その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

2015年01月

 あかねが体を洗い始めると、美沙が湯船から上がってきた。
「背中洗うよ」
「え、大丈夫、自分でするから」
 そう言いながら、あかねはお腹を引っ込めるように力を入れた。
「だって……」
 急に美沙があかねの背中にもたれかかってきた。美沙の体が、密着してくる。
「ど、どうしたの? 何してるの?」
「……ごめん」
 美沙の体から力が感じられず、あかねは振り返れなかった。振り返ったら美沙が床にすべり落ちてしまう。
「大丈夫?」
「……えっと……」
 美沙があかねの耳もとに話しかける。
「のぼせた、かも」
「え、え? どうすればいいんだっけ?」
「ごめんね。体洗ってる時に……」
「それはいいんだけど」
 あかねは、滑り落ちないように、後ろに手を回して美沙の体を支えた。
「私が洗ったげる……」
 美沙があかねの持っていたスポンジを取り、あかねの方へ手を回してきた。力が入っていないせいか、さっき洗っていたよりもずっとゆっくりな動きだった。
「いいよ、大丈夫だから、ね? 美沙、動かない方がいいよ」
「ううん。だって悪いもん」
 耳元で喋るのを意識してなのか、のぼせてフラフラのせいなのか、美沙の声は小さかった。その声が、耳に入ってくる度、あかねは、ゾクッと感じていた。
「こっちの手でも洗ったげる」
 美沙がスポンジを持っていない方の手で、あかねの胸を触ってきた。いや、本人は洗っているつもりなんだろう、と思い、出そうとした声を押し殺した。
「あれ……」
「美沙、どう、大丈夫?」
「これ…… おっぱいだ」
 美沙が指の間で乳首を挟むように弄り始めた。
「あっ…… 美沙、何するの? のぼせたんじゃないの? もしかして、もう大丈夫なんでしょ?」
「ううん…… まだ力が入らない……」
 スポンジを持っていた方の手からスポンジが落ちた。そして、その手はあかねの内ももの方を撫でるように滑り始めた。
 あかねは、美沙を支えている方の手を離し、その手を抑えた。
「あかね……」
 美沙の体がまた横に滑り出しそうになり、あかねは慌てて美沙の手を離して体を支える方へ回した。
「美沙、具合良くなってるんじゃないの? だって、ほら、こっちの手が……」
「ごめんね」
「何、何でごめんねなの? そうじゃなくて、胸を触るの、やっ……」
 美沙の一方の手はあかねの胸を揉み続けていた。あかねが離してしまった手は、さらに内ももを付け根の方へなで上げてきた。
 あかねは、頭が変になりそうだった。
「……や、やめて」
「ごめんね、あかね」
「美沙、どうしたの? なんでごめんね、なの?」
「ごめんね」
「あっ……ん」
 ついに美沙の手はあかねのラビア(陰唇)に達した。
 二本の指が割れ目にそうように滑り込んでいき、その奥のものを挟むようにしてきた。すると美沙は手をやさしく、そして細やかに動かし始めた。あかねは再び声を上げた。
「あん…… ん」
 あかねは、こういう時、どうしていいのか、声を出していいのか、それともいけないのか。判らないまま、声を押し殺していた。
「あかね……」
 急に強く挟んで震わせたり、奥へ指を這わせたりする度に、あかねの名を呼んだり、謝ったりしていた。
「美沙、ごめんね、ってどういう……」
「ごめんね」
「あっあっ、だから……」
 あかねは必死に美沙の体を支えながら、その美沙に体を弄られ続けた。
「あかね!」
 美沙の声が、突然別人のような低い声になった。
 あかねの胸や股を弄っていた手が離れ、美沙は立ち上がった。
 あかねは美沙を支えていた手を離し、自分の胸と股間を押さえた。
「美沙…… どうしたの?」
「ごめん、やっぱり私……」
 声の調子が変だ。あかねは立ち上がって、美沙の方を振り返った。
「美沙?」
「あかね。ごめん」
 美沙はあかねに抱きついてきた。
 しかしさっきまで感じていた淫猥な雰囲気はまるでなく、美沙は、あかねの胸で泣き始めてしまった。
 あかねは混乱したまま、とにかくお風呂から出ようと提案すると、美沙はコクンとうなずいた。


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 美沙が髪を洗い終え、体を洗い始めた。あかねは体が温まってきたので、上半身を湯船から出すように腰掛けた。
 見ていると、美沙の洗い方が余りにたどたどしいので、あかねは声を掛けた。
「背中流そうか?」
「ホント? ありがとう」
 あかねは美沙からボディスポンジを受け取ると、自分を洗うような感じで背中をこすった。
「痛い!」
「ご、ごめん!」
 あかねは、慌てて手を止め、自分の肌をそのスポンジで洗ってみた。とくに固くて肌が切れるような感じはしなかった。
「自分がこんな感じで洗ってるから…… ホントとごめん」
「こっちこそごめんね。ちょっと勢い良くてビックリしたのかも。背中、赤くはなってないでしょ?」
