その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

2016年08月

「……マミ」
 時間的に暗くなってきた上に雨が降ってきた。
 立ち並ぶ店は、おじさんの喜びそうな、女の子のいる飲み屋ばかりだった。
 こんなところで位置情報が止まるなんて、さらわれたとか、スマフォを落としたとか、あるいはここからいきなり県外や電池切れになったとか……
 とにかくトラブルしか浮かばなかった。
 場所が場所の為、それは色んな危険をともなう。
「ばあさん。道に迷ったとか、落し物かい?」
 鬼塚刑事ほどではないにしろ、大きな男だった。半袖のシャツから見える腕には、縫ってつけたような傷がいくつも残っていた。
 薄い色のサングラスをしていて、目から表情は感じ取れない。ただ、声から感じるやさしい印象と見かけは正反対だった。
「……」
 声を出していいものか迷った。
 佐津間にはババア声だとは言われているが、客観的に自分の声を判断出来なかった。メイクがこれなんだから、声がどうあれ年寄りだと思ってもらえるとは思うが……
「ビックリさせちまったかな? ばあさんが、もう何度もここを歩いているからさ。気になっちまってよ…… それに傘いるかい?」
 ボロボロのビニール傘を差し出してくる。おじぎをして受け取る。
 男の口元が微笑んだ。
 口に出して『誰かを探している』と正直に告げるべきなのだろうか。
 その場合、誰を探していることにする?
 マミ? ミハル? 佐津間? 木場田?
 スマフォに写真があるとしたらマミかミハル。
 マミが何か事故に巻き込まれたとして、この男が関係者だったら?
 ミハルがここらへんで悪いことをしていたとして、この男がミハルと関わりがあったら?
 どっちも可能性が同じなら、最も救いたい人を先に探そう、と私は思った。
「孫を探しているんじゃよ」
 テレビのコントや、コメディを思い出しながら、出来る限りお年寄りのようなくちぶりを真似たつもりだった。
「それでグルグル回っているって訳かい。で、顔とか分かるかい? 知ってるかも知れねぇし」
 スマフォでさっき撮った写真を表示させた。
「へぇ…… ばあちゃん似てねぇな」
「!」
 なんて答えていいのか分からない。
「ちょっと見せてくれ」
 スマフォではなく、手を取られた。
「ばあさん、随分手とか肌が随分綺麗じゃねぇか……」
 これは…… ヤバイ。
「お兄さん、痛いよ…… 離しとくれ」
「あっ、ごめん」
 男はパッと手を離し、頭を下げた。
 バレてる? バレてない??
「……そういえば、ここらへんを歩いていたような気がするな。どこで見たっけ」
 この感じなら、バレていない方にかけるしかない。
「孫なら、電話番号わかんねぇの? かけてみりゃいいじゃん。かけかたわかんなければ、かけてやろうか?」
「ほう。そうじゃった。さっそくやってみよう」
 何が『ほう』だ、と思いながらも、スマフォを操作して、マミに電話をしてみた。
 そうだ。この男に言われる前に、どうして気付かなかったのだろう。
 ほどなく、答えがでた。
『電波のとどかないところか、電源を……』
「だめじゃ、電波が届かないんだと」
「圏外か…… ここらへんにいるのは違いないんか? ここらへんで圏外って……」
 大男は頭をかいて何か考えているようだった。
「地下だな、ここらへんの店は、わざと圏外にしている店多いんだよ」
「なんでじゃ」
「しらねぇよ。騒ぎたいときに携帯はじゃまなんじゃね?」
「じゃあ、地下がある店はどれかわかるかのぅ?」
「この通りなら、あのビルと、この店。もう一本向こうなら、赤い看板でFOXって書いてある店だな。知っている限り、だけど」
「ありがとうね。そのお店、探してみっからね」
「役に立てて良かったよ。じゃあ、な」
 私はゆっくりと手を振った。
 その手を見て、この手でバレるところだったのに、と思った。
 こういう素直な人間ばかりではない。手足にもメイクをしないと変装がバレてしまう。今度からは気をつけないとヤバイ。
 私はもう一度スマフォでマミに連絡をした。
 さっきと同じ。電波の届かないところか、電源を切って、と流れてくる。
 位置が動かなくなって、だいぶ時間が経っている。
 一つ目の店の階段を下りていくと、さっきの大男が言っていた通り圏外になった。
「クラブ・ヴェトロ……」
「まだ開かないぜ」
 入り口のところに、べったりとおしりを付けて座っている男がいた。
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 私は気になってたずねた。
「カードを落とした時はどうすればいいんですか?」
「管理用のサイトにアクセスして当該のカードを使用停止にすればいいんです」
「管理用のサイトって、まさかインターネット上?」
 業者はシステム構成図を見せながらいった。
「研究棟の中に置く予定です。インターネット側からの口は作らない、と聞いています」
「わかりました。所長、なくしたら使用停止にしますから」
「……まず、なくさないわよ。今のカードだって無くしたことないんだから」
 業者がうなずいた。
「まあ、いいわ。じゃ、この計画で行きましょう」
 私はうなずくしかなかった。
 所長は業者と水晶の研究棟を見て回るから、一緒に来ないか、と言った。私もこのまま研究室にもどってやることもなかったので、ついていくことにした。
 内装はまだまだこれからとのことだった。
 全員でヘルメットを被り、内装工事しているところを右に左に避けながら進んだ。
 扉がついているところもあったが、まだ実際に設置されていないところもあり、業者はポイントで立ち止まって図面に何か書き込んでいた。
 私は私で図面を見ているのに自分の居場所がわからなくなっていた。
「所長、なんでこんなに複雑な構造なんですか?」
「別に複雑じゃないでしょ? 工事しているから見通せてないだけよ」
「図面をみていると、完成したら、この状態より複雑になりそうじゃないですか」
「実際に歩いて覚えればいいのよ。私はもう何周もしたから図面見なくてもあるけるわよ」
 私は自分の実験室まで行ければ、とりあえずそれで用は足りる。それ以上のことは後で覚えようと思って諦めた。
 この規模の研究棟をつくるということは、いままでの研究棟からほとんどの研究室をこちらに移転させるつもりだ。
 古い棟はいずれ別の用途の建物にするのだろう。
「!」
 何か、後ろに気配を感じた。
「どうしたの? 行くわよ」
 怖くて振り返れない。何か先の鋭いものが背中たに突き立てられている。
「私の後ろに誰か居ますか?」
「居ないわよ?」
 私は一歩前に踏み出した。すると、その気配が急になくなった。慌てて振り返るが、所長が言った通り、そこには誰もいなかった。
「システムを入れる箇所を一通り回るから、急ぐわよ」
 所長の早足に、業者の人もついていくのが大変そうだった。
 私は半ば走りながら、ついていった。
 曲がり角にくる度に後ろを振り返るが、やはり誰もいなかった。
「ここが坂井先生の研究室ね」
「だいぶ上のフロアですね」
「上にあるだけじゃないわ。かなり中心部にあるのよ」
 タブレットで確認した。
「えっと、ここに来るまで何回カード操作しなきゃいけないですか?」
 業者の人は即答した。
「七回です」
「な、七回?」
「何驚いているの?」
「研究室に入るのに七回もカード操作なんて……」
 私は思い出した。開いているからと言って操作をしないで入ると閉じ込められるのだ。
「念の為聞きますが、途中でカード操作を飛ばしたらどうなるんですか?」
「たとえば、ここで操作わすれたら、この色が変わったエリアに閉じ込められます」
「……」
 真剣にそのエリアを追ったが、何もない。抜け道がないのだ、誰かに合わないかぎり変な空間で閉じ込められてしまうのだ。
「大丈夫です。これも管理用のサイトで復旧することができます」
「けど、こんなところにはパソコンは…… もしかして、タブレットからも?」
「もちろんです」
 いや、逆に普段はタブレットを持ち歩かないから、その時はアウト、ということだ。
 まだ何も汚れていない真っ白で綺麗な廊下が、私にとっては牢獄の壁のように見えてきた。
「事務の方に電話して復旧してもいいですから」
「そもそもカード操作をわすれなければいいのよ。開いているからって、飛び込まないの」
 所長が当たり前のことを言った。
 しかし、当たり前のことがなかなか出来ないのが人間だ。私は特にそういう傾向がある。
「……」
「じゃあ、先に来ましょう」
 中島所長は建物内の残りのエリアを案内して回った。私もついてあるいた。何がどこに取り付けられるとか、そういう情報はよく分かっていなかった。
「一応、主装置をつけるところはここでお願いします」
 既にサーバラックが幾つか立っている。

