あかねと美沙は家の近所のバクバクバーガーに居た。
「本当にチキンでいいの?」
「うん。メガバクは食べ切れない」
「じゃ、買ってくるね」
 美沙に席を取ってもらって、あかねは買いに行った。今日は偶然、貯まっていたポイントに気がついて、メガバクを二つと、チキン、飲み物二つを頼んだ。
 フロアを上がると美沙が席から手を振った。
「メガバク二つって、私、チキンと飲み物で良いって……」
「あ、違う違う。私が食べるから大丈夫」
「今日って部活ないんでしょ? そんなに食べて大丈夫?」
「い、今のところ」
 そう言いながら、あかねは、少しだけ自分のお腹のあたりのことを思い浮かべた。
「そんで、昨日の件だけど」
「どうだった。実は私以外にもつなげてしまった人いてさ」
「うん。『リンク』はブロックするだけで大丈夫みたいだよ」
 あかねは安心した。安心したせいか、バクバクバーガーの匂いに改めて気がついた。
「美沙、チキンどうぞ。私もいただきます」

 美沙がチキンを食べ終わる頃には、あかねはメガバクを二つ食べ終わって、カウンターで水をもらってきて飲んでいた。美沙はカバンに入れていたノートパソコンを出して、何やらスマフォを操作していた。
「美沙のパソコン、外でもネット出来るの?」
 美沙は首を振った。
「テザリングっていうの。スマフォを使ってインターネットに接続するんだよ」
「見ていい?」
「いいよ。じゃ、そっち行こうか?」
 美沙があかねの隣に移動して、パソコンの向きを変えた。
 美沙のパソコンに『美沙のスマフォ』という表示があった。
「あれ? パソコンに」
「そう、テザリングするから」
 あかねは水を口に含んで、美沙が操作するのを眺めていた。
 パッと画面が切り替わって、ブラウザで検索サイトを開いていた。
「ちょっとだけ気になるからさ、調べてみたいんだよね。つないだWiFiってなんて名前だったっけ。噂は知ってるんだけど」
「確かね。ビッチ」
「酷い名前ね。ちょっとまって、それ、綴りが分からないから」
 なにやら何回かページを開くと、今度はまた別のキーワードを入れて調べはじめた。
「ありゃ。あんまりよろしくない噂が」
「えっ、やめてよ」
「もう繋がないんだから大丈夫よね」
「実は、今朝試しちゃった」
「! あ、ごめん。WiFiのリストから削除してなかったかも!! あかね、スマフォ貸して」
 あかねはスマフォを美沙に渡すと、なにか必死にやってくれた。
「よかった。何も検出されてないみたい。後、WiFiのリストからも消しといたから。今度は近寄っても自動接続されないからね。また繋がないでよ」
「そんで噂って」
「ここみて。身内に不幸なことが起きたり。スマフォが動かなくなったり、だって。ここには、皮膚病に掛かったり、するってのもあるね」
「え、これ本当にウワサ、だね。なんか全然真実味ないじゃん。これなんて、呪われる、ってあるもん」
「え? どこ? ちょっと興味あるな」
「ココ、ココ」
「え? そんなこと書いてないじゃん」
「?」
 あかねは美沙の顔をじっとみた。
「マジで言ってる?」
「そっちこそ」
「とにかくココ、クリックしてみてよ」
 美沙が訝しげにカーソルをそこにあてて、タップした。
「え?」
「何? 何があったの?」
「システムエラーみたいね」
「もっとわかりやすく言って」
「ブラウザがクラッシュしたみたい」
「余計わからないよ〜」
「もう一回やってみる」
 美沙は何かパソコンを操作して、さっきと同じようにインターネットの画面を出した。じっと画面を読んでいた。
 しばらくすると美沙は言った。
「やっぱり分からない、どれをクリックするの?」
「これだよ」
 あかねはリンク先の要約に『呪われる』と書かれたところを見付けて指差した。
「……」
「これ、読めない?」
「うん」
 美沙は目薬を出して、右、左と順番に差してから、ハンカチで目を押さえた。
「疲れてるのかな……」
 あかねは、こんなにハッキリ見えるのに、とちょっと怖くなってきた。
「冗談じゃないよね」
「ごめん。本当に見えない」
「ちょっと操作していい」
 美沙がうなずいたので、あかねは恐る恐るそこにカーソルを持っていき、トラックパッドでタップした。
「え、どういうこと……」
「え、え、なんか変なとこ押しちゃった???」
「いや、大丈夫だと思うよ。なんでだろう、このリンク先見れないね」
「やめよう。忘れよう。ちょっと怖い」
 あかねは気晴らしにメガバクをもう一つ買ってくる、と言ってカウンターに行った。戻ってくると、美沙は集めていた楽しい動画のリンクから動画を見せてくれた。二人はイヤホンを共有し、動画をずっと見ていた。
 言葉には出さなかったが、二人はさっきのリンクや、WiFiの噂を忘れようとしていた…… 必死なほどに。