 あかねは美沙の背中をじっとみた。特に赤いとか擦り傷があるようなことはなかった。
 そうやってじっとみていると、余計なことが頭の中をよぎる。それは『おっと手がすべった』的に胸を触って見たいとか、そういうことだった。
「あれ? なんか赤くなってる?」
「ううん、平気。どこも赤くなったりしてないから」
 そう言ってから、あかねはまた自分の妄想のストーリーを進めた。『美沙、本当は結構胸大きいのね』、『やめてよくすぐったいから』、『ポヨポヨだね。もう少し触らせてよ』
「あかね?」
「ご、ごめん。そっと洗うね」
 あかねは美沙の背中を自分の体を洗う時間の三倍も四倍もゆっくりとスポンジを動かして洗った。あらっている自分の方がこそばゆく感じるほどだった。
「はい、終わったよ」
「ありが……」
「!」
 そう言って振り向いた美沙が、座っていたバスチェアーから滑るように倒れかかってきた。膝建てで座っていたあかねは、とっさに美沙を受け止めた。
「ご、ごめんね」
「どうしたの、フラフラしてるみたいだけど」
「最近ちょっと貧血気味なんだ……」
「そういう時はね、レバーとか食べると良いっていうけど」
 あかねは、真面目な受け答えをしながら美沙の体の感触を楽しんでいた。
「立てる?」
「うん。大丈夫。はい」
 スポンジを受け取ったが、あかねは、もう次に何をするのかを忘れていた。
「なんだっけ?」
「あかねが体洗う番よ」
 あかねは笑って、
「そうだった」
 と言った。
 美沙が、あかねの背中を洗おうと待っているようだったので、
「遠慮しとくよ」
「良いよ、大丈夫。背中流すから」
「えっと…… じゃ、先に髪洗うから湯船でゆっくりしてて?」
「わかった」
 あかねは髪を洗っている間も、美沙のことを意識していた。自分の方を見られている、と思うとすこしお腹を引っ込めなきゃ、と思った。
 温泉とか、銭湯に入った時はこんな事、感じたこともなかった、変な緊張感がそこにあった。二人きりでお風呂、というのは単純に素敵なことばかりではないのか、と思った。


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 鍵がかかっていなかった。あかねは焦った。出かけたとは思えない状況で、鍵かかかっていない理由を想像したからだ。何者かが侵入し犯行に及んだ後、逃げたのではないか、とあかねは考えた。美沙が倒れているかもしれない。あかねは急いで家の中を見て回った。
 すると、ザーっと雨が降っているような音が聞こえた。シャワーだ、と直感した。そして濡れた床に流れる血が脳裏に浮かんだ。やばい!
 あかねはお風呂場に入ると、浴室の扉を開けた。
「?」
 裸の美沙がそこに立っていた。
 濡れた床には泡が流れていたが、鮮血はなかった。
「あれ? あかね、もう来たの?」
 振り返った美沙は、呑気な声でそういった。
 安心した。無事だったのだ。
 それにしても鍵を開けっ放しなんて。
「……いろいろあって。部活を抜けてきたの」
 あかねはそう言った後、美沙のはだかに気付いて、慌てて風呂場の扉を閉めた。
「ご、ごめん」
「部活してきたんだったら、汗かいてるでしょう? お風呂入らない?」
「え、だって」
「大丈夫よ、交代で入ればいいんだし」
「そうじゃなくて」
「?」
 美沙が扉を開けて言った。
「この前いっしょに温泉入ったじゃん?」
「そ、そうね」
 あかねは玄関の扉に鍵をかけていないことを思い出した。
「美沙、玄関鍵かかかってなかったけどなんで?」
「えっ? そうなの? 家に帰って来た時にかけ忘れてたのかしら。あかね、悪いけど鍵かけてきてくれない?」
 あかねは言われた通り玄関に戻って鍵をかけた。
 どうしよう、とあかねは思った。確かに春休みに美沙と一緒に温泉旅行へ行っている。その時にこんな気持ちはまったくなかった。たった六ヶ月でこんなに気持ちが違っているとは……
「美沙、鍵かけてきたよ」
 戻ってくると浴室の扉が閉まっていた。そこが再び少しだけ開いて、美沙が言った。
「ありがとう。今日さ、両親とも泊まりだから、戸締まりとか私がしっかりしなきゃいけないのにね」
 え…… 変な情報を私に与えないで…… あかねは顔が熱くなってきたように感じた。
「早く入ってきなよ」
「うん」
 あかねはバッグを置いて、制服を脱ぎ始めた。本当にここでお風呂に入って、何事もなくいられるんだろうか、単純にお風呂だけで帰れるだろうか、と考えた。
 それでも、パンツを脱ぐ時にはあかねは気持ちを決めていた。いや、何があっても後悔しない。もうここまで来たんだもん。
 浴室の扉を開けて、あかねが入ると、美沙がシャワーヘッドを渡してくれた。
 あかねは軽く全身を流した後、湯船につかった。
「美沙、今日の相談ってなに?」
 髪を洗っている美沙は、手を止めて返事をする。
「このタイミングできく?」
「ごめん」
 美沙は髪を続けて洗い始めた。
「なんかさ……」