「そういう訳で、誰が入っているかしらんが、お前がここで待っているのはダメだ。寮に帰るとか、部活をするとか…… 白井は部活はやってなかったか。じゃ、教室に戻って勉強するとかしろ」
「……」
 歩かない私を佐藤は押した。
「ほらっ。ここはダメだと言っただろう?」
 とにかくここはダメだ。
 私は佐藤を職員室に返す為、廊下の曲がり角までゆっくりと歩くことにした。
 佐藤が職員室に入る音がした時、私は曲がりかどを曲がって、そこで立ち止まった。
 スマフォを確認して、マミの変装が終わったかを確認したが、まだ何もメッセージは入っていない。
 チラチラと廊下を確認しながら、その廊下の角で待っていた。
 二十分過ぎようか、と思った時、何か嫌な予感がした。
 職員室の前を通り過ぎて、面談室の扉を確認した。
「しまった」
 扉の表示が『使用中』から『空き』に変わっていた。
 ミハルとあの男性教師はどこから出た?
 それとも私が見落としていたのか。
 まさかミハルの赤黒いカチューシャに〈転送者〉のようなテクノロジーが備わっていて、どこか異空間に消え去ったのだろうか。
 もし教室で言っていたように佐津間と一緒なのだとしたら、佐津間を探した方が早い。
 私はスマフォで佐津間を見かけなかったか、メッセージで呼びかけた。
『どうしたの、キミコ。こっちはやっと変装終わった』
 マミから直接メッセージが来た。
『ミハルを見失った…… つけてるのバレてたかも』
『佐津間の居場所とか言ってるから変だと思ったけど』
『ミハルの居場所とは書けなかったよ』
『それはいいんだけど。そう。見失ったの……』
 私はなんと返してよいか詰まってしまった。
 ポン、と肩を叩かれた。
「えっ?」
 赤と青、星条旗のような色合いの服に、金髪の髪。これはまるでスーパーガー○だ。目立ち過ぎないだろうか。
「とりあえず写真撮る!」
 私はスマフォで写真を撮った。
 写真を撮り終わるなり、マミは廊下を走り出した。
「マミ?」
 マミは上のフロアを指差した。
「私が追うから! キミコは何も考えずに上で変装して来て」
「わかった!」
「なんとか探すから」
 マミの笑顔で救われた。
 私は急いで演劇部の部室に入り、地味な路線にすることにした。すこしシワのようにラインをいれ、くすんだ肌色を重ねた。
 服装も鮮やかではない紫や茶色、ベージュを重ねて来た。ツインテールが不自然だが、前髪はあげているので、注意してみなければツインテールには感じないだろう。見るからにお婆さんに変わった。
 部室を出る時に、スマフォをチェックすると、どうやら前日と同じように街に向かったようだった。まだミハルは見つかっていないが、佐津間を見つけて追跡しているらしい。
 私も学校を出ると、いそいで街に向かった。
 佐津間が繁華街の方へ向かったと、メッセージが流れてきた。
 移動しつづけている為、マミにも追いつけない。佐津間とミハルは一体どこで待ち合わせなのだろう。
『佐津間が止まった。あっ、ヤバイ……』
 どうしたのだろう。
 私は歩いてマミの位置情報を頼りに歩きながら、何度もメッセージを確認するが、それ以降のメッセージが来ない。
 佐津間に見つかりそうになったとすれば、しばらくスマフォを触れないかもしれない。
 佐津間が動き出したのだとしたら、位置情報が動いてもいいはずだが、マミの動きは止まっている。
『マミ、そこに行ってもいいの?』
 返事がない。
 マミの身に危険が及ばないよう、慎重にその位置に近づくことにした。
 身軽な動きをしてしまうと、変装がバレてしまう。じっくり、ゆっくりと周りを見回し、一歩一歩確かめるように歩く。
 老眼のように、スマフォを見るにも近くしたり離したりしながら確認する。
 もうマミの位置とは一直線で何も障害物はないはずだった。しかし、視線の先には人がいない。いないというのはウソになるが、あの赤と青のスーパーガー○のような服が見あたらない。
「どうしたんだろう……」
 ゆっくり歩きながら、さらに周りを見回す。
 情報通りなら佐津間がいるはずなのに、佐津間も見つからない。メッセージにはなかったが、木場田も、鶴田も、ミハル本人も見つからない。
 位置情報のズレがあるのだろうか。
 それしか考えられない。とにかく、この周囲であることは間違いないのだ。スマフォの地図をみながら、あっちこっちをしらみつぶしに歩いて回った。
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「これ神代さんとか着るの?」
 マミから衣装を受け取り、自分の体に当てて見せる。
「首相に代わってお仕置きよ!」
 プリクラの決めポーズを見せた。
「……着てみたりすると思うか?」
「いや……」
「悪いけど」
「なら最初から聞くなよな……」
 神代さんは肩を落とした。
「まあ、これで街中をあるけばちびっ子の注目の的だぞ。これも貸出OK範囲だからな」
「私はサイズ的に無理。キミコなら着れんじゃん?」
「いや…… 『とうのたった魔法少女』はイヤ」
「何それ?」
 という感じに、後いくつか服を見ている内に予鈴が鳴って教室に戻った。
 午後の授業が終わると、ミハルはすぐに口を開いた。
「用があるから。先に帰って」
「……そ、そう。どこに行くの」
「……」
「館山、時間になったら来いよ」
 佐津間がそう言うと、ミハルはうなずいた。
 そのまま佐津間は教室を出ていった。
「あいつと一緒なの?」
 ミハルは無言でうなずいた。
「どこに行くの」
「……」
 ミハルは視線を逸らした。
 マミがミハルの肩に手を置いて言った。
「助けが必要なら言って。先生に知れたくないことなら秘密も守るよ」
 するとミハルは私達を睨みつけた。
「あなた達に何が出来るの」
「!」
 確かに学生が出来ることなんて、限界があることは確かだ。マミも困った顔で私を見るだけだった。私達に出来なくても、鬼塚刑事とかに頼めばなんとかなるかも…… いや、そういうことじゃないんだろう。
 考えても考えてもミハルに胸を張って答えるだけの答えは出てこなかった。
「さよなら」
 そう言ってミハルは教室を出ていってしまった。
 ここでしっかりとミハルを説得できれば、もしかしたら止められたかもしれないのに。
 言葉を持っていなかった自分が悔しかった。
 しかし、ミハルが何か悪いことをしていると決まったわけでもない。次の行動を起こさねば。
「マミは先に変装してて。追い付いたら私と交代して」
「うん」
 私はマミと別れてミハルを追った。
 ほどなくミハルを見つけ、気付かれないように後ろをついていった。
 するとミハルは教師に声をかけられた。その男性教師の顔は見えたが、私には誰だか思い出せない。おそらく別の学年の担当なのだ
 ミハルはその男性教師に耳打ちされた。
 ミハルは手で何か数値を示すと、教師はうなずいた。そしてタブレットで何か操作をしてから、ミハルの背中を押すように、面談室へ入った。
「えっ……」
 追いかけて、談話室の前で耳をつけてでも中の会話をきくべきか悩んだ。



『学校でこんなことしていいのかしら』
 ミハルはブラウスのボタンをはずしながら、男性教師に言った。
『それがたまらないんじゃないか。面談室はプライバシーを守る為の部屋だから、録画も録音もされないやるには最高の部屋だ』
 ミハルはソファーに横になって目を閉じる。
『お望みの通り、待っていれば良いのかしら』
『高校教師になった一番の目的を今日果たせるとは思わなかった』
『JKを抱く…… そんなことが目的で高校教師になったの』
 教師はミハルの上に体を重ねていく。
『|他人(ひと)には言うなよ』



