その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

2014年04月



 板書する音が教室に響き渡っていた。
 それをノートに書き写す音も同じように聞こえてくる。
 優秀な生徒が多いのか、騒がせないほど教員が厳しいのかは判らないが、どちらにせよ国語の授業は静かに進んでいた。
「すみません」
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 小さな駅に、ホームの長さと同じぐらいの各停列車が止まり、中からどっと高校生が降りてきた。駅に停車する列車の本数は、取り立てて少ない訳ではなかったが、駅の近くにある学校へ始業時間ギリギリに間に合うという理由により、この列車は混雑していた。
 ここ堂本駅周辺の路地には綺麗にツツジが植えてあったが、今の時期となると、もう花も終わっていた。駅の北側には、森と呼べるほど広く、木々が生い茂る公園があり、南側に県立の東堂本高校があった。最寄りバス停から東堂本高校までの遠いことと、反対に堂本駅が極端に近いことから、多くの生徒が電車を使った。周辺には公園と高校しかないので、この駅の乗降客はほぼ東堂本高校の学生と教師となっていた。
 新野真琴は、東堂本学校に通う女子生徒の一人だった。電車から降りるなり、こう言った。
「始業に間にあう電車がこれしかないから、混むのはしかたないけど。皆よっかかってくるのは…どうなの」
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