「どうしたの、あかね」
「なんでもない」
 あかねは美沙の体を見つめていた。ところどころシャンプーの泡がついて見えないが、女の子らしい柔らかい曲線が美沙をより可愛らしく見せていた。
 髪を洗い終わると、シャワーで洗いでから、リンスを手にとり、すり込むように毛先まで揉み込んでいった。リンスインシャンプーで済ませている自分と比べて、そういうところが違うのだ。丁寧に髪をいたわりながらリンスしている美沙の仕草を見ていると、萌というものの意味が判るような気がした。


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 あかねの気持ちは高ぶっていた。
 美沙の家には、高校に入ってからも、何度か行ったことがあった。今日みたいに学校帰りによることだって、普通にあったことだ。特別違うこととしては美沙の相談、を聞かなければならない、ということと、女バスの意見書をまとめないといけない、という二つの課題があることぐらいだ。だから、面倒な厄介事をこなしに美沙の家に行くだけなのに、気持ちが高ぶるのは変だった。
 けれど理由がないわけじゃない。
 昨日の美沙の態度だ。それに昨晩のあかねの妄想。最後は、今朝の母の一言だ。
『美沙さん、女の子が好きなんじゃないかしら』
 確かに美沙の態度が『普通』よりはベタベタした感じがすることがあった。手を繋ぐ時だって恋人つなぎをしたりする。美沙が言い出して、双子コーデで出かけたりもした。
 けれどそれは普通のことで、だから美沙が特別女の子が好き、ということにはならなかった。もちろん、あかねだって、男と女とどっちが良いか、なんて考えたこともなかった。
 それが、急に。
 昨日今日のわずかな間で、目の前にある避けられない現実として突き付けられたのだ。美沙はどうやら女の子が好き。そして、あかねも同じ……
 いや、自分の気持ちはまだおぼろで、輪郭もはっきりしない、あやふやなものだった。しかし可能性としてゼロではないことが昨日の行為で気付いてしまった。
 そんな気持ちで美沙の家に、美沙の部屋に行ったら、どんなことになってしまうのか、それを思うと、気持ちが落ち着かない。期待なのか不安なのかすら判らない、そんな状況だった。
 けれど足がすくむわけでも、気乗りがしない感じもなかった。あかねの足は、まっすぐに美沙の家に向かって歩いていた。
 目の前に美沙の家が見えた。
 あかねは少し前髪を整えて、制服の乱れを直した。
 インターフォンのボタンを押す段になって、あかねは今日初めて躊躇した。このまま進んだら、引き返せないような気がした。しかし、ここで引き返したら、意見のまとめも、美沙との約束も反故にしてしまう、と思い、そのままボタンを押した。
 インターフォンのライトが付いて、しばらくすると美沙、あるいは美沙の母の声が聞こえてくるはずだった。しかし待っても何も応答がない。
 美沙がいない? あかねは不安な気持ちになって、美沙の家の様子を確かめた。辺りはそろそろ暗くなり始めていて、家の明かりが漏れていた。まさか明かりがついているのに、留守ということもあるまい、と思いあかねはもう一度インターフォンのボタンを押した。
 しかし反応がない。
 あかねは嫌な予感がして、門扉を開けて美沙の家の敷地に入ると玄関の扉を引いた。鍵がかかっていない玄関が、あっさりと開き、あかねは自分の予感を確信した。
「美沙! 美沙! どこなの?」

 
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 あかねが教室につくと、机の上に封筒が三通置いてあった。これで計五件の意見書があかねの元に集まってきたことになる。あかねは一つ一つ封筒の中身を開いて、女バスの意見書であることを確認した。
 正直いって、自分一人でまとめる自信はなかった。
 かといって、誰か入ってもらおうと考えても、女バスの中には適任がいない。町田や上条は意見書を持ってきたほど一方的な主張をしてくるので、意見のまとめに入ってもらう訳には行かなかった。やっぱり、美沙にお願いするしかないか、とあかねは思っていた。
 昼休みに美沙があかねのクラスに来ると、そのまま廊下に出た。
「美沙、今日、美沙んとこに行けないかな?」
「? 家(うち)?」
「うん……」
「けど、部活は?」
「部活終わってから行くんでもいい?」
「そんなだと時間が遅くなるけど、あかね、大丈夫?」
「うん」
 とにかく意見をまとめておかないと、ぐっすりと寝れない。土日、美沙には川西のことを追ってもらうわけだから、今日しかないのだ。
「何か頼みごと…… だよね?」
「ご、ごめんね。そうなんだ。この前言ってた、女バスの意見のまとめ、手伝ってくれない?」
「いいよ。いいけど、そんなに期待しないで」
 美沙が少し暗い表情になった。
「……」
 私、美沙に頼りすぎてた? 私が声を掛けるときは相談事、ってこと? 私はやっかいな話を持ってくる嫌な子ってこと?