「|白井(しろい)何やってんだ?」
 担任の佐藤の声で、私は妄想から現実に引き戻された。
 佐藤は親指で面談室をさして言った。
「誰か入ってるのか?」
「えっ…… そうですね。使用中ってなっているから、誰かいるんじゃないですかね?」
「ここの出入りは校長しか分からない。先生の名前は分かるが、どんな生徒と入ったとかは分からない」
 えっ、本当にそういう行為用には都合がいいんじゃないか……
「それはセキュリティ上の穴なんじゃ」
「それは俺の決めることじゃない」
 佐藤は私の肩に手を置いて、ぐるっと向きを変えさせた。
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 もしかすると、どの証券会社も同じロジックだったら、と思うとゾッとした。
 売るなら売る、買うなら買うを加速させ、急激な株価のカーブを描き、その会社が傾くほどの株売買をしてしまうのではないか、と。
 興味を持った私は自分で複数のインスタンスを作って同じ取引所にアルゴリズム取り引きが動き出している実験をした。何度か実施したが、殆ど株価は波立たなかった。実際の株式市場にアルゴリズム取り引きが複数存在しても同じはずだ。
 だとしたら、現実で似たような過激な株価のカーブは、だれの仕業か。考えた結果、株価の激しい変動のトリガーを引くのは、多分、人間の売り買いなのだ。
 自動取引で怖いのは取引停止になるほどの安値や高値であって、その前に利益を確定しようとする。だから、乱高下の一番損をする部分、というのは人間が後乗りでやってきて行ういるに違いない。私はそう結論づけた。
 ただ、自動取引は人為的であるが為に、きっかけのカーブがなだらかな上昇や、なだらかな下降にならない。その変化が人の目に捉えられる大きさだった時、人が後乗りで動き出し、大きな株価の動きになる。
 目隠しをした人の臆病は動きよりも、目を開いている人がするスポーツの中での方が、衝突した時の度合いが激しいようなものだ。
 ノックの音がした。どうぞ、というとドアが開いて杏美ちゃんが顔を出した。
「坂井先生、中島所長がいらっしゃいました」
「わかりました、すぐ行きます」
 タブレット端末を手にとって、近くの打ち合わせ室へ向かった。
 打ち合わせ室は空調をいれていないせいか、蒸し暑かった。灯りを付けて空調を入れると、ノックの音がした。
 ドアを開けると、中島所長が三人ほどの業者をつれて待っていた。
「どうぞ」
 席につき名刺の交換が終わったところで相手が話し始めた。
「新しく出来る研究棟ですが、入退室について厳しくコントロールなさりたい、との要望がありまして、案をつくってまいりました」
 タブレットで配ってあった資料をみると、研究棟のフロア毎の図面があった。そこには権限のレベルが書いてあった。
「この図面に書いてあるレベルに応じて、扉の開閉の許可がつけられます。レベルは三段階。一般事務の方、研究員の方、室長以上の方、としています」
 そういうと、個人にどういうレベルをつける予定かが書いてある資料を見るようにと案内された。
 その資料を表示させると、室長以上の氏名が書かれたリストに、権限のレベルが併記されていた。
「……ダメね。私にはもうひとつ上レベルをつけて」
 所長がそう言うと、業者の人はお互いの顔を見合わせた。
「……」
 図面を見てくれ、と言った後、真ん中に座っていた人が切り出した。
「どの部屋に入らせたくないのですか? 部屋の意味的にはこのレベル以上を付けても意味はありません?」
 確かに、図面上、入室のレベルは3種類しかない。この室は所長のカードだけでしか開閉しない、という部屋があれば意味はあるのだが。
 所長はタブレットで何か資料を探しながら話し始めた。
「カード操作を徹底させる為に、操作しないと出たり入ったり出来なくする機能があったわよね?」
「……」
 業者はまた顔を見合わせた。
「……あった。アンチパスバック。私はこれを無効にして」
 業者は安堵したように言った。
「分かりました。一つレベルを高くして、所長様はアンチパスバックの対象外とします」
「そのアンチパスバックってなんですか?」
「坂井先生にもお渡している資料の機能編のこのページに記載して……」
 もう一人の業者が割り込んできた。
「簡単に説明しますと、カード操作なしで部屋を出たら入れなくなり、カード操作なしで入ると出れなくなる機能です」
「扉が開いていても操作がいるということですか?」
「そうなります」
「随分不便ですね」
 業者は苦笑いしていた。
「本来、研究室だから、これくらいのセキュリティは当然なのよ」
 所長は権限は強いがセキュリティレベルが低い、ということになる。
「けど、所長はセキュリティレベルが低くていいんですか? カード取られたらそれこそ抜け穴になってしまいますよね?」
 業者はまたお互いの顔を見合った。
「それでしたら、落とさない方法がありますよ」
「どういうことです?」
「生体認証です」
「具体的には? 指紋はもう懲りましたから」
 業者は引きつったような笑顔になった。
「大丈夫、今回は指は指でも静脈を認証しますから。それとも虹彩でもいいですよ?」
 業者は自分の目を指さしていた。
「いくら違うの? 金額によるわ」
 中島所長がタブレットに概算見積もりを表示させ、そこをコツコツと叩きながら言った。
「一台につき四万……」
「三倍じゃない。カードのままでいきます」




 授業を受けている間中、腕と背中がかゆかった。傷に出来たかさぶたが、もう取れようととしているためだった。
 確かに私は怪我の回復が速い。
 私の体に何をされたのか、翼で飛べたり、足や手が硬化したりする以外には何も分かっていない。パソコンが目の前に置かれたが、マニュアルはおろか、カタログさえ知らない状態、それが私の自分自身の能力に対して置かれた状況だった。
 保健の先生が、もし私の中の、いまだ知らない能力まで教えてくれる、というのなら、もしかして告白して協力してもらった方が得なのかもしれない。そう思った。
 いや、やはりハッタリだと考える方が自然だろう。舐めただけで人のDNAが分かるようなら、人類がゲノム解析するのに何年もかかることはなかっただろう。
 昼食後に、マミとミハルと木陰で話している時、あまりに腕が痒くてそでをめくった。
「あんまり良く見えないんだけどどうなってる?」
 マミとミハルが私の正面に回って、腕をとって傷を見てくれる。
「うーん、かさぶたも浮いてきてるよね。剥がれそうなら、剥しちゃえば?」
 本当は背中もかゆいのだが、さすがに校庭で背中をさらす度胸はなかった。
「ちょっと端っことってみようか?」
「治ってないと痕になっちゃうよ」
 ミハルが剥がすのをやめさせた。
「かゆいのは我慢しろってことね。ミハルの言う通りかも。確かに、治ったら勝手に取れてるもんだよね」
「けど痒すぎるんだよ〜」
「ミハル、こんなところにいたのかよ」
 鶴田、木場田、佐津間の三人組が歩いてきた。
 ミハルは三人組の方に小走りに走っていく。
「ミハル、どこいくの?」
「……」
 マミの声には答えない。軽く手を振ってついていってしまった。
 まただ。何か男子と関係があるのかもしれない、その疑念は拭い切れない。
 私達はミハル達が校舎に消えていく後ろ姿を見つめていた。
「マミ、やっぱりまだ調べないとだめかな」
「学校でそんな行為はしないとしても、何かしているのは確かなんじゃないかな」
「そうだよね。何かしている、それを調べないと」
 私達は|神代(こうじろ)さんのところへ向かった。
 演劇部の部室は相変わらず外から見ると真っ暗だった。
「来ましたか」
 神代さんは部室の扉に背中を預けて、腕を組んで待っていた。
「今日も放課後、ミハルがどこか寄っていくようなら、変装したいんだけど」
 神代さんは困ったように頭をかいてから、ゆっくりと口を開いた。
「ぜんめんてきに協力するよ、って言いたいんだけど……」
「えっ?」
「次にやる演劇のシナリオ上がってきたのよね。だから部員で今それに向かってガンガン練習始めようってとこなのよ。貸せる衣装は貸すし、メイクもしてってよ、ただ、手は貸せない」
「……」
「ようはキミコのメイクは私が、私のはキミコがやればいいのね?」
「そういうこと」
「私メイクって言われても……」
「やってみれば意外とできるかもしれないじゃなん」
「わかった」
 その後、部室に入って神代さんから、貸せるものがどこにあるのか、メイク道具はどこにあるのかを説明してもらった。
「一応、前回の巨乳セットはここにあるから」
「もうしないから。それ見るだけで胸がムズムズする」
「そう。残念ね」
 ここからここまでが貸せる範囲、と言われた衣装でマミが何か気になるのを見つけたようだった。
「マミ、何見てるの?」
「キミコって子供の頃アニメとか見てた?」
「まあ、見てたけど。合体ロボットものとか、最ボークものとかが……」
 マミが首を振った。
「そういうやつじゃなくて。昔さ、魔法少女アニメがあったでしょ?」
「あ〜あった。皆見てるって時期があった」
「じゃん!」
 マミがピンク色のキラキラした衣装をあててみせた。
「あっ! プリクラだよね!」
「魔法少女プリンセスクララは某年11月より毎週日曜日に放送され、魔法少女なのに主に格闘するという不思議路線を開拓したと言われている」
「えっ、神代さん、詳しいの?」
「こんなの着るようなのやったの?」
「年齢層が低い時に、着て出ると『プリクラー』って掛け声が入って、お芝居への移入度が高くなるからな」
「?」
 全くどういう意味だか分からなかった。
「いろんな衣装で置き換えがきく役があるんだよ」
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『だから、あなたは、誰?』
 甲冑が突然正面に現れて、私に向かって剣を突いてきた。
 避けるような反射神経がなかった。目を閉じるのが精一杯だった。
『女王の近衛兵……』
 後ろからそう聞こえた。
 私は目を開くと、キラキラ光る剣が左肩の上にあった。
『読んではいけない。あなたの世界に災いが起こる』
『……』
 背後の気配が消えた。
 剣を収めると、甲冑の人はヘルメットを開けて、目を見せた。
 すべてを覚えているわけではないが、この甲冑の人は、タクシーで現れた近衛兵だ。
『大丈夫ですか?』
『いきなりだけど、聞いてもいいですか? ダメと言っても聞きますけど。これはなんなの、私の後ろに居た人は誰?』
『現女王の姉です』
『姉? 普通、姉が女王になるものではないの?』
『姉には女王になる力がなかった』
『力? 何それ、能力ってこと? 社交性とか?』
 こちらの常識で何か答えがでるとは思えなかった。
『しかし、あなたには……』
『?』
『すみません。干渉を禁じらているので、私はこれで失礼します』
 近衛兵は一瞬のうちに姿を消した。
 干渉…… もう充分干渉しているじゃない。私の質問に答えてよ。
 力、がなんのことか分からない。
 けれど、読め、読むな、と言っているのなら、あのコードに関わるものだ。
 コードを読むことが出来る、出来ないの違いだろうか。
 姉は、読んだら死ぬ、と言っている。
 妹は読め、と言っている。
 妹の近衛兵はタクシーで襲われた私を守った。私を守った?
 ということは、姉が私を襲わせている、と考えるのが正当だろうか。
 読んだら死ぬ、とか世界に災いが、とか。つまり、読んだら『姉』は女王にはなれない。
 待って! 私が読んだら、私に読む『力』があったら、私が女王になるとか、そういうことなのだろうか?
 自問自答しながら、起こった出来事を整理していた。
 もう一人の自分が、その事が無駄だと気づく。幻の世界の女王が誰になろうと、現実の私は全く関係ないじゃない。
 その通りだ。
 きっと疲れているのだ。
 なんとなく、受け入れてしまっていたが、電車の中で読む小説の世界のようなものだ。
 エンターテイメントの世界だ、小劇場で広がる、人生とは別の、空想の世界。それと同じだ。私が見ている夢、と言ってもいい。
 そんなことを考えても、現実は何も変わらない。
 楽しい夢に逃げるのはよそう。
 早くお金を用意して、手術を受け、治療を始めなければ。
 重く、苦しい気持ちが、私の心を暗くしていた。



