あかねは、青葉からの帰りに、電車の中でスマフォを床に落としてしまった。そのせいでスマフォのガラスにヒビがはいった。それだけではなく、通話やネットの機能にも障害が出てしまい、結局、買い替えなければならなくなってしまった。
 あかねは両親に、なぜそんな乱暴につかうんだ、としかられた。乱暴に使ったわけではないのだ、奇っ怪なメールを驚いて手を振った際、手が滑って床に落ちたと説明したが、それにしても不注意だと言われた。
 月曜日に学校に行くと、今度は友達から『リンク』の応答が無いことを色々言われ、その都度、タイムラインに変な書き込みがあった話や、携帯が壊れたことを説明した。いつもなら午前の授業が終わるころには、お弁当は半分くらいになっているのだが、今日はまるまる残っていた。
 昼休みになると、あかねはお弁当を10分たらずで平らげたてしまった。食べ終わる時間が分かっていたのか、と思うほど、ちょうどその時に、となりのクラスの美沙が声を掛けてきた。
 あかねが廊下に出ると、美沙が言った。
「あかね、大丈夫だった?」
「やっぱり怒られたよ〜」
 あかねは、親に起こられたことを美沙に話した。そして、あかねはある考えを美沙に伝えた。
「やっぱり、あのWiFi、突き止めてやめさせよう」
「うん、けど結構ヤバイ感じだから、大体の位置を調べるくらいにしない?」
 あかねは思った。あのWiFiの位置を突き止めたら、警察に言うべきものなんだろうか、それとも学校内のことだから先生に言ってみるのか、と。
「やっぱりヤバイのかな。警察に言うべきなのかな?」
「警察って、何か被害がないとダメなんじゃない?」
「ID知られたし、変な脅迫メール送ってこられたし」
「確かにね〜 携帯会社に言えば、履歴とか送り主とか判りそうだよね」
 そうやって美沙と話していると、教室から出てきた、女バスの神林みくが声を掛けてきた。
「あかね、スマフォ壊しちゃったんだって?」
「うん。部活の連絡受けれなくてゴメン」
「それはいいんだけど……」
 神林は続けた。
「あかね、例のWiFiにつなげたって本当? スマフォ壊れたのって、そのせいじゃないの?」
 美沙が口を挟んだ。
「いや、WiFiに繋いだからって、スマフォは壊れないでしょ? あかねのは物理的に壊れたんだもん」
 神林はまったく意に介さぬように言葉を続けた。
「あのWiFiにつなぐと呪われるよ。だからもうスマフォを新しいのに交換しても、絶対つないじゃダメだよ。また呪われて、また壊れるから」
「え?」
 あかねは耳を疑った。美沙ほど詳しくはないけど、WiFiで呪われると思うほど馬鹿ではない。
「馬鹿だとか思わないで。本当なんだから」
 まるで始めから『馬鹿だ』と言われることを知っているようだ。
 神林は睨みつけるような表情をしていた。
「とにかく、絶対につないじゃダメよ」
 そう言うと、走っていってしまった。
 美沙が言った。
「あの子、本気で言ってんのかな?」
 あかねは首を振った。
「わからない。クラスも部活も一緒だけど、みくは、ちょっと変わった感じの子だから」
「それにしても、ね……」
「いや、でも呪われるかどうかは別として、あのWiFiには自分のスマフォでは絶対つながないよ」
「そうだね。じゃあ、私も調べる時は捨ててもいいパソコンかなにかをもってこなきゃね」
 美沙はなんかやる気が湧いてきたようだった。あまり危険なレベルまでは調べたくないな、とあかねは思った。
「呪い、と言えば、バクバクで見れなかったサイト、見れたよ」
「あの時は、開くと落ちたじゃん」
「パパのパソコンで、ブラウザを別のにしたら見えた」
「呪いのこと書いてあった?」
「うん、呪いというか…… とにかく犯罪臭がするというか…… あんまり繋いじゃいけない、ってのは判るね」
 美沙が腕を組んで、少し考えた後、言葉を続けた。
「あかねのスマフォのタイムラインにあったメッセージ、あれだよ、売りつーか。エンコウとかいうものみたいだよ。そのサイトにもそういう内容あったし。やっぱりWiFiに関係してるのかも」
 なんでこの学校の体育館に…… あかねは、すぐ川西のことが浮かんだ。もしかして、あのセクハラ教師が?
 嫌な予感がした。このまま川西を顧問にしたままだととんでもないことが起こる、そう思った。