その時あなたは

趣味で書いている小説をアップする予定です。

2016年08月

 体を返してこっちに向いてもらおうと、肩に手をかけた。
「やっ!」
 マミの声に、私はビクッとして手を引き戻した。
 仰向けになったマミは、私の顔を見て、顔の前で手を合わせた。
「ごめん、怒ってるわけじゃないの。ごめん。ほんとごめん」
 わざとむくれた顔をしてみせた。
「キミコ。ほら」
 マミが抱き寄せてきた。
 私も腕を回して、ぎゅっと体をよせた。マミのほおと自分のほおを重ねた。すこし、足と足が絡み合った。
 足と足をすり合わせると、さっきまでの高揚した気分が戻ってくるようだった。
 ほおを重ねるのではなく、唇を重ねたい。
 本気でそう思って、マミの瞳を見つめた。
 マミも、何かを思い、こちらを見つめ返している。
 目を閉じて、唇を近づけてみる。
「キミコ、そろそろ時間よ。私、ちょっとトイレ行ってくるね」
「う、うん」
 これは拒否られたのだろうか。
 『……ちょっとトイレ行ってくるね』というマミの声が、私の頭の中で何度も繰り返され、何度もその意味を考えた。



 お金を払ってから、左右をキョロと見回し、誰も居ないことを確認して、ホテルの外に出た。私は、ミハルを尾行する為、巨乳化したのだが、その為に胸にしていた詰め物のせいで具合が悪くなってしまった。
 マミはトイレでは狭くてこれを外せないというと、すぐにこの場所へ入ることを提案した。ここは観光ホテルのような立派なものではなく、いわゆるラブホという種類のものだった。そんなホテルを使う事を思いつくなど、もしかしてマミには利用経験があるのだろうか、とも思ったが、私はあえて聞かなかった。
 ホテルを出ると少し早足でその前を離れた。
 女子同士だったから、ということと、高校生がこんなところを利用して良いのか、という背徳感からだ。
 充分な距離を移動すると、私達は立ち止まって休憩した。
 もうこの時点では、ミハル達を完全に見失ってしまっている。後はまっすぐ学校の寮に帰るしかなかったが、学校からくる駅と、寮に近い方の駅はまた違う為、どうやって乗り換えるかをスマフォで調べていた。
「ああ、こっち。こっちのバスに乗ってさ、例の新交通に乗ればいいみたい」
「マミ、新交通は大丈夫?」
「大丈夫。公子といっしょなら」
 私はマミを抱きしめた。
「ありがとう〜」
「こっちこそありがとうだよ。守ってもらったんだもん」
 ギュッと抱き返してくれたマミの胸が、私の首筋に当たる。こっちは私が付けていたような偽乳ではなく、本当の本物だ。やわらかいし、いい匂いもする。
「?」
「どうしたのマミ」
「あ、あれ」
 マミの指さす方向を見ると、一人、また一人、とホテルから出てくる。
「うちの制服じゃない??」
 私にはハッキリ見える。
 最初に鶴田が出てきて、次が佐津間。そして鶴田の誘導で木場田が出てきた。
「そうだね。あの連中だよ…… ってちょっとまって……」
「奴らやっぱりBLってこと?」
 違うよ、ミハルのことを思い出して。
「……」
「あ、キミコはBLって知らない? ボーイズラブって言ってね、男の子が男の」
 ボーイズラブはゲイを指すんじゃないんだが……
「!」
 見ていると、ミハルが出てきた。
「本当に出てきた? なんかあのホテルからかどうか、ここからじゃ怪しいね」
 私の目にはハッキリとホテルから出てきた三人
の姿が見えた。何故三人かというと、鶴田が出てきたのをみたのはマミだけだからだ。しかし、木場田を誘導していた状況からして、鶴田もホテルからでたのは間違いない。
「……そ、そうだね」
 私は朝、バスで〈転送者〉の姿をみたほど遠目が利くのだだが、今は見えないフリをすることにした。
「どうする? こっちに近づいてくるよ?」
「ここでたまたま会ったってことで」
「その前にはどこにいた事にする?」
「えっ? どうしよう。ショッピングモールしかないじゃん」
 斜向かいに見えるショッピングモールを指さした。
「何か買ったっけ?」
「買わなくてもいいでしょ? 大丈夫。お互いミハル達のことは見てない、それを貫けば」
 少し強引か、と思ったがマミのその言葉に乗ることにした。それ以外の理由は思いつかないし、ミハル達見られていたとしても、私達が変装していた時の姿だ。問題ない。
「うん。そうだね」
 しばらくして、先頭を歩いていた鶴田がこっちに気付いたようだった。
 少し接近スピードが落ちた。
このエントリーをはてなブックマークに追加