「部活終わるのって何時ごろ?」
「あ、やっぱりいいや。自分でまとめるよ。悪いよね。いつも自分の問題ばっかり手伝ってもらっちゃって」
「え? いいよ、大丈夫だから」
 美沙があかねの手をとってそう言った。
 あかねはうつむいて、首を振った。
「ごめん。頼りすぎてるよね。この前、その前もお願いをしているのに……」
「いいって、大丈夫!」
「ここまで頼るわけには」
 あかねは手を振りほどき、教室に振り返った。
 美沙が回り込んであかねの前に立った。
「じゃ、私も、あかねに相談があるから、部活が終わったら私の家に来て。それならいいでしょう? 相談にのってくれるよね?」
 美沙はじっとあかねを見つめた。
「美沙の相談にのるってこと?」
「そう。私も悩みがあるの。だから、今回はお互い様ってことで。ね?」
 あかねは美沙を見つめ返した。
 とても真剣な顔だった。
 とってつけたような相談ではない、あかねにはそう感じられた。相談とは、なんだろう? 美沙が悩むほどのことを、自分に解決出来るのだろうか。
 あかねはうなずいた。
「良かった。じゃあ、待ってるから。必ず来てね」
 あかねはもう一度うなずくと、教室に戻った。椅子に座って、机に突っ伏すようにして軽く睡眠をとった。

 放課後になり、部活が始まったが、あかねは練習に集中出来なかった。美沙の相談というのが気になっていた。とは言え、自分の抱えている意見のまとめのことが、練習に集中出来ない最も大きな要因だった。
 その上、今日のあかねは、女子が普段の通りの女子として見えていなかった。
 昨日の自慰のせいだ、とあかねは思った。良く考えると自分の周りは女の子だらけだ。女バスに入ったきっかけも、遠山美樹という『可愛らしい』プレーヤーに見蕩れて入ったのだ。
 いつもは気にしていなかった、服の隙間から見える肌や、練習中に不意に触れる胸やおしりが、妙に新鮮に感じていた。
 これじゃ、私も川西と同じだ…… あのセク川と同じ。あかねは、部長に話し−−と言っても悶々とするから練習出来ません、とは言わなかったが−−練習からはずれて、少し隅の方で気持ちを落ち着けようとした。
 そうして、しばらく座っていると、町田愛理が近づいてきて言った。
「あかね、どうしたの?」
「体調が悪くて」
「帰った方がいいよ、こんなところに座っていても良くならないし」
「うん」
 前かがみになった町田の襟元から、ブラと胸の膨らみが見えてしまった。あかねは、本当にすまない気持ちになって、うつむいた。
「え? 大丈夫? あかね」
 いや、具合が悪いんじゃなくて、愛理の胸を触りたくてモンモンとしているんだ、とあかねは思った。だからうつむいただけなのだ。
「……うん。やっぱり、帰るね。ありがと」
 このままだと変なことばかり考えてしまう。帰ろう、と思った時に、川西がやってきた。
 あかねは、顧問である川西に早退する事を話しに行った。
「先生」
「どうした岩波?」
「気分がすぐれないので、これで帰ります」
「ど、どこか打ったのか?」
 川西の手が妙な高さで近づいてきたので、体を触られる、と思ったあかねは、川西の手を払うような仕草をした。
「大丈夫ですから。打ったりしてません。気分が悪いだけです。すみません。帰ります」
 そう言って、部長にも会釈をしてそそくさと体育館を出てしまった。
 部室で着替えると、そのまま鞄をもって学校を出た。あかねは自分の家もどらず、そのまま美沙の家に向かった。

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 あかねは全く意図しない展開から、香坂美々(こうさかみみ)と手を繋いで学校へ向かっていた。家の近くで、女バスの後輩である彼女に突然抱きつかれ、相談にのることになったのだった。
 あかねは、歩きながら話しを聞いていたが、気持ちはそれどころではなかった。香坂の容姿が気になっていたのだ。香坂の髪、香坂の顎から喉へかけてのライン、美しい肌…… なんというか、それらすべてが、香坂美々という女の子が、あかねの好みのタイプだ、ということなのかもしれない。
 あかねはあることを思いだした。この子は、昨日何度も繰り返し『おかず』にしたアイドルグループの子に似ている。妹にしたいタイプというのか、顔に対する瞳のバランスから受ける幼いような顔の雰囲気が、あかねの琴線に触れた。
 胸はそんなにある方ではないのだが、腰、おしり、ふとももへのラインを見ていると、自分の足を擦りつけたくなる。
「先輩?」
 その言葉で、あかねは、ようやくそんな考えを終わらせ、美々の答えを待つような表情に向かって喋り始めた。
