六話です
 

あらすじ

主人公真琴は頭痛持ちの女子高校生。真琴は、頭痛の度に夢でヒカリに出会い、聞かされていた話があった。そして、高二になったある日、ヒカリから聞いていた敵と遭遇する。敵を倒すには、敵の保有者と接触状態で夢を共有し、その夢の中で敵を打ち負かさねばならない。同級生の友人『薫』と協力し、目の前に現れる敵と戦うことになるのだが……

 
登場人物

新野 真琴 : ショートヘアの女生徒で東堂本高校の二年生。頭痛持ち。頭痛の時に見る夢の中のヒカリと協力して精神侵略から守ることになった。

浜松たまち :  真琴と同じクラスで【鍵穴】となってしまった女生徒。真琴と友達になることで救い出された。

渋谷 涼子 : 同級生でモデル。偶然、ロケ先で真琴と知り合いになる。

品川 優花 : 陸上部で真琴と同じクラス。最初に【鍵穴】として発見された。

上野 陽子 : 剣道部の三年生。【鍵穴】となってしまい、別の意識体に入り込まれて騒動になる。

北御堂 薫 : 真琴の親友で同級生、真琴のことが好き。冷静で優秀な女の子。休学中。

メラニー・フェアファクス : 北御堂の養育係、黒髪、褐色の肌のもつイギリス人



 東堂本高校に関して、ある噂が立っていた。違法な麻薬作用のある薬の売買をしているものがいる、ということらしい。
 真琴自身はそういうものをやり取りしているとか、薬を使っている、ということを見かけたことはなかった。ただ、始業式の後、頻繁に聞くようになったのだ。
「真琴、帰りどっかよる?」
「特に用事ないけど、たまちが寄るなら一緒に行く」
 たまちは、あごに人差し指をあてて、少し考えた。
「じゃ、涼子のお祖父さんのカフェ行く?」
 真琴はうなずいた。
 二人で後方の車両に回って、電車にのると座席が空いていた。これが、先頭だとこうは行かない。中居寺の改札は先頭側にあるからだ。
 たまちと話していると、たまたま薬の話になった。
「近所で、ちょっと変な車の事故があったの」
「あれ? もしかしてニュースになったヤツ?」
「そうなんだよ。私のところの近所なんだ。例の薬をやってたって話だし。学校でもその手の話いっぱい聞くし。ちょっと怖い」
「たまち、もしかしてその事故していた人も知ってる?」
「うん。同じ小学校の先輩だよ。弟は私と同学年」
 ちょっとイヤな予感がした。
「弟って、なんてひと?」
「え? なんで? 確か、緑川勇気だったかな」
「……」
「ん?? 真琴、もしかしてうちの学校にいる、とか思ってる?」
「なんとなくね」
「今、どうしてるのかは私も知らないんだ。けど、同じ学校じゃないはずだよ」
「そう。それならいいんだけど」
「あと、その子も同じように薬をヤっているとは思えないよ。その子自身も、その子の友達も、別にそういうワルだったわけじゃないし」
「なんとなく、そんな感じがするんだ…… ボクのこういうの当たったためしないから。きっと大丈夫だと思うけど……」
「心配するのもわかるけど。あれよね。エントーシアンのことよね。例のコントロールは大して活動的に動けないけど、ああいう麻薬的なのと組み合わせたら…… 確かにちょっとヤバイかもね」
 真琴はなんとなく、その緑川が東堂本にいるような気がした。
 絶対にその名前を聞いたことがない、それは確信しているのに、それと同じくらい存在を信じている。不思議な感覚だった。
「調べてみない?」
「どうやって? まさか本人に聞くわけにも」
「うちの生徒なら、生徒会名簿に載ってるよね?」
「ああ、そうね。うちの生徒なら」
 生徒会名簿なら持ち出さない限り、会長に言えば見せてもらえるはずだ。真琴は、『リンク』で会長にメッセージした。
「今日学校に戻るわけじゃないんでしょ?」
「うん。それは明日」
 たまちはほっとしたような顔をした。

