弁当の後の、眠たい授業も終わり、あかねは塾を出て、隣の隣のビルにあるバクバクバーガーへと移動した。母親には、美沙に勉強教えてもらう、とだけメールしておいた。あれこれ理由を並べるより、これが一番信用されるからだ。
 あかねはバーガーにかじりつきながら、学校の宿題をこなしていた。本当にここでやらないと、家に帰ってからでは集中して勉強する時間はなかった。母の家事の残りが回って来るし、弟からなんだかんか言われると、それにも手間が掛かる。
 宿題を終えると、少しスマフォで気晴らしにパズルゲームをし、靴底が傷んできたので新しいバッシュをネットでチェックしたりした。まだ美沙が来ないので、更に塾の宿題を解いていると、ようやく美沙がトレイを持ってやってきた。
「私もお腹すいちゃった」
 美沙のトレイには、チキンと赤茶色の飲み物が載っていた。
「そうだよね〜 私もチキン買ってこようかな」
「一つあげるよ」
「悪いよ」
「平気平気」
 美沙は一欠片をあかねのトレイに乗せ、チキンを食べ始めた。
「もうちょっとだから、宿題やっちゃうね」
「うん」
 少しばかり、お互いが黙ったままの時間を過ごすと、宿題を終えたあかねが切り出した。
「……美沙、スマフォとか詳しいよね?」
「まぁ、多少。スマフォがどうしたの?」
「学校の近所に、変んなWiFiがあってさ」
「あっ、あれだ。知ってる知ってる。パスワードの掛かってないやつ。噂になってたよ。あ、つないじゃだめだよ。何か通信覗かれてるかもよ」
「えっ」
 美沙が急に表情を暗くした。よっぽど自分の顔が動揺したのだ、とあかねは思った。
「あっ…… うん。あかねの相談、分かった。つないじゃったのね?」
 あかねはうなずいた。
「たしか、無料でウィルススキャンするソフト、あったんじゃないかな。ちょっとまてね。こっちで調べてみる」
 美沙が自分のスマフォを取り出して、調べ始めた。調べながら、あかねに訊ねた。
「変なメールとか来た?」
 あかねは、念のため確認してから答えた。
「来てない」
「『リンク』は使ってないよね?」
「つないでる時は使ってないけど……」
 あれ? ダウンロードする前に使ったのかな??? あかねは分からなくなった。
「あかね携帯会社どこだっけ」
「白い猫のところ」
「ああ、あそこね。分かった。どうしよう。いやじゃなかったら、私のやつからアクセスしてみる?」
「携帯会社に?」
「他に何か通販サイトとかアクセスしてる?」
「うーん。それはないけど」
「じゃ、可能性があるのは携帯会社かな。『リンク』で変なメッセージは?」
「ない…… えっ!」
 画面に『リンク』の通知が入った。
「えっ? 今の?」
「怖い。一緒に見てよ」
「うん。あかねが良ければ」
「いいよ、怖いもん」
 あかねはスマフォのロックを解除し、テーブルに置いて、美沙を隣に座らせた。
 『リンク』の画面が表示されている。
 下には見慣れぬスタンプ。
 そして、バイト募集のメッセージ。
「これ、やばい?」
「う〜〜ん。ブロックすれば大丈夫じゃない? たしか、これ、プロモーション用の仕組みで、ああいうWiFiアクセスで回数制限付きでメッセージ送れるやつだったはずだよ。明日までに調べてくるよ」
「ブロックってどうするんだっけ」
「やってあげる」
 美沙が目の前で一つ一つ確認しながら、操作をしてくれた。とりあえずメッセージは大した問題ではないらしい。
 そして変なことになっていないかのチェックをしてもらって、特に問題点はないらしいことが分かった。あのWiFiに接続する時に、裏で『リンク』を起動したままだったのはまずかったらしい。
 色々と話ながら、時間が遅くなったので店を出て、大通りまで歩きながら話していった。美沙との別れ道にくると、 
「あかね、ブロックだけで足りるのかは今晩調べておくからね」
「色々、ありがとう。私、明日、部活ないから、一緒に帰ろう? 私がメガバクバクバーガーおごるよ」
「メガは食べ切れないから、チキンがいいな。とにかく明日」
「ああ、そうか。うんチキンね。じゃね」
 美沙が、大通りの奥へと去っていくと、あかねは手を振ってから、小道の方へ入って自宅へと帰った。