう少し具体的に練習の状況を教えるべきだった、と思った。もちろん、練習後の秘密の行為については言うつもりはなかったが。



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 そうだ、私には昨日の昼過ぎからの記憶がない。あるのは、ただヒカリの記憶を一方的に見せられたものだけ。ダイジェストだけが必要なのに、等倍の再生しかできない感じだった。
「やってみる価値はあるかもね」
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 美沙に言われるままやってみるしかない。あかねはうなずいた。
「じゃあ、やるね」
 美沙は電源ボタンを長押ししてスマフォの電源を切った。切れたのの確認すると、再び長押しした。スマフォを手渡された。
「……あっ、起動してきた」
 あかねは画面を見ると、じっと待ってスマフォが光りださないことを確認した。
「光らない。よかった、直ったよ。美沙、ありがとう」
 上掛けから出てこない美沙の頭を抱きしめた。
「うん、良かったね」
 美沙は笑顔でそう答えた。
「私も寒くなってきた」
 美沙がそう言ってベッドから出て、部屋着に着替え始めた。
 すると、今度は美沙のスマフォに通知が来たようで、同じように光りが点滅し始めた。
 何か、ちょっと美沙の着替えが、止まったような気がした。あかねが声をかけようとすると、急に振り向いて、「あかねは先に寝てて」と言った。
 暗くて表情を読み取れなかったが、声の感じに問いただせないような雰囲気を感じ、あかねはそのまま無言でベッドに潜り込んだ。
 なんだろう、とあかねは思ったが、美沙の温もりでベッドがものすごく快適な温度だったせいか、考えを続ける間もなく眠りに落ちていた。
 翌朝、部屋の明るさで目を覚ますと、美沙は部屋にいなかった。
 深夜に起きた後、美沙が布団に戻ったのかあまり記憶がなかった。完全に眠りについてしまってからベッドに入ってきて、あかねが起きる前に起きたとしか思えない。あるいは、全く眠らなかったか、だ。
 バッグを用意し、制服に着替えると、あかねは美沙の部屋をでた。階段を下りて、部屋に入ると、美沙の作った朝食のいい匂いが流れてきた。
「おはよう」
「おはよー、よく寝れた?」
「美沙あの後寝たの? なんか全然記憶ないんだ」
「そうなの? 安心して。ちゃんと一緒に寝たよ」
「良かった」
 あかねはバッグを置くと、そのままキッチンに入った。
「何か手伝う?」
「もう出来るから大丈夫だよ。それよりコーヒーがいい? 紅茶にする?」
「じゃ、紅茶にする。家じゃ父のせいでコーヒーばっかりなの」
「あかねは、こっちにあるカップつかって」
 かわいい絵柄のカップだった。
 美沙も同じような感じで、少し落ち着いた感じのカップだった。
「ありがとう。じゃおさら持っていくの手伝って」
「うん」
 あかねは美沙がつくるサラダと、ベーコンとスクランブルエッグの皿を運んだ。美沙はスープと紅茶と、ソースや塩コショウをテーブルに運んだ。
 あかねと美沙は隣に座った。
「いただきます」
 手を合わせ、二人は食べ始めた。
 向かっている方向にテレビがあって、美沙がリモコンでつけた。
 美沙が何が見たいと聞いたので、いつも母が見たい番組を見ているので、カウントダウン占いをやっている番組がみたいと言った。
 二人で笑いながら朝食を済ませると、ちょうどそのころに占いが始まった。
 あかねの星座が最高で、美沙は下から二番目だった。けれどラッキーアイテムが折りたたみの傘だったので、美沙は喜んだ。



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