まだあたりは明るかったが、バーベキューの準備が始まった。真琴とサキは職員室の冷蔵庫まで預けた食材を取り行く係になった。
 取ってくる間に、椅子やグリルなどのセッティングをして、火を起こして油をしいてあった。後は食材を切って乗せ、焼くだけだった。
「おまたせ!」
 真琴とサキが戻って来た。
「さっそく切るからこっちにもって来て」
 薫と京町は時に大胆に、時に丁寧に切っていった。そういう包丁さばきをみていると、家でもやっているのだろう、と思わせるものがあった。
「さあ、第一弾終わったよ、焼いてね〜」
 薫と京町が切った肉やら、野菜を焼き始めた。
「副会長! 火強すぎない?」
 京町は肉の油が落ちると同時に上がった炎を見て注意した。
 慌てて佐藤は炭を散らして火力をさげていた。
「美味しいね」
 バーベキューソースやら焼き肉のタレやらにつけて食べ、時には塩、コショウだけの味付けにしてみたりした。
「山芋も美味しい」
「このソーセージは誰もってきたの?」
「美味しくなかったですか?」
「いや、すごく美味しい」
 薫はちょっと奮発して高級スーパーで自分の一番好きなソーセージをチョイスしてきていた。
「ほら、真琴も食べてみ」
「薫、これすげー旨い」
 切ったものが尽きかけた時に、京町が指示した。
「そろそろ次の当番、切ってきて」
 ミキと真琴が食材を切る番だった。食べかけの肉を口に放り込んで、慌ててまな板のところに移動すると、校舎から男が一人こっちに近づいてくるのが見えた。
「誰だろう」
「立浪先生じゃない?」
「ああ、そういえば昼の……」
「さっきは職員室にはいなかったの?」
「いませんでした」
 体育教師の立浪は、ふらっとやってきて、京町に言った。
「楽しそうだな。先生も少し食べていいか」
「適当にどうぞ」
 京町がお皿を手渡すと、佐藤がハシを割って先生に渡した。
 パパっと焼けている肉と野菜を拾い上げると、ちょっとタレをつけて一口二口で一皿食べてしまった。
「先生が食べはじめると、ほんとなくなっちゃうからな」
 と言い、
「これでご馳走様にしとく」
「先生そんなに遠慮しないでも」  
 薫が言うと、立浪は薫の方を向いて何か合図した。
「いや、やめとく」
 と言って体育教師の立浪は教室の方へ去って行った。気がつくと、薫もどこかにいなくなっていた。
「これでラストですよ」
「ありがとう」
「山芋ちょうだい」
 学校でバーベキューとかちょっと違和感があって、楽しいと真琴は思った。お祖父さんのメッセージは少し気になるが、そればかり考えても始まらない。
「あーお腹いっぱい。どお食べてる?」
 と言って、サキが真琴の肩を叩いた。
「おいしくて、いっぱい食べてますよ」
「明日も頼みますよ」
「あ、昼ごはんってどうするんでしたっけ?」
「パスタ、パスタ。どう、得意?」
「そうですパスタでした思い出しました。ソースは買ってあるんで、茹でるだけですから! 自信ありますよ」
 言ってから、真琴は薫がいないことに気づき、辺りを見回した。
「どうしたの」
「薫がいない……」
 トン、と肩を叩かれた。
 真琴は振り返った。
「いた! 薫いるじゃん」
 サキも真琴も、薫も笑った。
「さあ、食べよう、薫」
 たまに吹き上げてくる煙に目をつぶったり、焦げたピーマンを炭の中で完全に炭になるまで燃やしたりしながら、バーベキューの時間は過ぎていった。