 光ファイバーが特定の条件下でファイバーフューズという現象を起こす。
 今の証券取引は某国のルールのまるまま受け入れたためにHFT(高速株取引)が主体となっていた。これはアルゴリズム取引だけではなく、取引所と取引所の間を早く情報を渡したものが勝つ、という単純な面もそなえていた。
 先回りして利鞘を稼ぐ、一瞬のインサイダーとも言えるが、まさかこのコンピューターの一瞬の処理速度や、光ファイバーの通信の遅れが株取引に影響すると考えていなかったのだろう。それは制度の抜け穴である。
 その制度の抜け穴においては、速さが勝負を決める。今、この株取り引き中でファイバーフューズが起こったら…… のろのろともう取引が終わったクズ株のマヌケな取り引きだけが残ってしまう。だから、XS証券は高トラフィック下でも安定した光ファイバーが欲しかった。
 そういうことか。私はXS証券が今回の共同研究に関してだしたIR情報を改めて読み返し、一つ一つの謎のキーワードを調べるなか、ようやく証券会社と光ファイバーの関係を理解した。
 この株取り引きの世界で、何百倍ものデータを流しつつ、ファイバーフューズというトラブルとは無縁、だとしたら。
 まさにHFTをするための光ファイバーと言える。
 XSの林が上条くんに作らせていた部分…… 結局、私が作った部分でもあるが、いわゆる『アルゴリズム取り引き』をする部分だ、ということも分かった。
 多数が売る時には売り、多数が買う時には買う。利益がでたら、値動きの鈍い、別の株に移る。ウォッチする為に様々な株を定期的に少量ずつ売り買いしながら、値動きを監視する。ある基準の値動きを超えたら、多数が売るなら売り、買うなら買う、という動作を始める。
 林から出された暗号文のような指示は、もっと変なことがいっぱい書いてあったが、大まかな動きはそうだった。特定株で基準の利益を上げたら、即時に動きの鈍い株へ分散する。その二つのモードの繰り返しだった。
 書いてみたが、面白みのないコードだった。
 しかし、多数が売る時に売り、多数が買う時に買う、という動作には様々な例外が書き加えられていた。
 安くなる株を更に売って、最終的に利益を確定する為に、空売り、という注文をだす。他の多数が買う時に買うが、一定の根付になったら今度は一気に売り始める。

「こっちもかなり酷いわね。けれど、本当にアスファルトで擦ったのだとすると、もっと酷いはずだけど……」
「あの、先生」
「黙って」
 右手に手錠を付けられ、その反対側をベッドのパイプにつないだ。左手も同じようにつながった。
「これは何の真似なんで……」
 先生はポケットから電気カミソリサイズのものを取り出した。
「!」
「そう、騒いだらこれでおとなしくしてもらうから。痛い目に合わない為には、静かにしてることね」
 先生はそのままベッドに上がって、私のお尻の上に馬乗りになった。
「あなたの傷口は治るのが早すぎるのよ。いくらあなたが若くても、これはさっきの傷じゃない」
 指が背骨の上を通って、ブラの金具のところで止まり、そのまま金具をはずした。
「やっ……」
「さっきのきずじゃないって言っているの。答えはないの?」
「……」
「そう。じゃあ、やっぱりここも舐めてみるしかないのね」
「いやっ」
「コレが見えないの?」
 またさっきの電気カミソリのようなものーースタンガンをちらつかせた。
 先生は私の腰を足ではさみ、左手を胸のすぐ横についた。
 右の指が確認するかのように私の右の二の腕に触れ、そこから脇の下へ、そのまま胸へとなぞられた。
「(気持ちいいなら、声をだしてもいいのよ)」
「そ、そんなことあるわけ……」
 胸と胸の脇を指が行ったりきたりする度、『あっ』と声が出そうになる。
 スタンガンを持った手が、私の前に置かれ、先生の顔が上から近づいてくる。
 耳に息を吹き込むようにささやく。
「(あなたの体の秘密、わかっちゃった)」
 まさか、背中の傷のせいで、翼が……
「あっ」
 先生は耳を舌で舐めた。
 そこから、首筋を伝ってさがり、肩甲骨の後ろの傷跡を何度も舐めた。
「あっ、先生……」
「ここ、怪しいわよね」
「……」
「先生は、あなたが自分で説明して欲しいの」
「……」
 手を離して腕を組んで私を見下ろしていた。
 鋭い目つきだ。
 メガネの右端をつまんで持ち上げると、言った。
 舐めただけで私の何が分かるというのだ。背中の傷だって、早くかさぶたになったぐらいの話しで、そこに翼が出る切れ目が見えたりはしない。
 何しろレントゲン写真にも映らないのだ。
 だから、あの〈某システムダウン〉から変わってしまった私の体を、見抜いたいた医者はいなかった。
 だから、舐めただけでは分からないはずだ。
 私はそう確信して、口を開かなかった。
 これは|誘導(はったり)だ。
「話さないのなら、それでもいいけど」
 急に覆いかぶさってきて、私の顔を覗き込んだ。両手で胸をもみはじめた。
「(話してくれたら、協力出来るかもしれないけど、そうじゃないなら、あなたを脅すネタにさせてもらうわ)」
「あっ、あっ…… ん……」
「キミコ! どうしたの?」
 先生がマミに返事をする。
「大丈夫大丈夫。私が傷を舐めてみてるだけだから」
 先生は手を止め、ベッドを降りた。
「お友達に助けられたわね」
 順番に鍵をはずした。手首が赤くなってしまった。
「まあ、傷のことを言えば、あなたにとっては大したことはなかったみたいね。何も手当をする必要はないわ」
 私は背中に手を回してホックを止めてから上体を起こした。
 先生はブラウスと上着をとってくれた。
「はい! いいわよ」
 突然、しりきりを開け、先生はマミの方に歩み寄った。
「傷は大したことないみたい。ちょっと性格に難があるみたいだから、あなた、よく面倒みてやって」
 ポンポン、とマミの肩を叩いて、保健室の扉を開けた。
「服着替えたらそのまま出ていって構わないわよ。じゃ、これで」
 扉がしまって、廊下を早足に去っていった。
「キミコ、本当に大丈夫だったの?」
「ちょっとびっくりしたけど、別に何もされてないから」
 ……いや、ちょっと感じてしまったのだが。
「大体、傷口舐めるなんて保健室の先生にあるまじき行為だよね」
「唾液で菌が繁殖するよね」
 着替え終わって、ベッドを降りた。
「さあ、教室に戻ろう」
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申し訳ありません。