 クスクスと笑う。
「ごめん。違うの。そうそう。新型のスマフォを買ってきて、箱を開けて、本体のフィルムを剥がした…… そんな感じがするの。新型スマフォの新品のような感じ」
「?」
「よく分からないよね、そういう感じ」
「ほめていただいている、ってことで|良(い)いですか?」
 こちらの表情をうかがうように体を曲げてたずねてきた。
「そうよ。もちろん」
 杏美ちゃんは、それこそ『キラキラ』とした笑顔を見せた。
「良かった…… 先生に褒められちゃった」
 気持ちが高まるのを感じた。
 この|娘(こ)といたい。ずっとこんな感じに話していたい。もっと体を寄せたい。
 自分は、この|娘(こ)に恋をしているのか、そんな気がする。
 美味しいものを一緒に食べたり、美しい場所に一緒に行ったり、楽しい映画を一緒に見たり…… 一緒なら、さらに嬉しくなる、そんな気がする。
 研究棟に入ると、杏美ちゃんは白衣を羽織って、メガネをかけた。
 検査機器を持ってきてケーブルでつなぎ、デバッグが出来る状態を作った。
 私はもう一度全体図を見ながら、この検査機器が何をすべきなのかを思い出した。
 午前中に家でみたコードが勝手に頭の中に表示される。
 ざっとしたコードの塊を眺めるなかで、不明な部分ーーおそらくバグを含むところと、その他の正常な部分に色分けされた。
「坂井先生、準備出来ました」
「まずは杏美ちゃんの説明を聞きましょうか。大まかな塊ごとに何をするのかを教えてもらって、どこが怪しそうなのか杏美ちゃんが見当つけているところも」
 杏美ちゃんが画面にコードを映しながら説明を始めた。
 説明の一部は、ソースコードのコメント部分に書かれていて、細かい部分もわかりにくいと思われると、コメントが入っていた。ソースの更新とコメントのズレもなく、良く手入れされていることがわかる。
 杏美ちゃんの横に座り、画面を見ながら少しだけ彼女に近づいた。
 見かけがピカピカしているだけではなく、杏美ちゃんの香りは心地よかった。鼻が開いてしまっているのではないか、と何度か鼻をこすってしまった。
「先生、もしかして何か私何か匂いますか?」
「あっ、違うのよ。なんか私の鼻、変なになってない?」
 杏美ちゃんが顔を近づけてきて、鼻をじっと見てきた。
「普通ですよ。何も変な感じないです」
 そのまま顔を突き出せば、そのキラツヤした唇に触れられる、そんなことを思ってめまいがした。
 その瞬間。
 杏美ちゃんが目をつぶったかと思ったらキスをしていた。
 私は自分が顔を突き出してしまったのだ、と思った。
「あっ、ご、ごめん」
「いえ、謝るのは私です。坂井先生のお顔が可愛かったから、つい唇を寄せてしまって」
「えっ、あっ、そんな可愛くなんかないわよ。おばさんだし」
「そんなことないですよ。でも、突然キスなんかしたら嫌ですよね、ごめんなさい」
「いいの。謝らなくていいのよ」
「けど、女の子同士でキスなんて」
 杏美ちゃんの手が少し震えているのがわかる。
「そんなの普通よ、普通」
 私の中で、パチパチと電荷がはぜるように飛び散って、興奮状態にあるのが分かる。
 なんで杏美ちゃんはこんなことをしてくるんだろうか。単純で難解な疑問が浮かぶ。
 本当に行った通りの戯れか、それとも……
「コードの説明はこれで終わりよね」
「そうですね」
「じゃあ、私の考えを説明するわ」
 コードとコード。プロシジャーとプロシジャーの同期。
 おそらくそこが杏美ちゃんの予想とは違うタイミングに起こっている。
 ソースコードを指し示しながら、二つの箇所が想定じゃないタイミングで動いた時に、互いに影響を受けてしまうことを説明した。
 杏美ちゃんは最初はどうして想定しているタイミングで処理が発生しないのか理解できないようだった。何度かそのイベント条件を噛み砕いて説明すると、想定しているタイミングでも起動されるが、そうじゃない時にも起こりえることに気がついた。
「ありえます。そうですか、それなら、ここの値が」
「そうそう。あと、これもタイミングに影響受けるわよ」
「あっ、そうですよね。わかりました。少し考えてみます」
 あらかじめ分かっていた部分、説明を受けて分かった箇所を順に指示して杏美ちゃんの修正に任せることにした。
「じゃあ、邪魔にならないように向こうの部屋に……」
 杏美ちゃんの手が震えた。
「坂井先生」
 手を重ねてきた。行かないで、立ち上がらないで、といわんばかりだ。
「えっ?」
 手を抑えただけではなく、杏美ちゃんは私に抱きついてきた。
このエントリーをはてなブックマークに追加