「……そう。そんなことがあったのね。けど、その『リンク』のメッセージのIDは紗英じゃないんでしょ?」
「けど、内容的に紗英しかいないんです」
「そっか。じゃあ、なんかそういう脅しが出来るIDをワザワザ入手して、使ったってこと?」
「川西とグルなんですよ、きっと!」
 美々と繋いだ手が、いつの間にか恋人つなぎになっていることに気づいた。
「ただ、ちょっと今は騒がない方がいいわ」
 あかねは指を自然に伸ばして普通の手のつなぎ方に戻そうとした。これ以上、この子と触れていたら、学校にいる間中、悶々となってしまう。
「何故ですか?」
「今、意見書を集めているでしょ。変に騒ぎになると、この後の投票が潰れてしまうわ」
「え? 本当にそんなことになりますか?」
 あかねは、美々の言葉より繋いだ手を離したくてしかたなかった。
「川西派、と呼んだらいいのかな。その子達はどうも騒ぎを起こしたくてしかたないみたいよ。この前も変なメッセージを送って来たじゃない? だから、きっと作戦なんじゃないかと思うの」
「ああ…… この前の川西が書いたような、変なメッセージの件ですか?」
「そう。騒ぎにならないように、もう少しだけ待ってくれないかな。騒ぎになって、先生とかまで巻き込み始めると、きっとこの投票とか、そういう話しじゃなくなっちゃうよ」
「けど、川西がしている悪いことは変わらないじゃないですか」
「そうだけど。大人に任せてるとまた『なあなあ』になってしまうでしょ。被害者側の気持ちも考えて、とか言って。ここはキッチリ女バスとしての意見をまとめるべきなのよ」
「わかりました」
 美々がつないでいる手を、もう一方の手で包むように触れてきた。あかねは、不意に昨日の自慰のことを思い出してしまった。この可愛らしい手で私に触れて欲しい、そんなことを考えてしまった。
「先輩!」
「は、はい!」
「本当にお願いします。お願いします!」
 あかねの手を握ったまま、祈るように手を顔の前で合わせた。
 あかねはどうしていいかわからなかったが、もしかしてもう一度この子をハグ出来るかしら、と思って待ち構えていた。
「では、用事があるので先に学校行きます、また部活で!」
 と言って、香坂美々は走り去ってしまった。あかねはしばらくそこで、繋いでいた方の自分の手を見つめていた。


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 翌朝、あかねは少し自己嫌悪になった。ベッドに色々と残したままだったとこに気が付き、やりっ放しで寝てしまった昨日の自分を思い出したせいだった。そんなことで落ち込んで学校を休むわけにも行かないので、一つ一つ学校へ行く支度を続けた。
 一階に降りた時には、父は既に出かけており、母が食卓ででテレビを見ていた。
「あかね起きたの。ご飯食べるでしょ」
 母がテレビを消して立ち上がり、台所の方へと行った。
「うん」
「めずらしいわね。もう支度しちゃったんだ」
 確かにいつもなら着替えて下りてくるだけで、鞄やらはまた二階に戻って支度するのが常だった。今日は時間的にも普段より余裕がある。
 母は大盛りのご飯と、納豆と生卵をあかねの前に出した。そしてそのまま、あかねの横に座った。
「あかね、朝から聞くことじゃないかもしれないけど」
「なに?」
「美沙さん、女の子が好きなんじゃないかしら」
 これが漫画なら牛乳かコーヒーをブーっと噴き出しているところだ、とあかねは思った。自分の食卓には残念ながらそのような汁物がなかったのが幸いした、とも思った。そして、自分自身に対し、意外に冷静だな、と感心した。
「美沙が? そんなことないんじゃない?」
「昨日、買い物していたらなんか、ゾクっとするような気持ちになって。何でだろう、あかねに何かあったかしら、とか考えていたのね」
「え、美沙ってなんかそんな感じあったっけ?」
「確かに直接的にそんなことはないんだけど。なんか、女性に接する時の感じが普通じゃない気がするんだよね。後さ、やまとも言ってたんだよね。『姉貴は美沙さんが恋人なんじゃないか』って」
「……」
 あんにゃろ、何を見てそんなこと言ったんだ! とあかねは思った。
「心配ないよ、母さんが買い物行ってる時だって何も無かったし」
「本当? あかねも女の子のアイドルにハマってるから、なんかそういうことになっていないか心配で」
「大丈夫だって。全然そういう気ないから」
 自分が昨日の晩に何を想像して自慰をしていたのかがチラリと脳裏によぎったが、母の様子からするに、表情には出ていないようだった。
「うん。それだけ聞ければいいかな」
 母は笑った。
