佐々木ミキとサキは、生徒会室で真琴と話していた。京町会長と佐藤副会長がなにか下調べとかで、校内を回っている為、テント設営や夜のバーベキューの支度はまだ出来ないということだった。
「サキさん。ボク、夕飯用の食べ物をまとめて、職員室の冷蔵庫にいれて来ます」
 真琴が自分の持ち物や、薫のバッグとかから食材を出して、レジ袋2つにまとめて始めた。
 夕飯分のものは、クーラーバックでは持たない為、職員室に置いてある冷蔵庫を借りれるよう、京町が話をつけていた。
「それじゃ、行ってきます」
「お願いします」
 ミキとサキが同時に言った。
 二人は机に座って問題集とノートを開いて勉強をしていた。副会長といい、生徒会の人たちは真面目だ、と真琴は思った。
 袋を右手と左手に一つづつぶら下げて、ゆっくりと誰もいない学校の廊下を歩いていると、外に京町会長と佐藤副会長の姿を見つけた。
 遠すぎて、声は掛けれなかったが、校舎にそって芝地があって、その先に屋根のある手洗い場があった。おそらくあのあたりでテントを設営するのだろう。京町が地面の方を指指し、佐藤がスマフォでそこの写真を撮っているらしい。
 それにしても、今日は天気がいい。気温も上がって今年一番の暑さになるんじゃないか、真琴はそんな事を思った。
 真琴が職員室に入ろうかとした時、後ろから体育教師がスッと前に入って、扉を開けた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
 真琴は会釈をして先に職員室に入った。
「冷蔵庫は右奥だよ。柱のとこ」
 後ろから場所を示してくれた。
「わかりました。それではお借りします」
「楽しそうだな。俺もキャンプとかしたいがな」
 真琴は足を止めて、
「先生は部活とかないんですか?」
「ないんだよ。それに夏休み、体育の補習指導しないといけないしな」
「大変そうですね」
「そうなんだよ〜 大変なんだよ〜」
 教師は椅子に座って、集めた紙を一枚一枚読み始めた。真琴はそれを確認して、右奥の冷蔵庫へ向けて移動した。
 すべてを入れ終わると、レジ袋を冷蔵庫の取っ手に縛ってつけておいた。
 職員室を出ようか、という時、体育教師がまた言った。
「バーベキューやるの何時? 行ったらなんか食わしてくれる?」
「良いですよ。いらしてください。けど、昼ごはんの終わりの時間次第で少し時間が変えるとか言ってました。予定は6時半ぐらいなんですけど」
「ああ、そのくらいならちょうどいい。顔だすから」
「失礼します」
 真琴は体育教師が何故この生徒会のバーベキューに顔を出しにくるのか不明だったが、もしかしたら宿直とかで、冷蔵庫の事もこの先生に話を通していたのかもしれない。とにかく京町は自分でやっておいて、細かい事は内緒にしているのでどうなっているのかは周りには判らない傾向があった。
 真琴が生徒会室に戻ると、ミキとサキだけでなく、薫も何か本を広げて書きものをしていた。
 佐々木ミキが言った。
「おかえりなさい。冷蔵庫、すぐ分かった?」
「ああ、先生が教えてくくれたので。体育教師の…… 誰でしたっけ?」
 薫は人差し指を立て質問するかのように言った。
「若い男の方? なら立浪だけど」
「たぶん、そっち!」
 真琴は職員室のことを思い返しながら言った。
「勝手に冷蔵庫にいれてきたんじゃなくて、その先生に伝えられたからいいよ」
 ミキは体育教師に連絡済み、とメモした。
「それじゃ、行こうか? みんな荷物持って?」
「え? 会長も副会長も戻ってませんけど?」
 真琴は言った。
「北御堂さんも新野さんもちょうどいないタイミングで戻ってきて、テントとかを持って移動してるわよ」
 四人は自分達の分担が入った、やたら大きい鞄やディパックを背負って校内を歩いていた。
 そして、まずは自分の下駄箱に行き、外履きを鞄にいれた。
 外が暑い為、ギリギリまで校舎の中を通っていこう、と薫が言った為だ。
「こうして歩いていると、うちの学校も大きいね」
「生徒は少ないのにね。やっぱりそれだけ昔に作られたってことだよね」
「昔はさ〜 1学年で今の生徒全員ぐらいいたってよ」
「マジ!? ……ですか、先輩」
「私もそういう話、聞いたことあります」
 ジワリと額に汗をかいたころ、ようやくテントをつくるあたりについた。四人は扉を開けて、靴を履いて上履きをしまった。
 佐藤と京町は黙々と設営作業を進めていた。既にテントは広げられており、ポールを差し入れて持ち上げ、ペグを打つように指示された。
 一方、北御堂と京町は昼ごはんのカレーを作るべく、飯ごうに米をいれたり、玉ねぎ人参じゃがいもを剥いたり、きったりを始めた。
 テントを作って、全員がカレーを食べ始めたころには、2時を回っていた。