「大丈夫? ちょっと調子に乗りすぎたよ…… ごめんね」
 本当に目が回ってしまった。立ち上がれない。
「ねぇ、キミコ。あやまってるじゃん!」
 マミは私の上にまたがり、二の腕を使って私を仰向けに返した。
「いっ…… ぃゃょ……」
「あら……」
 私は腕を抑えられて胸を隠せなかった。
 マミに思いっきり立っている二つのもの見られてしまった。
「ど、どうしたのキミコ…… もしかして、さっきの代官プレイで感じちゃった?」
 否定しようおしたけれど、声が出なかった。だから首を振った。
「けど…… この胸……」
 だから、だからここに来てサラシを外してもらっているのに。ちゃんとしたブラを付けて普通に過ごしていれば元にもどるんだから。
 そう思っていると、マミは胸に顔を近づけてくる。
「じゃあ、私といると私といると興奮するの? ほら、それじゃ私が顔を近づけたら、どうなるの?」
「はぁ…… ああ……」
 マミの息と体温が感じられた。
 何も触れていないのに、頭がぼぉーっとしてきた。

『舐めてもいい?』
『ぃゃ……』
『いい?』
『ぃ…… ゃ』
『じゃあ、ちょっと指ならいい?』
 マミは、先端を指さきで弾くように動かした。
『どう?』
 私は息が激しくなるだけだった。
『気持ちいい?』
 マミの問いかけに、私は小さくうなずいた。
『そう』
 今度は唇で胸の先を弾き始めた。
 鼻も、吐息もマミの顔の部分を全て、胸の上に感じた。
『じゃ、吸っちゃうね』
 ペロリ、と舐めたかと思うと、キュっと唇でしごくように吸い付いてきた。
『ぃっ…… た……』
『ごめん、痛かった?』

「あっ、あっ…… や、やめないで……」
「え、何もしてないけど?」
「ちょっと…… マミ、お願いがあるの」
「何?」
「えっと…… あの……」
 気持ちが高ぶって、次の言葉が出てこない。
「すこし…… その…… 胸を……」
「揉めってか?」
 手のひらで覆うようにして、下から上、内から外へ揉まれた。けれど、何かギャグでやっているような調子で、何も感じなかった。
「大きくなぁれ〜。大きくなあれ。はい、おしまい」
 マミは私の上からおりて、私の横に並行するように仰向けになった。
「ほら、ブラつけちゃって」
 買ってきたブラを渡された。
 何か気持ちが下がってしまったので、ベッドから起きて部屋の隅で着替えた。もう、胸の突起が気になってしまうような状態ではなくなっていた。
「ごめんね、マミ」
「何が?」
「無理なことお願いしようとして」
「ううん……」
 何か、生返事だった。
 もしかしたら、マミはお願いを最後まで聞くのが怖くて、はぐらかしたんじゃないだろうか。私がおどおどしないで、ちゃんとお願いしたら、ひょっとすると……そんなことないか。
 私は振り返ってマミに言った。
「さあ、ミハル達を追いかけようか?」
「いくらなんでも、もう無理でしょ」
「けど、あんまりここにいると延長料金とかかかるって言ってたじゃん」
「もうちょっとぐらい大丈夫だよ。だから、ちょっとだけ横にならせて」
「どうしたの、マミ?」
「なんでもない。疲れただけだよ」
 私はベッドの上のマミの横に上がった。
 マミは太ももを閉じるように合わせ、私と反対側に体を向けた。
「どうしたの?」
「なんでもない。すこし疲れたの」
「マミぃ〜」
このエントリーをはてなブックマークに追加