 あかねはほっとした。
 さすがに自由な国とは言え、まだまだ同性愛というのは認知されていない。差別もされてしまう。
 国内にいるのが殆ど同じ人種なので、人種による差別が発生する確率が低い分、そういう性質や行動やちょっとした違いを見付けては差別するのだ。
 テレビとかを見ていると、どこの国でも、そいういう違いを見付けて攻撃したり、逆に褒め称えたりしている。人間の行動はしょせんそういうものなのかもしれない。特別なこと、というのは社会にとって貴重な資源でもあり、同時に異物でもあるのだ。
「ごちそうさま」
 食器を重ねて、台所にもっていき、そのまま鞄をもって玄関に行った。母が珍しく玄関先まで来て言った。
「いってらっしゃい」
「行ってきます」
 そう行って家を出て、学校に向かった。
 家の前の小道を曲がると、女バスの後輩がそこに立っていた。
 女バスの後輩なのは間違いないけど、だけど、えっと…… 誰だっけ……
「先輩!」
 後輩は、不意に目をつぶって間合いを詰めて突っ込んできた。目をつぶっているこの子を避けてしまったら、生け垣に衝突するか転んでしまう。とっさにそう思って、そのまま受け止めることにした。
 さっき大丈夫だよ、と母に言った手前、こんな状態を見られてはいけない、とあかねは思った。加えて、弟のやまとにも。
「ど、どうしたの? 何かあったの?」
「先輩……」
 あかねはピッタリとくっついてきたこの子の名前を思い出そうとしていた。確か、さ……
「さとみ?」
「?」
「さとみじゃないんです。紗英です」
 そうか、さえ、か。
「紗英が酷いことをしてきたんです」
 ……違った。この子の名前が紗英ではないのか、また振り出しだ、とあかねは思った。


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 美沙が帰った後、あかねは強烈に自慰がしたくなっていた。
 美沙が本気だったら美沙が満たしてくれそうだったが、やたらベタベタと体を合わせてくるのに、肝心の一線は超えなかった。本人がいた時には感じなかったことが、今になって感じられる。いっそ美沙についていって、美沙の部屋に行きたい。もっと触れ合っていたい。あかねは、感じたことのなかった強い欲求にとまどっていた。
 本当にこの気持をなんとかしたい。
 経験上、こういう気分の時は自慰をして処理していた。
 だが、今すぐに部屋にもどってそんなことをする時間はない。
 さすがに母も買い物から帰ってくる。そしたら部屋に来て私の顔を確認するだろう、母はそういう人だ。弟だっていつまでも外で遊んでいる訳もない。帰ってきたら私の部屋の扉をノックして、起きていれば入ってくるだろう。確実に部屋に一人きりになれる状況を待つしかない。
 あかねがそんな事を考えながら過ごしていると、弟が帰ってきて、その後に母が帰ってきた。夕食の蒸気が家中に漂ってきて、出来上がった食事がテーブルに並べられる頃、父が帰ってきた。完璧に計算されたようなタイミングで一家の夕飯が始まった。
 母が言った。
「あかね、体調、よくなったんでしょ?」
「うん」
「明日は行けそうか?」
「うん」
「姉貴のは仮病だろ」
「うん…… って、ぶん殴るぞ」
「元気戻ったな」
 そして全員が笑った。
 あかねの家族の中で、決まり事のようにそんな一連の会話が進んでいった。あかねもこんなやり取りは判りきっているのだが、そこ安心を感じるのだった。
 食事が終わり、あかねが食器を重ねていると、やまとが言った。
「後片付けは俺がやるよ」
「ありがとう」
「今日はあかねが先にお風呂入って」
 母が言うと、父が応えた。
「ああ、そうだね。早く入って、寝た方がいい」
 あかねはうなずくと、風呂場に行って歯を磨き、湯船につかった。着替えて、居間にいる父母弟に、おやすみなさい、を告げると、二階の自分の部屋に入った。
「ふぅ」
 自分の部屋に戻ると、抑えていた欲求がまた高まってくるのが分かった。何を考えながらヤルか全く考えていなかった。以前の、人気若手俳優が夜這いしてくるシチュエーションをボンヤリ想像しながら、ベッドに潜り込むが、なんだか全く捗らない。
「……」
 美沙のことを思いだすが、それも何か生々しいせいか、全く盛り上がらない。折角皆が居間にいる時にベッドに入れたのだから、盛り上がりたかったのに……
 あかねは、フト机に開きっぱなしの女性アイドルグループの写真に目がいった。
「?」
 少しこの娘達の写真を眺めながら、どういう人間関係なのかを想像した。ついこの前、青葉に行った際にぐるっと劇場近辺を回ったことも思いだした。
