京町と佐藤がテントから出てくると、佐々木ミキ、サキは心配そうにたずねた。
「どんな様子ですか?」
「薫さんでも全く状況が分からない」
「とにかく、濡らしたタオルがもう少し必要ね」
 ミキ、サキはそれを聞いて、そこらへんにあったタオルをかき集めて、水場に走った。
 ラップしていた食べ残しを見つけると、上野は京町に言った。
「これいただいてもいいかしら。部活から直行したんで食べてないのよ」
「どうぞ。ちょっと味が変、と思ったら出してね。それだけ約束して」
「細かいのね。多分ちょっといたんでても私は大丈夫よ」
 といいながら、ラップをはずし、割り箸を割っていた。
「それじゃ、いただきます」
 上野は食べ始めた。
 するとテントなかから唸るような声が聞こえてきた。大塚の声だった。
 上野はすぐに箸と皿を置いて立ち上がった。
「大丈夫」
 と薫の声がした。
 テントの近くにいた佐藤と京町がそれを聞いて、上野の方に座るようにゼスチャーした。
 大塚は繰り返し何か唸り声を出し、大きく体を揺すった。それが上手く真琴との接触を外すのか、以前のような短時間での決着とはいかないようだった。
 薫は、真琴と大塚の横にいて、真琴と大塚が離れないように働いていた。ミキとサキ、上野も手伝うと言ったが、
『ダメよ。私が一番真琴のことをわかってるんだから』
 と言って、テントから追い出された。
 しかし、こうやって決着に時間がかかっているということは、薫が上手く働けていないからなのではないか、とも思えた。
 上野は少しお腹が落ち着いたのか、箸を休めてテントに向かって言った。
「北御堂さん。疲れたら代わるよ」
「大丈夫、それよりタオルもって来て」
 京町が言った。
「タオル、今ミキ、サキがやってる」
「ありがとうございます」
 そんなことを話していると、ミキとサキが戻ってきた。
「タオルを絞ってきたよ」
 ミキ、サキがタオルを渡そうとテントの中に入ると、大塚が横たわっていて、その首にすがるように新野が寝ていた。大塚の制服はリボンが外されて、胸元は広く開いていた。
 サキが言った。
「な、なんかイヤラシイ感じがする」
「…… そ、そんなことないでしょ?」
 薫は自分の言葉に続けた。
「だって、こうしないと手が接触しないし。暑そうだし」
 サキは何か考えていたが、ミキは一つ一つ納得したようにうなずいた。
「そうね。上野さんの時もこんな感じだったし。サキは初めて見るのよね?」
「そうだけど……」
「二人とも寝てるだけだし、イヤラシイ感情でしている訳ではないよ」
 そう、そんないやらしい目でみている人物はいない、ここにいる私以外は、と薫は思った。
「う、うん」
 サキは続けて言った。
「イヤラシクなんかないよね。二人は、いやらしいことしてないもん」
 見透されているのかな、という考えが薫の頭をかすめた。
「ありがとう、そこにタオル置いてもらえるかな」
「早く決着がつくといいね」
 ミキは言った。
「手伝えることがあったら言って」
 サキは言った。
 そして二人はテントから出た。