真琴は母は、食べ終わって砂浜に戻った。テレビ番組のカメラは海辺で撮影していた。番組が有名なのか、二人の娘が売れっ子なのか、単に撮影しているからなのか、理由は分からなかったが、周りに人だかりが出来ていた。
 真琴がヤジウマやスタッフの隙間から必死に確認すると、二人はすでに水着に着替えていた。
 真琴達は、自分の場所に戻って寝転がった。寝転がっていたが、真琴はワンピースの娘、渋谷涼子がエントーシアンなのかどうかを判別したかった。
 だが、遠目に見ているだけでは何も分からなかった。
「気になるの?」
「ううん」
「え、どっち? もし気になることがあるなら、後できいてみたら? 友だちなんだし」
「違うでしょ」
「いいのよ、友達なの。相手がそう言ったんだし」
 真琴は渋谷涼子の方を見ないように、スマフォの操作を始めた。そして、さっきのブラック焼きそばとスペシャルドライカレーの写真を薫に送っていないことに気がついた。
 急いでメールを書いて送ると、すぐさま返信が届いた。なぜこんな食べ物に食いつくのか、と返したら、ちょうど今昼休みなのだ、と戻ってきた。
 そのまま『リンク』に移って薫と少しばかりチャットしたが、薫は授業が始まるということで抜けてしまった。他の人のスレに行こうかとも思ったが、寝転がりながらスマフォを持つのに腕が疲れてきてやめた。
 再び、涼子というモデルをチラチラと見ながら、エントーシアンなのかを考えた。
 真琴の精神の中にいる、『ヒカリ』から聞いていることはこうだった。
 エントーシアンは【鍵穴】と呼ばれる体に入り込む。
 【鍵穴】の精神を侵略し終えた時、次の肉体への精神侵略を行う。【鍵穴】から行われる精神侵略は肉体的接触を伴う。
 エントーシアンの精神侵略から世界を救うことが出来るのは、同じ精神体であるヒカリ(彼女がエントーシアンと違うのは何故だかわからなかったが、真琴はとにかく彼女を信じるしかなかった)と共にいる真琴だけだということ。
 【鍵穴】として選ばれる肉体が、何故か局所的に現れる傾向があるようだった。それが真琴の通う学校だった。
 実際、エントーシアンは距離では測れないほど遠方に存在する精神生命体であり、人の脳をアンテナのように利用し、受信され、入り込むという。
 ヒカリは、エントーシアンの存在を感知出来る。確証を得るには、肉体的に接触して『見る』しかない。
 そう考えると、涼子がエントーシアンであると考えるのには少々無理があった。
 ある一定の範囲にしか現れない、とヒカリが言っているのに、どう考えてもここは真琴が住んでいる地域でもないし、学校でもなかった。
「ほら、こっちみてるよ」
 母がいきなり何か言ったので、訳が分からなかった。真琴は上体を起こして、周りを見ると、涼子がこっちをみていることに気がついた。
「あっちに行けば、きっとテレビに出れるよ」
「そんなのいいよ」
「それに気になってること、確かめられるかもよ」
 真琴は、少し心が動いた。
 もう少し時間を掛ければ、ヒカリには判るはずだ。このまま旅行を楽しんで良いのか、エントーシアンと戦わなければいけないのかがはっきりすれば、気持ちも落ち着く。
 果たして、敵、が誘ってくるのかは疑問があったが、大塚さんはエントーシアンを頭に抱えながらも、真琴と友だちになろうとして近付いて来た。友好的だからといって敵ではない、とは限らないということか。
「じゃあ……ちょっと……」
「行ってこい!」
 おしりを押されて立ち上がると、真琴は涼子が手を振る方へ歩いていった。