本日掲載分の準備ができておらず、出来次第掲載とします。

よろしくお願いいたします。

「本当に佐津間をすきじゃないなら、あそこで『そんなんじゃねぇらしいから』って言わない方がいいよ」
「?」
「キミコ、ツンデレだと思われてるんだよ。男子はちょっかいに反応してくれる女子は、気があるって思っちゃうんだよ。嫌いなら無視。私も見てるとキミコが佐津間好きなのかって思っちゃうもん」
 え? あ? そう……
「わかった。そうだね、誤解されてんのかも」
 言ってくること全部無視しても平気なのかな。「席の後ろに座るのも止めた方がいいのかな?」
「佐津間が言った時は無視して、鶴田か木場田が言うまで待つのね。あるいは私が『いこうキミコ』って言うからそこまで待つ。そうすれば佐津間に答えたことにならないでしょ?」
「面倒くさいね……」
「変に相手をすると、佐津間が調子にのるんだよ。こうすれば会話出来る……って感じで。俺がこやって話しかければ白井は答えてくれるって」
 保健室の前に立った瞬間、扉が開いた。
「あら、どうかしたの?」
 メガネをかけた女性がいた。
 どうやら保健室の先生らしい。細い顔立ちと大きなフレームのメガネがアンバランスに思えた。
 白衣の下は…… 着ていないんじゃないか、と思える。いや、何も着ていないわけではないが、透けて見える部分から推測しても、つけている布の面積は大して大きくない。
「腕と背中を打ってしまって」
 私は倒れた時に打った腕を見せた。
「あら、酷い。けど、もう綺麗に包帯してあるじゃない。とにかく見てみましょうか。さ、中に入って」
 私は向かいに座って状況を正確に話した。
 だが、〈転送者〉を倒した、とは言わなかった。
「そう…… 住宅地の道ってアスファルトよね?」
 先生はメガネの右のつるをつかんで、クイッと上げた。
「包帯取ってもいいかしら」
「ええ」
 手際よく包帯を取っていく。
「消毒はしたの?」
「はい」
 すべてを巻き取って、傷口をさらしていた。
「確かに血が出たみたいね…… けれど、もうかさぶたになっている…… 取った包帯に血はにじんでいない。何か当てていた様子もない…… と」
 先生はニッコリ笑った。
「ちょっと舐めても良いかな?」
「えっ?」
 保健室をぶらぶらしていたマミも振り返った。
「傷口ってよく舐めたりしなかった? 私、ずっとそれやっててね。なんとなく分かるようになったのよ。どういうことして出来た傷だ、とか」
「本当ですか?」
「じゃ、舐めてみていい?」
「……」
 そんな霊感刑事ドラマみたいな超能力があるわけがない。私はそう思ってうなずいた。
 肘からツーっと舐めあげていった。
 傷口はもうかさぶたになっていて、しみたり痛みはなかった。
「綺麗な舌ですね」
「そう? ありがと。念の為左腕も、良い?」
 うなずくしかなかった。
 ツーっと舌を滑らせていく途中で、先生は両目を伏せたり気持ち良さそうな顔をする。
 それはゾッと背筋にくるものがある。
「な、なにか分かりました?」
「少しね。舐めて判ったわけじゃないけど……」
 まずい。
「そしたら今度は背中がみたいな。あっ、付き添いの|娘(こ)は見ちゃダメよ」
 ついたてで囲まれたベッドに行くよう、二の腕を触られた。
「マミ、待っててね」
 ついたてを動かして、回りから見えない状態になった。先生は私の制服のボタンを外し始めた。
「あっ、自分で出来ます」
「(いいのよ、やってあげる)」
 先生は顔を近づけてくると、小声でそう言った。
 上着を脱いで、後ろを向くと、そのまま後ろから先生の手がブラウスのボタンを外し始めた。
「あ、あの……」
「(心配しないでいいのよ。背中の傷をみるだけなんだから)」
 わざと吐息が掛かるような話し方をしている、そうとしか思えない。
「ほら、腕を抜いて」
 ブラウスを脱ぐと、先生がそれをカゴにいれた。
「じゃ、そこにうつ伏せになって」
 肩に軽く触れられた。
「はい」
 上履きを脱いでベッドにうつ伏せになって、先生の側に顔を向けた。
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 タクシーの運転手に住所を告げるとナビに入れていた。
 もやもやとした気分のまま、私はぼーっと外の景色をみていた。
『お客様、困ります』
 何が困るというのか、と思い私は運転手の方を見た。
『そういうものを後部座席に乗せると、シートが痛むんですよ』
『なんのこと?』
 言いながら、目の端に入っていた金属の光を確認した。
『……か、カッチュウ?』
 私の隣に置かれていたのは金属製の鎧だった。
 人の姿のように積み上がっていた。
 いや…… 待て。
 空じゃない、中身が入っている。
『ガシャッ!』
 ヘルメット部分が開いて、こっちを睨んだ。
 彫りの深い西洋人のような目元だった。
『お客さん、その甲冑のせいで燃費がガタ落ちだ、料金倍払ってもらいますよ』
『私が乗せたんじゃないわ、最初から乗っていたんでしょ?』
『トモヨ、ここは危険です』
『なんで私の名前っ……』
 その時、甲冑の男が私の後頭部目掛けて腕を差し込んできた。
『伏せて!』
 ガツン、と大きな音がした。車の後部ガラスが割れ、破片が散った。
『何!』
 振り返ると、甲冑の男の腕が、尖った槍のようなものの先端を握っていた。
 ガツガツと|蹄(ひづめ)の音がする。
 左を向くと、少し後ろに鎧を付けた馬が走っていた。
『これはランスという武器で……』
 言うと、槍は引き戻された。
 甲冑の男は後部ガラスを振り払って、半身を乗り出した。
『違う! そういうことじゃなくて!』
 後ろに甲冑の男が来たために、助手席の背もたれにしがみつきながら、そう叫んだ。
『どういうことです?』
『馬にのっている奴と、あなたは何!』
 車に槍を振り下ろしているらしく、ガツンガツンと金属が歪んでいく音がする。
『トモヨを女王にしない為に、暗殺者が動き出したのです。私は現女王の近衛兵』
『王女? 暗殺者? 近衛兵?』
 タクシーの運転手が叫ぶ。
『お客さん! 暗殺者とか、近衛兵とか物騒なものはお断りなんだけど!』
『こっちだって知らないわよ!』
「お客さん!」
「知らないって言ってるでしょ?」
「お客さん、着きましたよ。起きてください!」
「?」
 カチカチカチとハザードランプが点滅する音が聞こえる。
 後部のガラスはしっかりとはめ込まれている。
 甲冑の男も、馬から槍を突く男もいない。
 幻? 全くの幻影と幻聴…… 私、どうかしてる。
「ここでよろしいですよね?」
 窓の外をみる。
 自分のマンションの玄関口についている。
「……は、はい。カード使えますか」
 なんだったのだろう。
 自分は寝てしまったのだろうか、けれど、意識が切り替わったような境目に一切気づくことがなかった。それとも、まだどこかこのままさっきの世界につながっているのだろうか。
 私はタクシーの支払いをすませると、前後左右を警戒しながらゆっくりと車を降りた。
 深夜のこの道は、車も人通りも殆どなかった。
 ちょっと先で信号が黄色く点滅しているだけだった。
 タクシーは、ゆっくりとUターンして元来た道を戻っていった。
 何も動くものがなくなった道を眺めていると、さっきの蹄の音が聞こえてくるような、そんな幻聴に襲われた。私は走ってマンションに逃げ込んだ。
 部屋に入ると、机に座ってノートパソコンを開きかけ、そのまま閉じてしまった。
 メールとか、メッセージとか、他の人とのつながりを確認したくなかった。
 すくなくとも今は見たくない。
 そのまま立ち上がってベッドに倒れ込むと、仰向けになって目を閉じた。

 

『読んではいけない』
 背後をとられている。誰も姿は見えない。
『あなたは死んでしまう。決してアレを読んではいけない』
 気配がある。見ないということは、やっぱり背後だ。
『あなたは、読め、と言っていた|女性(ひと)なの?』
『読んでしまえば、あなたは体を失う』

 慌てて、門を開いて、玄関へ向かう。
「ミハル? ミハルいるの?」
 ドアは外されてブロック塀に立てかけてある。
 私は土足のまま家に入る。
「公子、ちょっとまって。すぐ行くから」
「どういうこと?」
「分かるでしょ?」
「……」
 おトイレか。いい度胸をしている。私なら、この廃墟に入って用を足すなんて、怖くて出来ない。
「終わった?」
「待って! 紙が……」
「ハンカチ貸すから、ほら」
 なるべくミハルをみないようにしながら、手をのばす。
「ハンカチは流れないよね」
「流さないでよ。拭いたら返して」
「え? だってそれ、汚いよ」
「仕方ないでしょ、早くしないとバスが出るわよ」
 私はミハルを拭った部分を折り返してポケットにしまった。
 用を足した後のミハルのあそこを拭ったぐらいであって、したたるほどおしっこで濡れた訳ではない。洗えば綺麗になる。(もうハンカチとしては使いたくないが……)
「早く、早く行くよ?」
 ミハルの手を引き、来た道を走って戻る。走り続けられれば、まだ間に合うはず。
「きゃっ!」
「!」
 急に足に何が絡みついて、そのまま激しく地面にたたきつけられた。
 ミハルはつまずいたようによろめいたが、転びはしなかった。
「|公子(きみこ)大丈夫?」
 なんとか手をつけたが、腕が激しく痛い。
 身体を返すと、足に黒い触手が絡みついている。この黒のつながっている先に〈転送者〉が見える。
 ズルズルと身体が引きずられる。
「キミコ!」
「ミハルは早く先にバスに返って! 振り向かないで走って!」
 引きずられた背中が痛む。
 なんとか変われれば……
 足音はもう聞こえない。ミハルはバスへ走っていった。
 私は、そのまま背中の翼を広げた。
 制服がまくれ上がっているのが分かる。
 翼の力で、宙に浮くと同時に引っ張り返した。
 〈転送者〉が少し前のめりに体勢を崩した。
「いやぁっ!」
 反転して〈転送者〉に向かってスピードを上げる。
 伸びた触手を引く力も加わって、勢いがついている。
 インパクトの瞬間、私は足に力を込める。
 鳥の爪のように変質したそれが、首なしE体の〈転送者〉のコアを貫いた。
 黒い触手や手足胴を形作っていた物質が蒸発するように光を失っていく。
 私は着地し、翼をしまった。
 制服を正し、埃を払った。
 背中が擦れたように痛い。見ると、倒れた時についた腕も真っ赤になっている。
「どうしよう……」
 このままバスには戻れないだろう。足を振ってる内に逃げれた、と言い訳をすればいいのか。それとも……
「こっちにも出たのか」
「鬼塚刑事」
 そうだ、鬼塚刑事に頼もう。



