真琴が名前を叫び続けると、バトンの先端がまた光り始めた。真琴は良くわからないまま、振り回すと、特定の方向の時に光りが強くなるのがわかった。
「くるわ!」
 再び背びれが光り始めて、真琴と涼子は散り散りに避けた。背後のビルは、直撃照射されたものは消失し、部分照射されたところは火災となっていた。夢の中とはいえ、それを食らったら精神が崩壊してしまうだろう。
 真琴はバトンの光りを頼りに、動きだした。
「この方向にヒカリがいるというのね?」
 バトンは光って返事をした。
「行こう!」
 涼子も真琴について怪物の下腹部あたりまで下りてきた。
「ここが強い…… まさか、腹の中? 食べられてしまったの?」
 バトンは光って肯定する。
「エナジーシュート!」
 涼子が怪物の下腹部を狙って光球を放つが、皮膚が焼けただれるだけだった。
「ギィィィィィィ!」
 化物は長い尾を大きく引き、勢いをつけて二人へ振り下ろした。
「危ない!」
「上へ!」
 二人は手をとって急上昇し、振り下ろされた尾をかわした。
 食われてるって…… と真琴は思った。このままでは消化されてしまう、つまりヒカリの意識が消える、ということになる。なんとかエグりださなければ……
「エナジーブレイド!」
 バトンの先に光る刃が現れ、真琴は下腹部へと降下した。
「こっちもやるわよ。 エナジーカッター!」
 真琴が振り向いてみると、涼子のバトンの先には丸い刃が回転していた。
「行けぇ!」
「こんにゃろ!」
 突き刺した怪物の皮膚は焼き切れ、肉が落ちた。そして内部の脂肪が焦げる匂いがし、黒い液体が吹き出してきた。
 二人のかかったその黒い液体は泡立っており、怪物の切り口より勢い良く出てくる為、それ以上切り込めなくなった。
 そうしていると、再び尾が持ち上げられ、真琴達は逃げた。
 液体の噴出が治まると再び二人は切り刻む為に降下する。怪物は自分の体に向かってあの強力な熱線を吐くことは出来ないようだった。
 これが幾度となく繰り替えされた。
 黒い液体の勢いはなくなっているが、油のような体液は絶えず染みでてきており、それが真琴達を苦しめた。
「どこまで脂肪が厚いの……」
 真琴は繰り返してもヒカリの居る場所までたどりつかないことに苛立ちを感じていた。
「けど、やるしかないんでしょ?」
 お互い服も帽子も真っ黒になっていた。液体を弾くのか、バトンだけがピカピカと光っていた。
「ハエか、蚊みたいにしか見えないのかもね」
「尾っぽで払われてるし」
 二人は笑った。
 実際は真琴には笑っているほどの余裕はなかった。避けてはいるものの、かなり際どいのも何発かある。食らったら、どんな状況になるのか考えると怖くなる。
「エナジーブレイド!」
「エナジーカッター!」
 永遠にこのループが続くかと思われた時、終わりの瞬間がやってきた。
 真琴が差し込んだバトンをきっかけに、再び黒い液体を吹いたかと思うと、裂け目が縦に広がって内蔵がぶちまけられた。
 おそらく腸のようなことをする器官だと真琴は思った。白に近かったが、ピンク色のチューブ状の内蔵が広がった。
 ゆっくりと怪物は倒れていった。
 真琴と涼子は黒い泡状の液体を浴びながら、ぶちまけられた内臓からヒカリを探した。
「ヒカリ!」
 バトンの光りを頼りに、腸のような怪物の内臓をたどると少し膨らみのある部分が見えた。
「ここ? ここなの?」
 バトンが反応した。
「エナジーブレイド!」
 真琴の身長ほどの直径がある腸を、膨らみの少し先で切断すると、その腸のような筒からも液体が弾け飛んだ。
 手で拭って目を凝らすと、バイクヒーローがぐったりと横になっていた。
「ヒカリ!!」
 真琴は腕を引き、そしてわきに手を入れ、必死に引きずりだした。途中から涼子も追い付いて、手伝ってくれた。
「ヒカリ! ヒカリ! 返事して!!」