新野真琴と北御堂薫は、いつものように二人で電車から降りた。が、いつもと違って、薫はどこからか見られているように感じた。振り返ったり、正面の人混みの中から視線を探すが、探しているうちにその感じが消えてしまった。
「どうしたの?」
「なんでもない…」
「そんなことないでしょ? ちゃんと言ってよ」
「…誰かこっちを見ていた気がする」
「どこだろう」
真琴は周囲を見回すようにして、何か不審な動きをするものを探した。
「【鍵穴】を持つ人がまたでたのかな」
「見ただけで判るの?」
「ううん、判らない。けど、ヒカリが言うには、特定のところに入り込み易い、というのが、あるんじゃないかって」
「前に距離は関係ないっていってたよね。それなら、この近辺で出やすいってのは変なんだけど」
距離とかそういう事とは別の、全く別のことが原因なのではないか、と薫は思った。真琴がヒカリと同居していることが関係している、と考えると納得が行く。何か、歪みが生じていて、この近辺の空間にいると【鍵穴】が開きやすいのかもしれない。
「特定のところ、が距離を意味するのではない、ということかしら」
「ボクが言い出したのに自分で判らなくなったよ…… とにかく気をつけよう」
というと、二人はまた学校へ向って歩きだした。
その後ろで、立ち止ってスマフォを見ていた生徒がボソっと言った。
「鍵穴…」
素早くスマフォで指を滑らせ『鍵穴』と記録した。歩き出した二人との距離を確認し、距離を保って歩き始めた。
教室に入った北御堂薫は長い髪をリボンでまとめていた。ゴムでしばる、とか、三つ編みではなく、リボンですることにこだわりがあった。
「なんでもない…」
「そんなことないでしょ? ちゃんと言ってよ」
「…誰かこっちを見ていた気がする」
「どこだろう」
真琴は周囲を見回すようにして、何か不審な動きをするものを探した。
「【鍵穴】を持つ人がまたでたのかな」
「見ただけで判るの?」
「ううん、判らない。けど、ヒカリが言うには、特定のところに入り込み易い、というのが、あるんじゃないかって」
「前に距離は関係ないっていってたよね。それなら、この近辺で出やすいってのは変なんだけど」
距離とかそういう事とは別の、全く別のことが原因なのではないか、と薫は思った。真琴がヒカリと同居していることが関係している、と考えると納得が行く。何か、歪みが生じていて、この近辺の空間にいると【鍵穴】が開きやすいのかもしれない。
「特定のところ、が距離を意味するのではない、ということかしら」
「ボクが言い出したのに自分で判らなくなったよ…… とにかく気をつけよう」
というと、二人はまた学校へ向って歩きだした。
その後ろで、立ち止ってスマフォを見ていた生徒がボソっと言った。
「鍵穴…」
素早くスマフォで指を滑らせ『鍵穴』と記録した。歩き出した二人との距離を確認し、距離を保って歩き始めた。
教室に入った北御堂薫は長い髪をリボンでまとめていた。ゴムでしばる、とか、三つ編みではなく、リボンですることにこだわりがあった。
ゴムでしばるには、髪が長すぎた。三つ編みにしろ、ゴムでしばるにしろ、かなり髪を痛めてしまう。だから、まとめる必要のある時だけ、リボンで軽くしばり、前に持ってくることにしている。
薫はそうやって席に着く前にずっと髪を整えたり、しばったり、やり直したりしていた。そうやってやっている時、再び視線を感じた。
教室の外に目線を配るが、それらしき姿はみつからなかった。登校時、そして今。さすがに、これは気のせいではないな、薫はそう思った。
しばった髪を前にもってくると席に座って鞄を開いた。筆箱や必要なものを机に動かすと、真琴が薫の席にやってきた。
「どうかした?」
「また誰か見てたみたい」
「ボクも注意してみてたつもりなんだけど」
「…真琴じゃなくて、私を見てるってことかしら?」
もし【鍵穴】の人間が狙うとしたら、それは真琴であるはずだった。ただ、相手が必ず【鍵穴】の関係者とは限らない。
真琴が気が付かない、となると、薫側を監視している可能性も出てくる。
「学校だから、相手も生徒の可能性が高いでしょ? そんなに危ないことはないと思う」
しかし、その後は二人は放課後になるまで、誰かに見られているようなことを感じることはなかった。真琴は、結局なんだったのか判らないまま、帰りの支度をしていると、薫が言った。
「真琴、今日なんだけど私ちょっと学校で用事が出来たの。先に帰って」
「どれくらいかかるの? 待ってようか?」
「本当にゴメン。今日は先に帰ってて」
真琴は少し戸惑った。
「そお? なんか今日は不味くない?」
「遅くなるようならメラニー呼んで帰るから大丈夫よ」
薫は安心させよう、と微笑んでみせた。
「…わかった。じゃあ、先に帰るね」
不安は残ったが、薫の言うことだ、間違いはないだろう、真琴はバックパックを肩に掛けると教室を後にした。
薫はそうやって席に着く前にずっと髪を整えたり、しばったり、やり直したりしていた。そうやってやっている時、再び視線を感じた。
教室の外に目線を配るが、それらしき姿はみつからなかった。登校時、そして今。さすがに、これは気のせいではないな、薫はそう思った。
しばった髪を前にもってくると席に座って鞄を開いた。筆箱や必要なものを机に動かすと、真琴が薫の席にやってきた。
「どうかした?」
「また誰か見てたみたい」
「ボクも注意してみてたつもりなんだけど」
「…真琴じゃなくて、私を見てるってことかしら?」
もし【鍵穴】の人間が狙うとしたら、それは真琴であるはずだった。ただ、相手が必ず【鍵穴】の関係者とは限らない。
真琴が気が付かない、となると、薫側を監視している可能性も出てくる。
「学校だから、相手も生徒の可能性が高いでしょ? そんなに危ないことはないと思う」
しかし、その後は二人は放課後になるまで、誰かに見られているようなことを感じることはなかった。真琴は、結局なんだったのか判らないまま、帰りの支度をしていると、薫が言った。
「真琴、今日なんだけど私ちょっと学校で用事が出来たの。先に帰って」
「どれくらいかかるの? 待ってようか?」
「本当にゴメン。今日は先に帰ってて」
真琴は少し戸惑った。
「そお? なんか今日は不味くない?」
「遅くなるようならメラニー呼んで帰るから大丈夫よ」
薫は安心させよう、と微笑んでみせた。
「…わかった。じゃあ、先に帰るね」
不安は残ったが、薫の言うことだ、間違いはないだろう、真琴はバックパックを肩に掛けると教室を後にした。