 あかねが、一押しにしている娘ともし、自分が入った入ったとしてどうなるかを考えながら、何故かその子に押し倒されて、色々と素敵な関係になっていくことを考えた。
「ん……」
 あかねは、思ったよりずっと捗ることが分かって、ドンドン過激な想像を進めていったのだった。


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「あかね、昨日はゴメン」
「……」
 あかねは、どう受け取っていいのかが分からなかった。その部分が、美沙に確認したいことでもあった。
「あの」
「えっと」
 二人は同時に話し出そうとした。
 あかねは、ケーキを切って口に運んでから、手のひらを美沙の方に向けて、話すように促した。
 美沙は紅茶を口に含み、すこし姿勢を正してから、言った。
「私が言ったことで、傷ついたよね」
 あかねはとまどいつつも頷いた。
「本当に、私もあのWiFiの呪い、っていうのを信じてしまいそうだよ」
「え? 美沙、それ、どういうこと?」
「あかねがそういう、変なものを見たり、聞いたりするのって、例のWiFiにアクセスしちゃってからだもん」
 あかねの中で、何か、モヤモヤしていたものが、少しだけはっきりした。
 そうか、私は初めからずっと、頭が狂ってるような人間だったわけじゃないのか。それだけでも重要な情報だった。ただ、やっぱり変なものを見てしまっていて、変なものを聞いているのは間違いない、という現実も同時につきつけられてしまった。
「私、気が変になったように見られてるのかな?」
「あかねが、他の人といる時の事、わからないから、どう思われているのかは分からない。けど、私はそうは思ってないから」
「えっと、その…… その時ってどうなっているの?」
「この前の神林さんの時はね、なんか口の中で、モゴモゴ言ってるの。視線がどこか狂っていて」
「え……」
「あ、狂ってるって、ごめん。そういう意味じゃなくて、どこを見てるのか分からない感じ、ってこと。大丈夫だから。大丈夫」
 あかねは慌てて訂正する美沙に、逆に自分が悪いことをしている感じなった。
「いや、そんなに気にして……」
 そこまで言いかけて、いや、気にしていたから昨日、あんなことを、とあかねは思った。そして今日も学校を休むことになった。そんなに気にしていない訳はなかった。それはあまりにウソだ。あかねは言いやめた。
 しばらく沈黙の時間が過ぎた。
 あかねも、美沙もケーキを食べ終わり、残っていた紅茶も飲み干していた。
「あかね、気にしてない?」
「大丈夫。もう大丈夫だよ。知りたいこともこれで分かったから」
「よかった」
「今日塾ないよね? ちょっと私の部屋にいく?」
「うん」
 美沙は元気を取り戻したような笑顔をみせた。あかねもその笑顔で、自分の奇行のことを忘れることが出来そうだった。
 部屋に入ると、あかねは自分の好きな青葉系アイドルの写真集や、ポスターの話しをした。
 二人は、ベッドの上に思い思いの格好で座っていた。あかねは壁に背中をつけ、美沙は足を伸ばして座った。
 一通りあかねのアイドル話を聞いていた美沙が言った。
「ちょっと興味湧いたよ。今度、青葉の劇場で一緒に見よう?」
「そうだね、私チケット…… あっ」
 スマフォがないから、チケットとか、そういうのはどうやって買おう、とあかねは思った。ただでさえ、情報にうとくなっているのに。
「チケットは私が取るよ」
 美沙が急に顔を近づけ、真面目な表情でそう言った。
「私の家にくれば、部屋にパソコンもあるし。席とか、一緒に決めよう?」
「う、うん」
 四つん這いになった美沙が、どんどん近づいてきて、あかねは壁沿いにすこし避けていった。
 美沙が言った。
「どうしたの?」
 どうしたの? と聞きたいのはこっちだ、とあかねは思った。ただ、それを口に出せなかったのだ。変な行動をしていたのは自分だったのだ、美沙は何も悪いことはしていない。それなのに、心配して家まで訪ねてきてくれた。
「ちょっと近くない?」
「近くないよ」
 美沙は、あかねの足の付け根の方に、仰向けに頭を載せて寝転がった。
「私、あかねに甘えたかったの」
 美沙はそう言った。
 その後も、美沙は何かにつけてあかねの体を触ってきた。あかねは、むず痒いような、それでいて心地よいような、そんな気分になっていった。


  
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 あかねは知らない街を歩いている内落ち着いて来たのか、美沙に言われたことが深刻な事態とは思えなくなってきた。私はまだ家族がいる、という気持ちで支えられていた。まだ自分には帰る場所があって、そこでは普段通りの自分でいられる気がした。