 学校へ向かうバスが付き、クラスの皆は慌てて教室へ向かった。エンジントラブルの復旧に時間がかかり、ホームルームの時間が始まっていたからだ。
 私はマミに付き添われて保健室にいくことにしていた。
「木更津、白井、お前達教室に行かないのかよ」
 教室に行く階段のところで、佐津間がそう言った。
 マミが答えた。
「怪我の具合を見るからって、さっき話したじゃん」
「そうだったっけ。それより白井、あのデカイ男何者なんだよ。なんで抱っこされてんだよ」
「刑事さんよ。私を助けてくれたの」
「抱っこは必要なのかよ」
「なんでそんな事聞くの? 怪我をしたの。痛くて立てなかったのよ」
 マミが例によってニヤリと笑った。
「あなたも好きな女の子ぐらい助けれるようになりなさいよ」
「べ、別にそんなんじゃねぇし」
「マミ、早く行こう『そんなんじゃねぇ』らしいから」
「はいはい」
 佐津間とわかれて保健室の前の廊下を歩いている時、マミが言った。
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 とにかく、部屋までは面倒みないと……
 タクシーを走らせ、杏美ちゃんが告げた住所についた。
「ここで合ってる?」
 杏美ちゃんはうなずいた。
 タクシーの支払いをすませると、肩を貸してマンションへ入った。
 なんとか部屋の前について、亜美ちゃんが鍵を開けた。
「ふぅ…… もう大丈夫よね。私ここで……」
「まぁってください…… 先生っ」
 私の肩から滑るように体が落ちていった。
「危ない!」
 そのまま倒れたら杏美ちゃんが頭を床に打ちそうだった。
 私と杏美ちゃんは一緒に倒れ込んだ。
 杏美ちゃんの頭を支えた手が床に打ち付けられて、ひどく痛かった。
 オートロックの扉が閉まった音がした。
「先生、好きです」
「えっ?」
 杏美ちゃんが顔を寄せてきて、キスされた。
 柔らかくて、とても良い香りがする。
 合わせた体の温もりが、私の中のスイッチを入れた。
 杏美ちゃんから舌を入れてきた。拒む理由はなかった。
 自分の腕の中にいる子が、酒に酔った面倒な部下、ではなく、以前から気になっていた若い娘に変化していた。
 何も言わず二人は寝室に移動していた。
 一分一秒を争うように服を脱ぎ捨て、二人は裸で抱き合った。
 杏美ちゃんの体は、きめが細やかで吸い付くようだった。足をすり合わせようと、杏美ちゃんの太ももが私の股間に押し行ってきた時、その肌の感触だけでイキそうになった。
 私は杏美ちゃんの後ろに回り込み、背中にぴったりと体をくっつけた。そしてあぐらを組むように座ってから、私の足で杏美ちゃんの股を開いた。
 左手を下から持ち上げるように乳房に触れ、右手を杏美ちゃんの足の付け根あたりから、じっくりと撫でていった。
 杏美ちゃんは体をねじってキスを求めてきた。
 私はそれに応えようとしつつも、杏美ちゃんの背中から離れないよう、自分も体をひねっていた。
「あっ…… あっ」
 唇が離れる度、杏美ちゃんから吐息が漏れた。
 怖がっているのか、体から緊張が伝わってくる。
 けれど、その緊張と快感のギャップが、まるで痙攣しているかのような反応を示している。
 私もとても興奮していた。
 杏美ちゃんが跳ねるように体をビクつかせる度、そのお尻が私の股間に押し当てられたからだ。杏美ちゃんが動かないときは自分から腰を押し付けた。
 ふと、冷静に自分と杏美ちゃんの位置を考えた時、まるで杏美ちゃんをギターにして引いているように思えた。左手で弦を抑え、右手で掻き鳴らす。
 杏美ちゃんののけぞる間隔が短くなってきて、私も体をそらして背中をベッドにつけた。
「イク…… 先生…… 先生…… あっ……」
 一段と腹部の痙攣のような動きが早まり、自分の腰へも杏美ちゃんのお尻の振動が伝わってきた。奥へ指を入れられないのに、半ばイキかかってしまうのははじめてだった。
「杏美ちゃん、杏美ちゃん!」
 私も杏美ちゃんをせめながら、何度も何度も股間を押し付けていた。
 何度か小さい盛り上がりを終えると、杏美ちゃんが体をひねって向き合った。
 舌を絡めながら、ゆっくりとキスをすると、杏美ちゃんは私の体の上からおりて仰向けになり、目を閉じた。
「えっ?」
 思わず声を上げてしまった。
 あっという間に、杏美ちゃんは寝ていた。
 私は少し物足りなさを感じながら、上を一枚羽織り、ダイニングを探した。
 コップに水をくみ、床にある小さな照明で照らされている中、それを飲み干した。
 部屋の玄関の方へ、服やカバンが散乱しているのに気づき、私はそれを拾って回った。リビングのテーブルに二人の荷物や服をまとめて置くと、ゴトリ、と何かが落ちた重い音がした。
「杏美ちゃんの?」
 落ちたと思ったものはスマフォだった。手に取った瞬間、ブルブルとバイブレータが動いた。
「これ…… どういうこと」
 ディスプレイにメッセンジャーソフトの通知表示がされていた。
 私も知っている人物からだった。
 何も考えられなくなった。
 もう夜は遅く、電車では帰れなかったが、私は寝室に戻って服を身につけると、リビングに置いたバッグを持って部屋を出た。



 なんだろう。
 通知の人物が分かっただけではない。
 メッセージの内容も読んでしまった。
 偶然とはいえ、杏美ちゃんの個人情報を見てしまったのだ。私の方が悪い。
 見たことを忘れてしまえばよかった。しかし、知ってしまった事実を忘れることなんて出来なかった。そして、その事実を知れば、そのまま杏美ちゃんのベッドに戻って寝る気分にはなれなかった。

 木場田が珍しく反応し、立ち上がって車を見るなり。
「覆面だ」
「フクメンってなんのことだ?」
 マヌケな佐津間がそう言った。
「フクメンって言ったら、この場合『覆面パトカー』に決まってるじゃん」
 私も後ろ向きに座り直して、すれ違った車を見た。
 見覚えのある車。
 獣の予感……
 あの覆面の運転手、もしかして。
 ガクン、とマイクロバスが速度を落とした。
「また止まんのか? いい加減にしろよジジイ」
 車内から声が上がった時にはバスは完全に停止していた。
 運転手のおじいさんは、また足を引きずりながらエンジンを見に出ていく。
 この百葉高校のマイクロバスだが、ウワサだと朝の便しかエンジントラブルが発生していない。しかも、私達のクラスの便だけが、狙ったかのように止まっているらしい。
 後ろの窓に向かってマミも向き直った。
「また〈転送者〉なのかな? キミコ見える?」
「さっきの警察の車は見えるけど」
「それは私にも見えるわ」
 ミハルが立ち上がって、マイクロバスの前方へ歩いていこうとする。
「どこいくのミハル!」
 声は全く届かない。
 私は立ち上がった。
「キ、キミコ、どうするの?」
「追いかけて、引き戻す」
「私も行く」
「マミは待ってて」
 マミは怖いはずなのに…… その言葉だけだとしても勇気のいることだ、と私は思った。
「大丈夫だから」
 マミはうなずいた。
 ミハルは何を考えて車外に出たのか。
 例のカチューシャに何か指令が入り、誘導されているのだろうか。
 私とマミが何度かここで〈転送者〉に出会っている。それにマイクロバスが止まる時は、決まって〈転送者〉が現れている。加えて、さっきの覆面はきっと鬼塚刑事が乗っている車だ。何か事件がなければこんなところへは来ない。
 つまり、外には〈転送者〉が出ている可能性が非常に高い。〈転送者〉は〈転送者〉を呼び込む。
「君、そっちに行くんじゃない!」
 エンジントラブルで外に出ていたおじいさんがマイクロバスの後方で叫んでいた。
「そっちに行ったんですか?」
「君も外にでるんじゃない」
「あの|娘(こ)を引き戻します。だから行った方を教えて下さい」
「あっちの方へ走って行った」
 手を向けた。
「エンジンを直ししだい発車するぞ、早くみつけるんじゃ」
「3分、3分だけまってください」
 スマフォのタイマーをセットした。
 おじいさんは腕時計をみるとうなずいた。
「気をつけろよ」
 私はうなずいた。
 切れ目のないガードレールを飛び越えて、人の住まなくなった住宅の並びへ入っていった。
 窓は壊され、扉は外されていた。
 〈転送者〉が現れたのか、〈転送者〉が怖くて人が破壊したのか、どちらの手によるものかはわからない。けれど、扉という扉、蓋という蓋ははずされ、壊されていた。
「ミハル! 返事して」
 返事は返ってこない。
 しかし、叫ばない訳にはいかない。ミハルだって死にたいわけじゃないはずだ。
「ミハル! いたら返事して」
 左右、上下に注意しながら先へ進む。
 一体この短時間にどこまで走っていってしまったのか。
「ミハル! バスに帰ろう」
 スマフォを確認すると、もう一分経っていることに驚く。
「後二分……」
 辺りは静かだ。
 人の住まない住宅地は、庭は雑草が生え放題で、何かが潜んでいるとすれば絶好の環境だ。
「ミハル! バスに帰って! ミハル!」
 どこにいるか分からない相手に向かって叫ぶ。
「公子?」
「どこ、ミハル、ミハル?」
 確かに声が聞こえた。
 こっちの家から返事が聞こえた。
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「なろう」、「カクヨム」から掲載拒否されるほどエロくはないんだけどなぁ……

ツインテールはババア声 - pixiv(ピクシブ)

ユーガトウ(1) - pixiv(ピクシブ)

