その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

「うん。それなら問題ないと思うんだ。けど、その制服の子はもう何度か見かけている。授業が終わっている時間の時の方が多いが、午前中にみかけたこともある」
 あかねは父の目を見ていられなくなった。
「青葉だけど、そういう子を見かけた通りは、結構ヤバイ通りで……」
 いい、その通りのことは知っている。あかねは遮るように言葉をかぶせた。
「えっ、もしかして、お父さん、そういうところ行くの?」
「いや、そこを抜けた先にお客さまのビルがあるから、しかたないのさ。あかねは、このヤバイ、って意味は知ってる? よね?」
 あかねは、うなずいた。
「たぶん、散歩だ、とか言ってるけど、絶対ヤバイんだから、あかねはそういう子にバイト誘われてもやったらダメだよ」
「わかってるよ」
 父は椅子を回して、壁の方を見つめた。
「うん。大丈夫だよな。出来ればそういうことしている子に言って、そういうバイトからやめさせた方がいいけど、それをしてあかねがクラスでいじめられたらとかも思うし。本当にそういうバイトかどうかは分かってないんだから、青葉にいたからって先生にいいつけるのも変だし。とにかく、そういうお友達とは距離をおいた方がいい」
 暑くもないのに、父は汗をかいたようで、手でおでこを拭った。
「うん。お父さん、大丈夫だよ。安心して」
 父はあかねの目を見つめ返した。
「うん。話してみて良かった。安心したよ」
 あかねはふと、妙なことを思いついた。
 クラスの子の写真を見せて、父のどの子が青葉にいたかを確認させよう。どの子と関わりになったらいけないのか、知りたい、と言えば父も教えてくれるだろう。
「お父さん。その子の顔とか覚えてる?」
「え、いや、どうかな……」
「ちょっとパソコン持ってくる」
 あかねは居間に戻ってやまとからパソコンを奪って父の部屋に持ってきた。
 そして、アップしていた写真をギャラリーモードにして見せた。
「誰と付き合ったらいけないか、わからないからさ、もしこの中にいたら教えてよ」
「お父さんの記憶力だから、過剰に信用せんでくれよ」
「いいから、それっぽい、っていうのでいいからさ」
 画像をめくって、神林、町田、山川の三人が出てきた。部活の時の写真だった。
「……なんか。みたことあるような」
「どの娘(こ)?」
 あかねは父の視線の先をみていた。
「この子はいたと思うよ」
 町田さんのことを指さした。
 ああ、とあかねは思った。
 一番インパクトがあるだろう。綺麗というか、可愛らしい。ザ・女子高生、とでも表現したくなるような感じだった。
「他は?」
「うーん、これだけじゃわからない」
 あかねは何枚か父の反応を見ながらめくっていった。
「あれ?」
「戻る?」
「うん、ちょっと今の」
 あかねは、意外な感じがした。
 体育館ではなく、校舎の中で撮った画像だった。
「この子だ。この子もいたよ」



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 様々な色の光りの輪が回転しながら、怪獣なのか再生途中なのか、不定形の物体に次々と突き刺さり、切り裂き、分断していった。
 しかし、真琴が大きく息を吸い込むと、その無限に降り注ぐかと思われた光輪が止まってしまった。
『フッ……フフフフ……』
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 いつものような会話のせいで、あかねは退屈になり、会話に加わりながらも笹崎と美沙のことを考えてしまっていた。
 窓につく水滴が、くっついて下に落ちてく。
 あれとこれを繋げて、大きな水玉にすると、大きくなりすぎて流れてしまう。あかねの大切な水玉が、となりに作ったやっぱりそれも大切な水玉と一緒になって流れてしまった。そんな気分だった。流れてしまったら、水玉ではない。
 本当に流れてしまった水玉なのか、それとも近づいたように見えただけで、まだ水玉の形をなしているのか、確かめないといけない。
「あかね? どうする?」
「えっ、なに?」
「次の分の餃子、焼く?」
「ああ、今何個残ってるの?」
「見ればわかるでしょ」
 更にはひとつしか残っていなかった。
 あかねはそれをつまんで自分の茶碗に乗せた。
「焼いて」
「了解」
 母はまた台所に戻った。
 やまとは自分でご飯を盛って食べていた。
 父はぼんやりとテレビを見ながら、ビールと小皿にとった餃子をつまんでいた。
「この人がクイズ得意なのは、いつ見ても納得いかないんだよな。キャラと違いすぎる」
 あかねはちらっとテレビを見た。
 男女で別れてチームを作って、相手にクイズを出し合う番組だった。もう何年も続いている。
「もうそろそろメンバー変えればいいのにね」
「う〜んでも、メンバー変えるとバランスが狂うよな」
 いつも同じ番組をみて同じ感想を言っている。
 父はそういう人だった。
 だからメンバーを変えるような想像は出来ないのだろう。
 あかねはご飯を口に運ぶのをやめ、母の焼く餃子がくるのを待った。
 家族の夕食を終え、それぞれが歯を磨いたり、食後のコーヒーを飲んだりしていた。
 父が自分の皿を片付けると、あかねに言った。
「ちょっと部屋に行こう」
 階段の下を周り込むと、父の小さな書斎があった。あかねは父の後につづいて部屋に入った。
「なんで居間じゃないの?」
 父は自分の椅子に座って、向き直った。そして小さい丸椅子を取り出し、あかねに差し出した。
「母さんに聞こえると変に心配かけるからな」
「え、何私悪いこととかしてないし」
「お前のことだ、なんてまだ何も話してないだろう」
「ほら、私のことじゃない」
「いいからまず座れ」
 あかねは乱暴に椅子を引くと、そこに座った。
「最近、青葉のお客様と打ち合わせをすることが多くなって、会社と青葉を行ったり来たりしているんだけどな」
「!」
「あかねの高校の制服着た子を何度か見かけたんだ」
 あかねはとっさに神林のことを思い出した。
「あかねも青葉行くよな。アイドルの劇場もあるし」
 それとも、まさかスマフォがオカシクなった日のことなのか、だとすると…… あかねは焦った。
「……休みの日とかだよ。学校帰りとかいかないし」





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