振り上げた腕のうごきが鈍った。
新庄先生を狙って振り上げた腕が、今度は腕の付け根に刺さっている私に向かってくる。
叩きつぶそうというのか。
鳥になっていた足を人間のそれにもどし、E体を蹴って飛び立つ。
パチン、と自分で自分を叩く。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
高く飛び上がって、E体の攻撃圏内を抜ける。
E体は靴下を脱ぐように足に絡みついている新庄先生を押し下げる。
足を離さないよう、新庄先生はより強く締め上げる。
「コアは中心にあるのよ!」
私は下に向かって羽ばたき、勢いをつけたまま体を回転させ、足先を転送者の中心に向けた。
「貫けぇ!」
恐怖を抑えるため、声を振り絞る。
〈転送者〉の頭頂に足がぶつかると、衝撃が全身に走った。
瞬間の衝撃が去ると、ナイフで果物を割るように〈転送者〉の間を割り入っていく。
勢いが完全になくなったその時、〈転送者〉の体を抜けた。
着地し、翼を畳んで振り返ると、Vの字に割れた〈転送者〉が見えた。
しかし、新庄先生はまだ、片足を締めあげている。
「倒したの?」
私は確証が持てなかった。
あまりに簡単に切り裂かれ過ぎだ。
見るとVの字に割れた体が、まるで逆再生をするかのように接合されていく。
「コアがなかった?」
そう言えば、私はさっきのことを思い出していた。インパクトの瞬間、赤い目が腕の方へ動いていった……
赤い目の下に『それぞれ』コアがあるのだとしたら?
考えている暇はなかった。
〈転送者〉の打撃を避けるために、再び舞い上がると、赤い目の動きを追った。
赤い目はこっちを見ている動く。
が、一つだけで追うときもあるし、両方で追ってくることもある。
「なんだろう……」
目の動きと、腕の動き?
目と足の連動?
「わからない! から、もう一度!」
「気を付けて、狙っている!」
もっとスピードを上げれば!
「貫けぇ!」
足先を先にする時間をギリギリまで後に持っていければ、スピードは上がる。
〈転送者〉の両腕が私を挟むように迫ってくる。
翼を完全にしまって体を回転させる。
「やった」
腕に挟まれることなく、頭頂へ足を突き立てる。
激しい衝撃、再び避けていく〈転送者〉の体。
抜けて振り返るとさっきと同じようにV字に裂けていた。
「ここだ」
赤い目が避けた体の双方に一つずつ。
〈転送者〉の赤い目の一つを狙って拳をぶち込む。
赤い目は、スルリと攻撃をかわして移動していく。
羽ばたき、腕の攻撃をかわしながら、目を追う。
接合が遅れている。
赤い目が止まると、V字に分かれた〈転送者〉の結合が始まる。
この赤い目を潰せれば……
必死で、赤い目の動きを追うが、次第に接合は進み、再び〈転送者〉が動き始める。
振り回す腕の届かない位置まで飛び上がると、また新庄先生への攻撃を始める。
「どうしたら……」
『どうだ?』
『鬼塚刑事!?』
寮方向に車が見えた、と思うと次の瞬間、〈転送者〉の片足へ突っ込んでいた。
よけきれない〈転送者〉は、足をすくわれ、ひっくり返ってしまう。
「貫けぇ!」