 ただ、依然として美沙にどういう顔をして会えばいいのかは分からなかった。しかし、少なくとも、父、母、弟はこれまで通りだろう。すれ違う見知らぬ人々を見ながら、自分がどう思われているかを考えつつも、どう思われようが大した問題にはならないと思った。
 あかねは、陸橋の上を走る電車に気づき、その路線沿いの道を歩き出した。
 スマフォが壊れてから、時計を持たないあかねには時間が分からなかったが、しばらく歩くと、駅が見えてきた。
 駅につくと、あかねは路線図をみた。降りた駅から三駅分ぐらい東に移動していたようだった。あかねは共通乗車カードを使って電車に乗った。
 家近くの駅を降りると、また暗い気持ちが顔をだしてきた。
 歩いていると美沙と出会ってしまうのではないか、ということ。女バスの連中に意見書を突きつけられるのではないか、という思い。自分がありもしないものを見たり、聞いたりする、頭がおかしい人間なのか、と考えると、やっぱりこのまま何処かへ消え去りたくなった。
 それでも家まで何も起こらなければ、もしかしたらそのまま何もなかったように明日を迎えられるかも知れない、とあかねは思った。そんな気持ちだけで、駅から家までを乗り切った。
 家の扉を開けると、居間から弟の声がした。
「姉貴、帰ったのか? さっき、み……」
 聞きたくない。あかねはそう思った。
 急いで二階の自分の部屋に行こうと、居間を通りすぎる時、やまとがこっちを見ていた。
「姉貴? さっき……」
「うっさい!」
 そう言いながら、半分安心したような、半分怖いような気分になった。あかねはそのまま弟の言うことを無視して、自分の部屋に入ると着替えもせずに布団を被った。

 結局、次の日あかねは仮病をつかって学校を休んでしまった。色々な事を考える気力もなかったから、ただひたすら母に甘えてベッドで横になって一日を過ごした。
 夕方になって来客のチャイムがなった。
 母が何かインターフォンで話す声がしていたが、バタバタと外へ出ていった。そして、再び玄関が開くと、母以外の女性の声がした。
 あかねは、美沙が来た、と思った。
 あかねは今、自分が会える状態なのかどうか考えた。自分だけが神林の声を聞いたり、見えないパソコンの文字を読んだりする、そういう指摘をされたのだ。いや、まだ、気持ちの整理がついていないから、やっぱり会えない、そう思った。
 階段を上がってくる足音を聞くと、一人ではないことがわかった。母はそのまま家にあげてしまったのだ。
「あかね、安村さんがいらっしゃったけど」
 珍しく母が美沙のことを苗字で呼んでいる。
 あかねは会いたくない、と断ろうとしたが、今声を出せば美沙に聞こえてしまう、と思った。今更どうでもいいことような気もするが、それはそれで印象が悪いから嫌だった。
「あかね?」
 と、母は確認するような声を出した。
「ちょっとここで待っててね。あかね、寝てるのかしら」
 母が部屋に入ってきた。
 あかねは寝返りをうって、壁側に顔を向けて寝たふりを続けた。
「あかね、安村さんがいらしてるけど」
 あかねは母の声を無視し続けた。
「あかね? 寝ちゃったの?」
 しばらくすると、扉が閉まる音がした。
「美沙ちゃんごめんなさい。なんか寝ちゃったみたいで。せっかくきて頂いたんだから、下でケーキでも食べていって」
「え、いや」
「いいから」
 そんなやり取りまで聞こえた後、二人は階段を下りていった。
 あかねは、美沙とどうつきあうのか、はっきりさせない限り学校に行くことが出来ない、と考えていた。
 もし美沙が母の誘い通り下でケーキでも食べているなら、その場で話して何か変わるなら。あかねはそんな事を思った。このまま何もせずに返してしまうと、また拗れてしまう。
 あかねは決断して、ベットから起き上がり、上着を来て下に降りていった。下りていく途中、母と美沙の会話が聞こえた。
 階段から下りると、美沙が声をかけた。
「あかね! 大丈夫なの?」
「うん」
「具合どう? ケーキ食べれる?」
 母は立ち上がって飲み物とケーキを用意しようとしていた。
 あかねは黙ってうなずき、美沙の隣に座った。
「今用意するね」
 母は紅茶とケーキをあかねの前に出すと、居場所がなさそうな風で、
「母さん、夕飯の買い物してくるよ。美沙ちゃんゆっくりしてってね。あかね、行ってくるね」
 母は、エコバックに財布を突っ込むと、慌てたように家を出ていった。


  
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