僕の頭痛、君のめまい(1) - pixiv
 
pixiv の運営からまたメールが来たら凹むんで通報とかしないでね……

「鶴田✕木場田の下克上でしょ?」
「……」
 私の一言で、マミと神代さんの間によく分からない会話が始まった。
 しばらくその会話が続いた後、勝ち誇ったようにマミが言った。
「やっぱり木場田と鶴田が出来ている、と考えいてる人はいるのね。なんか安心しちゃった」
「『腐の道はいつも腐ってる』ってのは本当ね」
「神代さん変なこというね。それどういう意味」
「腐女子はいつでも腐の目線でものをみているってこと…… ああ、腐の会話は楽しいわ」
 神代さんはテーブルに腕を伸ばし、その腕に顔を乗せて笑った。
「……言わせてもらうなら、マミの言う通り疑わしいのは疑わしい。一番可能性のあることだと私も思うよ。けど、キミコの意見も一理あるよね。実際を見てないんだから、推測の域はでてないわ」
「……」
 私とマミに変な空気が流れた。
「ということで尾行を続けることね」
「……」
 マミと顔を見合わせた。
「あの胸の詰め物はもうイヤよ」
「……そんな変なことになったの? ちょっと胸見せてみなよ」
「だからそれがイヤだっての」
 神代さんが私の部屋着の襟首を引っ張った。
「!」
「全然腫れてないじゃん」
「しつこい!」
 胸が小さい、という嫌味も織り交ぜてきた。本当に悪ふざけが過ぎる。
「神代さん、とにかくそれは『ナシ』でお願い」
 ちょっと声のトーンが違った。
 神代さんも態度がガラッと変わった。
「は、はい。わかりました」
 神代さんの声が震えていた。
 よっぽどマミの事を恐れているのだ。私はマミの顔を横目で確認したが、それほど怒っているようではなかった。
 何か過去の経緯があるに違いない。
「何か別の変装を考えておきます」
 神代さんはそそくさと食堂を去っていった。
 私達も神代さんが持ってきた袋を抱えて、部屋に戻ることにした。



 翌朝、マイクロバスに乗り込むと佐津間達が手招きした。
「こっちこっち」
 この一番後ろの席につくまでが、恥ずかしい。なんかグループ交際でもしていると思われていそうだからだ。
 一旦そこまで言ってしまえば、一番後ろの席の為、クラスメイトの視線も気にならない。
「……」
 私はこっそりミハルと佐津間らの間に何かサインのようなお互いだけが分かり合うような表情、仕草がないかみていた。
 しかしバスに乗り込んでから、ミハルは誰とも話さず、表情も変えないまま、いつもの奥の一番端に座った。
 ふと、佐津間と目が合うと、小さく手を上げて合図をして来た。
「よ、よお」
 私は何も考えず、佐津間のほおを張っていた。
「いっ、いってぇな……」
「何が『よお』よ。どういう意味よ」
「……おはよう、とかごきげんいかが? というような意味で」
「仲良いわね」
「誤解よ」
「そんなことねぇよ」
 私は手を上げた。
「ちょっとっ! 待て待て。なんでまた俺を叩こうとする?」
「じゃ、『そんなことねぇよ』はどういう意味よ?」
「仲良いわね、に対して、そんなことねぇ、と言う意味だ」
「ならいいわ」
 上げていた手を下げた。
「毎朝飽きないわね」
 マミが微笑みながらそう言う。
「コイツが余計なことするからね」
「仲がいいほどなんとやらってね」
「マミ、冗談でもそれやめて」
「ふふっ、わかったわ」
 マイクロバスは、唸りを上げながらいつもの調子でノロノロと走っていた。
「!」
 ミハルが立ち上がった。
 急に、サイレンが鳴った。
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 私が読むのは水晶のコード。水晶の動作をどうするのだろう。
「大丈夫、私、読み方なんか分からないから」
『誰っ!』
 杏美ちゃんが入ってきたのか、と思い振り返った。
 誰もいない。
「……」
 元に向き直るも、その気配も消えていた。
 姿は感じられないが、確実に気配はあったのだ。
「なんだろう。読め、と言ったり、読むな、と言ったり」
「先生、ちょっといいですか?」
「杏美ちゃんどうしたの?」
「来てください」
「分かったわ」
 杏美ちゃんのいる実験室へ踏入り、元居た研究室の灯りを消した。私はその小さな暗闇をみて立ち止まった。この小さな暗闇で起こっている何か。その何かに巻き込まれ始めている。そんな気がした。



 杏美ちゃんの検査プログラムの修正が終わり、ふたりは立ち上がって伸びをした。
「は〜、終わったね」
「先生のおかげではかどりました。ありがとうございます」
「久々に集中した感じ」
「退院したばかりなのにこんなご無理をお願いしてすみませんでした」
「いいのよ」
 入院中も結局コードを書いていたも同然だったし、退院の日を狙って押しかけてくる社長とかもいたから…… と心のなかでつぶやいた。
「お礼といってはあれなんですけど、食事に行きませんか。お、おごります」
「食事行きましょう。けど、いいのよ、おごらなくても」
「えっ……」
 杏美ちゃんの手が震えていた。
「じゃあ、やっぱりそういうことですか」
「?」
「……」
 杏美ちゃんは少しうつむいた。
 なんだろう、今日はこの手が震えているところを何度か見ている。
 緊張とか、そういうことなのだろうか。
「どうしたの、杏美ちゃん。今日……」
「平気です。先生が喜ぶなら、私大丈夫です」
「?」
「そうと決まれば、早く行きましょう。私、お腹ペコペコなんです!」
 杏美ちゃんに腕を引かれた。
 手が震えた後は、表情も行動も自然に思えた。
 気になる発言がいくつかあるが、あまり突っ込まないことにした。
 それが杏美ちゃんの緊張につながっているような気もしたからだ。
 二人で駅の反対側の和食屋に入った。
 料亭まではいかないが、居酒屋までくずしていない、キレイ目な店だった。
 私達は畳の個室に入って、向かい合わせに座った。
 おすすめのコースと、お酒を頼んで食事を始めた。
「どうですか」
「美味しいね。どこでこの店知ったの?」
「ネットで見て、いいなぁって思って上条さんとかに見せたら、行こうって言って一度来たことがあるんです」
「へぇ、上条くんと飲みいったりするんだ」
「たまたまですけどね」
 少し料理の間隔が空いた時に、飲み過ぎたのか、杏美ちゃんが私の隣に座ってきた。
「上条さんて、少し強引なところがあってそこが嫌なんです」
「そう? そんなに強引だったっけ」
「隠れてプレッシャーかけてきたり、陰湿なんですよ」
 本当に自分の知っている上条くんとは違う。ウワサでもそういう話は聞いたことがない。
「先生…… 助けてください。坂井先生……」
 そう言って杏美ちゃんが私の肩に頭をのせた。
 酔ったせいのか、本当に助けを求めてきているのか判断がつかなかった。
 店員が障子を開けて入ってきても、杏美ちゃんは寄りかかった姿勢を正そうともしなかった。
 テーブルは片付けられ、残るのはデザートという状況になった。
 杏美ちゃんは半分寝かけていた。
「杏美ちゃん、お家どこだっけ? 大丈夫?」
「まだダメです……」
 杏美ちゃんはデザートが出てきても手も着けない状況だった。
「ほら、しっかりして、住所は言える?」
「先生、私の家に止まっていってください」
「立てないの?」
「家まで連れてってください」
「そうするから、ね。ほら、立ち上がって」
 私はなんとか杏美ちゃんを抱き起こすと、店に呼んでもらったタクシーに一緒に乗った。

 寮に戻ると玄関で|神代(こうじろ)さんに出会った。
「あっ! (とまた後で話すわ)」
「(うん。後でそっちの部屋行くから)」
「?」
 ミハルが不思議そうな目をしてこっちを見ていた。私は半分本当のことを交えて言った。
「私服でショッピングするから、神代さんに制服を持って帰ってもらってたの」
 ミハルは特に返事をするわけでもなく、こっちの顔を見ていた。まあ、リアクションするほどの内容でもない、ということだ。
 部屋に戻ると、ミハルのベッドの横に紙袋を置いた。
「ありがとう」
 マミと私は顔を見合わせた。
「いいえ、どういたしまして」
 そもそも、ミハルが言葉を発することが少なく、ましてやそれがお礼の言葉だったりすると、驚きは何倍かに大きくなる。
「聞いてもいい? 何を買ったの」
「下着と休みに着る服。部屋着の替え」
「へぇ、そうなんだ。私達に言ってくれたら一緒にショッピング出来たのに」
「……」
「あ、ゴメン、私達と一緒じゃないほうがよかったってことだよね」
 ミハルはもう興味を失ったように、紙袋の中身を取り出して、タグを取りベッドの上に並べていた。
 マミが別のことをたずねた。
「ミハル、両親から、こんなに買えるほどのお金もらったの?」
 ミハルはキッと私達をにらむだけで、何も答えなかった。
「あ、ゴメン、っていうか、いくら使ったの?」
 もうミハルの反応はなかった。
 自分が親だとして、これだけの金額を渡すだろうか。これはミハルの自由出来るお金を超えている。おそらく、木場田や佐津間から金をもらっている。つまり…… そういうことだ。なにかの対価としてのお金なのだ。
「キミコ、ちょっと」
 ミハルが向こうを向いているのを確認してから、マミが言った。
「(食堂行こうか)」
 私はうなずいた。
「ミハル、ちょっと食堂行ってるね」
「……」



