「どうしたの真琴」
「疲れた…… ちょっと寝る」
「暑くないの?」
「ちょっと暑いけど…… 意外と風が通るから…」
 眠たそうな声で返事がきた。
 薫は水場に言って、タオルに水を含ませ、きつく絞ってテントへ向かった。
「やっぱり暑いじゃない」
 寝ている真琴は、バドミントンのせいか、暑さのせいかは判らないが玉のように汗をかいており、薫は持ってきたタオルを広げ、拭ってあげた。
「ありがとう」
 真琴は小さな声でそういうと、目を閉じてしまった。
 薫はそのままタオルをつかって、真琴の首筋を拭き取り、畳み直し、また吹き出してくる額を拭ったりした。
 自分自身も、別のタオルで首すじを拭いたり、襟を開いて胸元のあたりを拭いたりしていた。
「真琴、胸元とかお腹とかも拭く?」
「……え?」
「涼しいよ」
「……うん」
 真琴はほとんど眠りかけていて、寝言なのか何なのか分からなかった。
「やってあげるね?」
「……ん」
 薫は気持ちが高ぶってきた。
 真琴の制服の襟を開き、タオルをもった手をそっとあてた。そして少しずつ、首から肩へと動かし、肩から胸の方へと動かした。すこしためらいを感じ、手を抜き取り、しばらく真琴の肌をみていた。ちょっと経つとやはり汗が出てくる。もう一度、同じようにタオルで拭いた。
「タオル換えないと……」
 タオルを鞄からもう一つ取り出し、テントを出て、水場に向かった。
 やばい、こんなことになるとは…… と薫は思った。そしてこれを戻ってきた生徒会の人、佐々木や京町や佐藤…… に見られたらマズイ、とも思った。
 薫は他の人の行方を確実に抑えておく必要がある、と考えて、絞ったタオルをテントに入れると、スマフォで『リンク』を起動した。生徒会の方へ切り替えると、何件か見ていないメッセージが入っていた。
『3年校舎にある、自販機の飲み物は売り切れた』
『教室で探しもの。エアコン切れてて暑い!暑い! サキ、私にもなんかジュース買ってきて』
『私と会長は生徒会室。エアコン入れて勉強中』
 とりあえず、京町と佐藤は生徒会室だから時間ギリギリまでこっちには来ない、と薫は考えた。問題はミキ・サキだ。
『西門側の自販機とかはどうです?』
 西門側の自販機は遠いし意外と売り切れる。3年校舎にある自販機が売り切れなら、西門も売り切れているだろう。サキさんには悪いが少し遠回りをしてもらおう。
『んじゃ西行ってみる』
 とメッセージが入った。ナイスタイミングで引っかかってくれた。もう少し真琴と二人きりでいれる。薫はそう思ってテントに戻った。
 薫は鞄からうちわ代わりになりそうなノートを取り出して、真琴をあおいだ。汗で濡れた服は張り付いてしまっていてあまり涼しそうではなかった。
 今度は服を少しひっぱり上げて、風を通すようにあおいだ。すると真琴が気持ち良さそうな表情になったので、そのままあおぎ続けた。
「真琴?」
 確認するように問いかけたが、返事は無かった。確かに今日は朝早く起きたはずだ。駅での待ち合わせ時間から考えれば普通だ。寝不足であれば、そんなに簡単には起きないのではないか、と薫は仮説を立てた。
 薫は、
「仮説は実証する為にのみ存在するのよ」
 と一人ごとを言った。
 薫は再び絞ったタオルを手に持ち、真琴のひたいから首元から拭いた。
 そして、ついに、今度は、なんと、スカートから下、太ももから下をやってみることにした。
 薫は真琴の足を見ているうちに、少し緊張してきた。自分のひたいからスッと流れた汗が、自分の頬をつたって真琴の太ももに落ちた。薫は思わずそれを拭った。
 真琴の反応が全くないことを再確認して、もう一度足を拭きはじめた。タオルごしではなく、直に触りたいという衝動と戦いながらも、真琴の足を触っているという喜びも感じていた。
 タオルが動く度に、真琴のスカートの裾は捲りあがっていた。それは薫が意図していたのか、それとも全くの無意識のなかでしていたのかは分からなかった。
 下着まで見えそうになったところで、薫の理性がブレーキをかけた。タオルを置き、そして真琴のスカートの裾を直していた。
 薫はタオルで自分の顔を拭きながら、自分がそのタオルから真琴の匂いを感じようとしている変態性に気が付き、少し嫌悪した。
 真琴の寝姿を見て、以前、公民館でメラニーが真琴にしていたことを思いだしていた。薫の中に、あの時のメラニーがしていたことよりももっと凄いことをしないといけない、という気持ちがいつの間に生じていた。