 しかもご丁寧に所長の考えに反抗的な態度をとってしまった。
 酔いが回っていたせいなのか……
「おい!」
 足を引っ掛けられて、ドン、と肩を押された。私はどうにもならず、尻もちをついてしまった。
 所長は肩を押し込んでくると、そのまま馬乗りになった。
「若い|娘(こ)の方が良いんでしょ」
「そんなんじゃありません」
「ウソ!」
 パチン、と左の頬を叩かれ、肌がじんじんした。
「|梓(あずさ)のことが好きなんです。誰よりも」
「ウソよ!」
 右手が逆方向からくるか、と思った時、所長は何かに気付いたようだった。
「!」
 そして手を戻し、もう一度、同じ方から、私の左の頬を叩いた。
 頬は痛かったが、所長がただのヒステリーで怒っているのではない、と思った。
 右手の甲で、私の右頬を叩かなかったからだ。
「じゃあ、私から電話がかかってきたらどういう表示になるの?」
「かけてみてください」
 所長はスマフォを持ってきてささっと操作した。
 しばらくして私のスマフォが応答した。
「あっ……」
 所長は自分のスマフォを置いて、私のスマフォを両手で持った。
「……もう何年もたつし、知世の持っている機種が変わったから、消してしまったと思っていたわ」
 スマフォを置くと、両手を広げて私を包むように抱きしめた。
「ありがとう……」
 それは私が所長に言いたい気持ちだった。
 ありがとう。
 先が見えない私を、救ってくれるのは中島所長、あなただけです。
 私は何度も繰り返した。

 翌朝、所長の家を出ると、急いで自宅に戻った。実は、杏美が困っている部分がどこなのか、電話で聞いた時に、さっぱり分からなかった。
 杏美が受け持っているのは検査用のプログラムだったが、品質を保つための検査で、これで低品質のものを見抜けないと実際に現地についてから通信出来ないとか、大きな障害を引き起こしてしまう。
 自宅から一体どんな機器のどういう類のものを書いているのかを確認し、服を着替えて研究所へ向かった。
 移動中に、何度も所長からメッセージが来て、都度内容は確認したが、既読はつけなかった。
「見れない、って言ったのに」
 杏美…… 山田さんの困っているのを助けにいくから、明日はすぐに帰ります、と話したら所長はものすごく寂しそうだった。今日一日一緒に過ごせると思っていたらしかった。
『時間が出来れば、夕食食べに行きませんか』
 所長にそう伝えていた。
 だから、メッセージは何が食べたいとか、あそこの店がどうだった、とか、そういう話しが多くなっていた。
『山田さんのコードの修正が長くかかりそうだったら連絡します』
 もし、直前で夕食をともに出来なかったらどれだけがっかりするだろう、と思って先にそれを言っておいた。やはり所長は悲しそうな表情を浮かべた。
 だから、メッセージは読んでいないことにしたかった。研究所に着けばもうメッセージなんて確認しなくなるわけだし、今の時点からみていな方が、変な期待をさせなくて済む。
 研究所に着くと、奥に建設用のフェンスが作られ、鉄筋が組み上がっていた。あれが、XS証券に金を出させて作る『私の』水晶の研究所らしかった。
 デザイン画の通り、水晶のクラスターのような形が見て取れた。私は少し足を止めて想像した。
「坂井先生!」
 声をかけられて振り返ると、そこには杏美ちゃんが立っていた。
 走ってきたように息が上がっていた。
「どうしたの? 走ってきたようだけど?」
「先生と約束していたのに、遅れちゃったから……」
 私はスマフォを取り出して時間を確認したが、別に遅れたという時間では無かった。どちらかというと、私が約束より早く来ているのだ。
「お休みのところワザワザ来てもらっているわけですから。時間を無駄にしたくないです」
「そんな、いいのに」
 杏美ちゃんはニコッリと笑い返してきた。
 走ったせいか、メイクなのか、ほんのりとほおが赤かった。
 自分が歳を重ねたせいなのか、杏美ちゃんがキラキラと輝いて見えた。若い女性というのは、皆こんなにキラキラしているものなのだろうか。
「先生。何かありましたか?」
 今度はキョトン、とした表情をみせる。私は杏美ちゃんへの自分の気持ちがわからなくなっていた。
 若い|女性(こ)への嫉妬? それとも憧れ? どれとも違うような気がしていた。
 所長会って感じることとは違うけれど、何かが似ているような。
「……なんていうのかな。杏美ちゃん、ピカピカしている」
「えっ、キラキラとかじゃなくてですか? なんかちょっとイヤな感じですね」
「あっ、そうじゃなくて、ツルツルというか」
「ピカピカとかツルツルとか、ハゲてるみたい」
このエントリーをはてなブックマークに追加

