四話です
 

あらすじ

主人公真琴は頭痛持ちの女子高校生。真琴は、頭痛の度に夢でヒカリに出会い、聞かされていた話があった。そして、高二になったある日、ヒカリから聞いていた敵と遭遇する。敵を倒すには、敵の保有者と接触状態で夢を共有し、その夢の中で敵を打ち負かさねばならない。同級生の友人『薫』と協力し、目の前に現れる敵と戦うことになるのだが……

 
登場人物

新野真琴 : ショートヘアの女生徒で東堂本高校の二年生。頭痛持ち。頭痛の時に見る夢の中のヒカリと協力して精神侵略から守ることになった。

北御堂薫 : 真琴の親友で同級生、真琴のことが好き。冷静で優秀な女の子。

メラニー・フェアファクス : 北御堂の養育係、黒髪、褐色の肌のもつイギリス人

渋谷涼子 : 同級生でモデル。偶然、ロケ先で真琴と知り合いになる。

京町乙葉 : 生徒会長

佐藤充    : 副生徒会長

佐々木ミキ : 書記(1) 双子の姉

佐々木サキ : 書記(2) 双子の妹
 


 
 真琴にとって、残りの夏休みはひまだった。薫は夏期講習とかに行って忙しいし、近所の男の子、と言っても小学生なのだが、その子もどうやらサッカークラブに入ったらしく、あまり遊んでくれなくなった。その子と遊んだのは、唯一、バイクヒーローの映画を見に行ったぐらいだ。
 そうして暇にしているの真琴のことが気になったのか、母は休みをとると言い出し、その時に温泉旅行へ行くことになった。
「温泉、だけじゃなくて、海水浴するよね? 海で泳ぐでしょ?」
「お母さんそんなに海好きだったっけ?」
「どうせならね。水着も買いにいこう」
「別に去年の着れるでしょ?」
「あんたのよ。私はおばさんなんだから去年のでいいの。高二のあなたの水着を買いに行くの」
「どうしたの?」
「気晴らしよ」
「この前のお客さんの話?」
「それもあるけど……」
 母は真琴が何かに抑圧されているような気がしてならなかった。
 真琴からも薫からも二人が学校で何をして、何と戦っているのかを聞いては居なかった。
 だが、自分の娘に気晴らしが必要なことは分かっていた。真逆の何かを、無理にでもしてあげれば、幾分心が軽くなると思っていた。
「いいの。趣味だから。娘のエロい水着をみたいだけよ」
「そういうエロいのは買わないし着ないよ!」
 それでいいの、と母は思った。
「やだ! 何ニヤニヤしてんの?」
 真琴は母の顔を見てそう言った。
 それから街に出て店を周りながら、何着か試着させ、結局明るいオレンジ色のワンピースを買うことになった。
 高いから、と言って初めは別のものにしようとしたが、今回は私の趣味で買うからといって少々値が張ったが、真琴が最も欲しいものを買ってくれた。
 そして、喫茶店でも行こうということになったが、どこの有名店も待っている人の列が長くて、嫌気がさした。
「あのじいさんのところに行こうよ」
「薫も好きだけど、お母さんも気に入ったの?」
「空いているのが間違いないからね」
「……そうだね。疲れたもんね」
 二人は爺さんの喫茶店に入った。
 やっぱり客はゼロで、以前薫と来た時と同じ、奥の席に座った。
 マスターであるお爺さんが、ソロりとやって来て、
「ご注文は」
 と聞いた。
 二人は
「アイスコーヒーとアイスオレ」
 と答えると、おじいさんはうなずいてまたカウンターの反対側へ消えた。
「つかれたね。あんたが遠慮したりするから水着がなかなか決まらないんじゃないの」
「!」
 反対を向いていた真琴は入り口から真琴達以外の客が入ってくるのを見た。
「(どうしたの? 急に変な顔して)」
「(私達以外のお客さん)」
 スーツを着た、かなり歳のいった男の人だった。カウンターに座るなり、マスターに話しかけているようだった。
「いいですか」
「どうぞ」
 カウンターから少し声色が違う声で答えていた。在庫やら納品数とか部分は聞こえたが、具体的な何かは分からなかった。
「何か商売しているんだね。こんなに客が入らないのにやっていけるような」
「何の取り引きか興味あるね」
 真琴の母親はカウンターの方を見ながらそう言った。
 そうしているうち、マスターがアイスコーヒーとアイスオレを二人の席に運んできた。
「ちょっと良いかしら」
 母はたずねた。
「なんでしょう」
「カウンターの方と何の話しをしているんですか?」
「ああ…… すみません。気になりますよね。裏で話すようにしますので」
 マスターは手で謝るようなしぐさをするばかりで、肝心な話はしなかった。
 カウンターの男性に声を掛け、客がいるから裏に回ってくれというように指でぐるっと弧を描いた。スーツの男性はそれで気がついたらしく、二人に会釈をすると、入り口から店の外に出て行った。
 話が漏れてしまうと、どちらかに不利になるとか、機密の情報があるのだろう。だったらそもそもこんなオープンな場所で始めてしまうのが悪いのだが。
「残念! 教えてくれなかった」
「聞かないでよ、恥ずかしいから」
「あんただって興味あるでしょ?」
「あるけど!」
 真琴は少し目線を下げてアイスオレをかき混ぜた。
「少しはそういうの我慢してよ」
「あら、教えてくれたかもしれないのよ。確率二分の一。それに、こっちが強く聞こうとすれば、聞こえたんだから」
「二分の一じゃないでしょ。普通話さないから、十分の一ぐらいじゃないの」
「いいの。大抵のことは半分半分よ。やるか、やらないか。そんなもんなんだから」
 母はそう言うとアイスコーヒーを口にした。