 次の日、真琴が中居寺の駅で電車を待っていると、たまちがやってきた。
「一緒の電車に乗っていい?」
「いいよ」
「涼子さんは?」
「ああ、今日は撮影所から直接くるらしいの。だからここにはこないんだ」
「そうなんだ」
 そう言って、たまちはニッコリ笑った。
 そうして、とりとめもない話をしている内に、電車がきて、二人は電車に乗った。薫と真琴が乗っていた時のように、やはり周りには女子生徒ばかりだったが、薫の姿が見えないことからか、休学の話が周りでヒソヒソと囁かれていた。
 真琴はその噂している声を聞き、薫は本当に休学している、と実感した。
 となりにたっているたまちは、薫のように両手で鞄をもつから、という理由ではなかったが、やはりつり革をもたなかった。
 たしかに、背丈の問題があって、つり革につかまってしまうと、ぶら下がってしまいかねない。真琴は、たまちがつかまらない事に、なんとなく納得した。
 真琴は言った。
「そういえば、ちょっと分かったことがあって」
「どんなこと?」
「この前、たまちの中のエントーシアンと戦った時に、涼子を使って『リンク』にメッセージを流したはずなんだよ」
「なんとなく記憶がある。上野さんや品川さんが来ないように、でしょ」
「そう。後で見たけど、ボクのスマフォには確かに入っていた。だけど圏外でもない上野さんや品川さんのヤツには入ってなかったでしょ」
「そうなんだ」
「それがすごく疑問だったんだけど、どうやらボクのお祖父さんが介入したとか言ってて」
「お祖父さん?」
 真琴は、ここまで話して、これは厄介なことを話始めてしまった、と思った。こういう技術的な話は、いつも薫に頼んでしまっていて、しっかりと説明する言葉を考えていなかった。
「うん。お祖父さんなんだ。お母さんの側のお父さん。だけど、もう死んでいて、家にあるパソコンの中にいるの」
「え?」
「う〜ん。なんと言ったらよいのかな」
「……イタコのようなもの?」
「イタコっていうのは、なんだっけ?」
「死者の代わりとなって話をするのよ」
「ああ、そんな感じ。それが人じゃなくて、パソコンなのよ」
「へぇ、イタコン、って感じね」
 真琴は、得意顔をしたたまちに、ちょっとだけヒいた。
 電車がいつものカーブに差し掛かって、ガタン、と揺れた。真琴はたまちが倒れないように抱き寄せていた。腰というより肩を抱いていた。
「あ、ありがと」
 たまちの顔が真っ赤になっていた。
 真琴は少し照れた。
「そ、それで、お祖父ちゃんが、『リンク』のサーバーに介入して、メッセージが上野さんや品川さんに届くのを止めた、って言ってたの。本当にそんなことできるのかわからないんだけど…… 事実そうなってるから、信じるしかないんだけど」
「へぇ…… なんかSFみたいね。けど、本当にそんなことが出来るとしたら。世紀の大発見なんじゃない?」
 真琴は、このお祖父ちゃんの件で、薫と言い争いになったことを思い出した。
「うん。証明というか、それがうまく伝われば、ね。薫にはエーアイ? じゃないか、って……」
「あ、なるほどね。難しいね。誰か専門家に見てもらえばいいんだけどね」
 電車が揺れて、たまちが真琴の腰につかまってきた。ちょっとくすぐったいような、変な感じがした。いつもは自分が、薫の腰のあたりを捕まえていたのだが。
「私にはそういう専門家の知り合いはいないなぁ」
「そっか……」
 真琴は窓の外に視線を移した。
 『リンク』で山本昭二、すなわち真琴の祖父が、さっきたまちに話した事を自慢げに送ってきた時のことを思い出していた。
 『リンク』のメッセージ操作が、お祖父ちゃんの仕業ではなく、単なる偶然だとしても、そんな作り話を送ってくる、というだけで、何か自立した精神がそこにあるように思えてならなかった。



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