その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

 二階、三階…… 各階の〈転送者〉はまるで見物をしているかのようにこちらを見下ろしている。
 まさか、飛び上がれないように上のフロアで牽制している? そう思った私は翼を使わず、足の爪だけを出して迎え撃つ。
 女の子も下半身を馬にしたまま、奥でこっちを見ている。
 私がこのE体と、どう戦うのか観察しようというのだろうか。
 首なしのE体、いつものEの字を横に倒したような大きな腕と貧弱な足をもっていたが、動きは以前より素早く、いつもよりクレバーだった。
「なんなの、こいつ」
 翼を使わずに、足の力だけでコアを抜こうとするが、動きと巧みな腕の使い方で簡単には仕留められそうにない。
 苦戦する私をみて、下半身が馬の女の子が言う。
「いつもの〈転送者〉とは勝手が違うでしょ」
 そう言って、笑いだした。
「いつもの〈転送者〉と違う、のね?」
 それさえわかれば十分だ。
「どう違うかは自分で考えることね」
 違う、かどうかを言った時点で、悪党としては二流だ。
 いつもと違うのなら、いつものようには倒せないということ。手の内を隠して戦えないということだ。
 私は翼を広げた。
「なら、こっちも全力で戦うだけよ」
 羽ばたきながら、各階の〈転送者〉の様子も確認する。
 フロアの縁に来ているが、手助けをしよう、という感じではない。本当に観察しているような感じだ。
「見られてようが、作戦を立てようが、最後は力が上回っている方が勝つ」
 私はそう言って、1Fの〈転送者〉目がけて降下した。
 片腕で叩き落とそうとし、片腕がコアの防御として〈転送者〉の体をブロックしている。
 叩き落とそうとする腕を回避して、コアを抜こうとしていた私は、ブロックしている腕に気付いて慌てて上昇する。
「そう。いつものイケイケの単細胞じゃないってことね」
 確かに攻撃と防御のバランスが違う。
 感じる違和感はそれだけではないようなのだが……
「防御をしたからって、攻めなきゃ勝てないよ」
 わざと低空を旋回し、〈転送者〉に攻撃させた。ブロックしている腕の側を飛ぶと、ブロックを解除してこちらを叩きにくる。けれど、逆側の腕がコア付近をブロックする。
「それなら……」
 素早く旋回して、〈転送者〉の背後を取ることにした。初めのうちは素早く腕を使って体を回していたが、こっちが上下方向と旋回方向を急転換させると、動きについてこれなくなった。
 そして、後ろを取った。
「こっちからならコアを抜ける!」
 完全に背後から胸のコアを抜いたはずだった。
 そこに〈転送者〉の体はなかった。
「なにっ!?」
 フロアの床を私の爪が捉えた瞬間、頭上に跳ね上がっている〈転送者〉の体に気付いた。
 腕を振り下ろして、反動で体を振り上げたのだ。
 それは単に防御の為だけではなかった。動けない私をめがけ〈転送者〉の体が落下を始めていた。
「押しつぶす気?」
 コアを抜くつもりで全速力でフロアに足を突いた私は、反応が出来ないまま〈転送者〉の影の下にいた。
「お願い、私の足! 動いて!」
 間に合わない。私は翼の力で、床に倒れるようにして転がる。
 ガッっと、〈転送者〉の体が叩きつけられる。
 あの真下にいたら……
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30日から、来年の最初の週まで、お休みを頂いて、1月8日から再開する予定です。
みなさん良いお年を。 
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 私はこの女の子が『外にいられない理由』が知りたかった。
「もしよかったら、あなたが外にいられない理由を教えて」
「それは……」
 女の子は、困ったような表情で、目線があちこちに泳ぎ始めた。
 いけないことを訊いた、と私は思った。
「ごめん…… 話せないなら話さなくていいよ」
「……」
 女の子は顔を真っ赤にして、こっちを睨み始めた。
「わかったから、大丈夫だよ」
 怒っていると思った私は、女の子と距離を取った。
「そうか。わかってしまったなら仕方ない」
「えっ?」
 女の子は再び足を白馬のそれに変えた。
 私を見下ろし、円を描くように移動を始めた。
「私の正体がバレたぐらいどうということはない。もうすぐここに〈転送者〉が送られてくる。お前はその〈転送者〉に倒されておしまいだ。蛇女とトラ男も同じようにここへ誘い込んで始末してやる」
 急に乱暴な口調になったことに戸惑いながらも、結局、この女の子は私達の敵だということを理解した。
 何か誤解して、勝手に正体がバレた、と思ったのだろう。
 私は確かめたかった。
「何故私達を倒そうとするの? あなたも改造されたんでしょう? 憎むべきは〈扉〉の支配者じゃないの」
 女の子は笑った。
「馬鹿ね。〈扉〉の支配者に逆らって勝てるわけがない。あなたがどうやってここに来ることになったのか考えてみなさい。キメラであるあなたを社会が排除しようとしたからなのよ」
「社会が排除? 何を言っているの?」
「知っているわよ。あなたは〈転送者〉を倒したに過ぎないのに、殺人容疑で追われている。だから〈鳥の巣〉の中に逃げてきた。それは社会がキメラを排除しようとしているからよ。私はこの馬の姿をしただけで、友達に裏切られ、動物プロダクションに売り飛ばされそうになったわ。そとの世界を逃げ回ったけど自由はなかった。けれど私が唯一、自由を得れる場所が、この〈鳥の巣〉の中だったの」
 言いながら、じりじりと迫ってくる。私は近寄られた分だけ、後ろに下がっていた。
「あなたは、極論すれば、その黒い翼のせいで、社会的に〈鳥の巣〉の外に居られなくなったのよ。〈扉〉の支配者はこの社会の醜さを利用したに過ぎない」
 私は何かもやもやしたものを感じた。
「私は〈扉〉の支配者と協力することにした。〈転送者〉によるこの世界の破壊が終わった後、〈扉〉の支配者が統べる世界になった時、私の居場所をくれると約束してくれた」
「それが、〈扉〉の支配者のうそだったら?」
「まだ〈扉〉の支配者には裏切られていないわ。少なくとも動物プロダクションに私を売ったりしていない」
 この女の子は外にいる人が信じれなくなって〈扉〉の支配者に従っている。
 私はまだこの外に信じられる人がいる。
「マミ……」
「何言ってるの? それともあなたが〈扉〉の支配者に従う、というのなら〈転送者〉の攻撃を中止させることも出来るわ」
「私には、信じられる人がいる。だからあなたにも、〈扉〉の支配者にも従わない」
 私は女の子を睨み返した。
 女の子は腕をぎゅっと絞ると、振り返って、後ろ脚蹴りを浴びせた。
 急所はかわしたものの、フロアの中ほどまで体が弾き飛ばされた。
「では、ここで死になさい」
 女の子が言うと、各フロアから〈転送者〉が一体ずつ現れた。
「1、2、3、4、5……」
 五体の〈転送者〉はどれも黒いE体だった。
「かかれ!」
 女の子が言うと、1階にいた〈転送者〉が襲ってきた。
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