 食堂でマミと私はミハルの買い物の額が尋常でないことを確かめていた。
「大体、あそこの下着ってブランド品ばかりでいくらアウトレットって言ったって一着一万はするのよ、いくつ買ってた? 七、八、八着以上あったよね? キミコ?」
「うん」
「一袋でそれだよ、十袋あるんだから、平均が半額の四万だとしても四十万。一日に子供が使える額じゃないっしょ」
「う、うん」
「ぜったい『売り』だって。やってるよ間違いない」
「いや、まだ買い物しかみてないんだし……」
 マミはムッとした。
「キミコが先に疑った話じゃん。なんでいまさら慎重なのよ」
「それはそうね」
「佐津間が絡んでるから、疑いたくないのはわかるけどさ」
 私はその言葉でスイッチが入った。
「そんなことない。あいつが絡んでるなら、絶対酷いことになってるよ。あいつらが元締めみたいなことして、ミハルをこき使ってるんだよ」
 マミはうなずいた。
「そうだよ! 悪いのはミハルじゃなくて、元締めの佐津間の野郎なんだよ、きっと」
「大きい声で喋ってると本人に聞こえちゃうよ」
「神代さん」
 テーブルに袋を置き、私の横に座った。
「尾行相手と一緒に帰ってくるからビックリしちゃったよ」
「ま、色々あったの」
「とりあえず、着替えは渡しておくから」
「ありがとう」
 私達は神代さんにいままで見てきたことを全て話した。
「うーん、確かに怪しいよね。高校生が扱う金額じゃないし。男子も鶴田を筆頭に全員信用がおける、という訳じゃないし」
 不思議な人物の名前が出て、私は思わず聞き返した。
「鶴田?」
「だって、アイツが一番怪しくない?」
「木場田を差し置いて?」
 マミがそう言った。
「佐津間が一番怪しいでしょ? 転校して来たばっかりだし」
「キミコは単に佐津間押しなだけでしょ?」
「マミだって木場田✕鶴田とか言っているし」
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 なんだろう、今までの杏美ちゃんもずっとこの気持ちを隠していたのだろうか。
「坂井先生、行かないでください。ここで見ていてください」
 そ、それだけ?
 何かもっと重大なお願いをされるか、、重要な告白をされるのだと思っていた。
 それが、ここで見ていて、だけ……
 私は静かに座り直した。
 杏美ちゃんも、引き止めた恋人をほったらかすように、パソコンに向かってコードの見直しを始めた。
 しばらくすると、杏美ちゃんが口を開いた。
「ここの判定文はこれでいいんでしょうか?」
「ちょっと見せて」
 何もロマンティックではない。
 恋愛要素のかけらもない。
 あの引き止め方と結びつかない。
 私は余計なことが気になって判断文の条件を冷静に見直せなくなっていた。
 少しキーボードを借りて、前後を確認している振りをしていると、冷静さが戻ってきた。
「これね。この変数の意味が合っていればOKなんだけど、この行の処理が違うのよ。だからこの判定文でおかしくなるの」
「あっ……」
 本当に気がついていないのだろう。
 プログラムを書く時と、読む時では見ているポイントが違う。やっぱり冷静になって読み直せるかが重要だ。
「少し休むわね。戻ってくるから」
「は、はい」
 給湯室でコーヒーを入れ、自分の研究室の椅子に深く座った。
 私は抱きつかれて頭がおかしくなっている。
 コードを見る為だけではなく、自分自信を冷静に見直さないと行けない気がしていた。杏美ちゃんの行動には何か理由があるような気がするからだ。
 XS証券の林に何か言われた?
 中島所長に何か指図を……
 上条くんと何かあった?
 どれもマトモな答えとは言えない。
 組み合わせても全く理由にならないものばかりだった。
 人を好きになるのは突然ということはありえる。好きか嫌いか、で、嫌いから好きになったりもする。けれど何でもないところから、突然好きになるのだろうか。好きに変わる前に、予兆はあるのではないだろうか。
 私は杏美ちゃんが何かサインを出していなかったか、もしくは今の杏美ちゃんから本当はどう思っているのか、を引き出したかった。
 過去の言動を思い出しても、私に気があるとか、女性が好きだ、という印象は全くない。
 二人きりになったから、抑えられていた感情が爆発した?
 研究の途中、何度か夜遅い時間に二人きりになったことがある。なぜその時にはときめくような出来事がなかったのだ。
 いや、単にこの若いぴかぴかした娘の気持ちを、私が素直に受け入れられないだけなのではないか、と思い始めた。
 素直に受け止められないのも無理はない。
 年の差があるし、立場も違う。
 これが逆に、私が一方的に杏美ちゃんを好きになったと言うなら合点がいく。私は立場を利用して杏美ちゃんと二人きりになれるし、体に触れたい場合に、立場の違いを使って強制出来るだろう。それが正しい解決方法かは別として。
 とにかく、杏美ちゃんが私を好きなのだとして、私がそれを受け入れれば、外で会った時に感じた、きらきら、つるつるしている、この若い娘と、一緒に食事にでかけたり、若い肌を飽きるほど眺めてみたり出来るのだ。
 少し考えても杏美ちゃんを嫌う理由はなかった。
 好きになる理由はやまほどあった。
 ただ、気持ちが納得できなかった。
『読んではいけない』
 私は例の女性の幻だと思って立ち上がった。
 しかし、どこにも何も見えてこない。
『あなたは死んでしまう。決して読んではいけない』
 気配がある。見えないが、確実にいる気配があった。
 これは、幻のような女性とは異なる感覚だった。
「読め、と言っていた|女性(ひと)とは違うの?」
 私は声に出してそう言った。
 どうすればその気配だけの人物に伝えることができるのか、分からなかったからだ。
『読んでしまえば、あなたは体を失う』
 体を失う、だって? さっきの死、と同じ意味だろうか。体を失う、つまり、死んでしまうから、読んではいけないのだ。
「アレは何なの? 何が書いてあるの?」
『水晶…… 水晶のコード』
 そう。
 あの女性も同じことを言っていた。
 水晶の動作コード。
 世界を記述したコードがある、と言っていた。

 私は鶴田達を向いたままそういった。
「向こうも向こうで気まずいみたいね」
「気まずいってことは、ホテルに入ったのかしら…… キミコ、佐津間くんがやられちゃったら、というか目覚めちゃったらどうする?」
「それはどうでもいいけど、ミハルが心配……」
「そ、そうよね。ミハル、まさか……」
「いや、それは考えないようにしようよ」
 ミハルは呼び出されて廊下で木場田と佐津間に挟まれていた。その時、佐津間はズボンを直す仕草している。
 次は放課後に呼び出されて男と下校した。
 そして、また次の日、ショッピングモールに木場田達と『下着コーナー』で買い物……
 この一連の流れからして、最後は『ラブホ』に寄ったに違いない、という結論になりそうだった。けれど、出てきたのが確かだとしても、中のことは一切分からない。受付の人と話をしてただけ、と言われても、確かめようのないことなのだから。
「うん、疑わないようにしよう」
 と、マミも快諾した。
「あと」
「後?」
「BLってゲイのことじゃないから。乙女のコンテンツだから」
「??」
「……あっ、忘れて。今の発言忘れて」
 木場田達が近づいてきた。
 鶴田と佐津間は何かショッピングセンターで買い物したらしく、バッグを二つ三つづつ持っていた。私達が見た時には買っている感じは無かったが……確かに上半身しか見えてなかったから、気付かなかったのかも知れない。
 鶴田が佐津間の肩を押して、私達の前に付き出した。
「よ、よう。珍しいところで会うな。それに、なんだ、その変な格好」
「変な格好って何よ。あんたたちこそ、男同士でどこに行ってたの?」
「この手提げ袋をみてそんなこと聞く? 買い物だよ買い物」
 佐津間は親指でショッピングモールの方をさした。
 紙袋に書いてあるブランド名を指さして、私は突っ込んだ。
「……女性モノを買う趣味でもあるの?」
 そこにマミが食いついてきた。
「えっ? 佐津間やっぱり目覚めちゃった?」
「ちぐあう」
 顔が真っ赤になってしまって、何を言ったか聞き取れなかった。
「?」
「……違う違う。俺たちはミハルの買い物に付き合っただけさ」
 鶴田が言い直してきた。
 だが、そうだとすると袋の数が多すぎるのが気になる。
 ミハルの家は、いっぱいお小遣いをもらえる裕福な家なのだろうか、それとも、男達が何かの代償として……
「あっ、買ったことは内緒で」
「なんで内緒?」
「あ、えっとなんつーか……(女物の下着売り場ウロウロしてたことになっちまうじゃないか)」
「佐津間、声が小さくて聞こえない」
「てめぇのババア声で耳がバカになっちまったんせいだよ」
「口が減らない男ね」
 急に鶴田が口を開いた。
「お前ら喧嘩やめろ。とにかく買い物のことは他言無用だ。それと、この買い物は全部ミハルのものだから、お前ら持ってやれよ」
「えっ?」
 見ると、ミハルも大きな袋を二つづつ両手にわけて持っている。
「俺たちは寮までは運んでやれねぇから」
 と佐津間。
「寮の近くまでは来れるでしょ?」
「だから内緒にしたい、って」
「それはあんたらの都合でしょ!」
「お願いします」
 全員が振り返った。
 ミハルが深々と頭を下げていた。
 こんな姿のミハル、はじめてみた…… 気がする。
「違うの、手伝わないって言ってるんじゃないのよ」
 私は慌ててミハルに駆け寄った。
 下からミハルの顔をのぞき込んだが、ぎゅっと一文字に結んだ口と、一点を見つめる目から気持ちを感じた。
 私は軽く背中に触れながら、
「ごめん、大丈夫、私達が持ってあげるから」
 と言うと、ミハルもこっちに寄ってきた。
「そうだよ、ミハル。困った時は私達に話して」
「まぁ、そういうことで」
 佐津間が紙袋を突き出してきた。
 私は無言でそれを受け取った。
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