「ねぇ、どうしよう、どうしたら楽になるの」
「……」
 もしかしたら、サラシを外せば……
「(サラシを外せば…… もしかしたら)」
「(えっ、サラシって?)」
「(胸を盛るのに、本当の胸の上にサラシを巻いたの)」
「(それが苦しい原因よ。外そう)」
「(はずしたらもう一度は付けれないよ…… そうだとノーブラになっちゃう)」
 私は泣きたくなった。
「(自分の下着を持ってきてないの?)」
 私はうなずいた。こういう時の為に、着替えも持ってくれば良かった、と後悔した。
「(あっ、さっきのあのお店で買ってくる。キミコのトップとアンダー教えてよ)」
 モゴモゴとマミの耳元にささやいた。
「う、うん、なるほど。買ってくるから、それに着替えよう」
「け、けど…… どこで」
「そうか…… お手洗いとかじゃ?」
「(問題はサラシなのよ)」
 マミが真剣な表情でお財布の中身を確認した。そして、私のお金もたずねてきた。それを答えると計算しているようだった。
「緊急事態だからしかたないよね。けど、後で少し払ってね……」
「う、うん。どうするの?」
「とにかく、後は任せて。まずはブラ買ってくるね」



 マミと私は部屋にいた。
 私がシャツを脱ぎ始めると、マミは私の後ろに回った。
「なにこれ、こんな大きいブラあるのね?」
 マミが私の背中のホックをはずして、偽乳用ブラを取った。
「うわっ、これなに? これが、シリコン?」
 肌色のビニールで包んだ大きな肉まんのようなシリコンボールを二つ、マミが引っ張って胸から外した。
「柔らかいし、なんか暖かい。リアルなおっぱいだわ」
 外れたところの、殆ど起伏のない、本当の胸のあたりをジロジロと見ていた。
 ぐるっと、一通りみて、マミはまた後ろに回った。
「サラシも、本当にぎゅうぎゅうに巻いているのね」
 マミは何を考えたのか、そこで黙ってしまった。
「……キミコ、ちょっとこれ見て」
 マミはスマフォに動画を表示させていた。
 それを見ていると、マミの言いたいことが分かった。
「イヤだよ、そんなの、目が回っちゃうよ」
「こんなことするチャンスないんだけど、協力してくれないの?」
「これサラシだから着物じゃないし、こんなに普通ならないでしょ?」
「じゃあ、キミコがはずしたら私に巻いてよ」
「そっちもイヤだよ」
「ケチ」
「……」
 マミはどうやら悪代官が町娘にイタズラするシーンを再現したかったらしい。
 クルクルまわってもらって『あ〜れ〜』とか言って欲しいようだった。
「じゃ、とにかくはずすわね」
「もう一度念を押しときますが、その動画みたいなことはやらないからね」
「……」
 マミは無言でサラシをはずし始めた。
「ああ…… やっぱり面倒くさいよ、キミコ、腕痛くなってきた。自分でも少し回ってよ」
 私の頭の上に外したサラシの塊を持ち上げ、くるくると回して外していた。
 サラシはまだ、だいぶ巻き付いている。
「ね、お願い、腕が痛いもん」
 マミはサラシを巻き取るのを止めた。
「……わかった。わかったけど、目がまわったら、こっちもやめるよ」
 マミはニッコリと、いや、ニヤリと笑った。
「じゃ、いきますか」
「……」
 あっ、と思った時にはマミがサラシをグイグイ引っ張っていた。
 最初の少しは自分で回ったが、後はサラシを強く引っ張られることで、コマのように回っていた。
 少し落ち着いてきたところだったのに、マミに引っ張られたサラシが、また胸を刺激し始めた。
「あっ…… あん……」
「良いではないか、良いではないか」
 マミも興が乗ったようで、どんどん引っ張って、悪代官声をだしている。
「お願い、止めて……」
「良いではないか、良いではないか」
 さっきまでなかなか終わらなかったサラシが、あっという間に巻き取られた。
 目が回って、フラフラと進むと、部屋の真ん中にあるベッドに倒れ込んだ。
「き、キミコ!」
 マミが慌てて様子をみにくる。私はうつ伏せになったまま目を閉じていた。
このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