「もう少しだからがんばれ!」
「はい!」
ベッドから起き上がると、お風呂に行くしたくをして、先輩に引かれながら風呂へ行った。
脱衣所に入ると、もうかなりの数の寮生がしたくをしていた。
今までは、お風呂の時間帯の最後の方だったせいか、こんなに混雑している状況は初めてだった。
「あら、その|娘(こ)初めて見るわね」
「今日から私と同部屋になった白井さんよ」
「よろしく」
先輩と思われる方が、いきなり近寄ってきて、服の上からだが私の胸を触った。
「!」
「新人なの? これは触らないと…… よろしく」
また一人、半裸の先輩が近づいてくると、胸を触った。
「どうせなら生で触りなさいよ。白井さん早く脱いで」
「市川先輩、それどういう意味です?」
私がそう言うと、市川先輩は脱いだ下着をカゴに入れながら言った。
「もしかして、三年とお風呂に入ったことないの?」
「ふふっ……」
「ほら、手を休めない。上だけでも早く脱ぎなさい」
「で、ですから……」
「先輩と入るんだから、挨拶として、胸をさわるのよ。私もそれくらいいいわよね?」
市川先輩は、シャツの隙間から手を入れ、ブラの下へ手を差し込んできた。
「きゃっ」
「新鮮だわ」
「新人、新人なの?」
「|市川(イチ)の部屋に入ったらしいよ」
「ひさしぶりね~」
いつの間にか裸の女子に囲まれていた。
脱衣所は湿度もあって十分暖かいのだが、寒気がした。
「ツインテールだ。お風呂の時はとかなきゃね」
一人の先輩が私の髪に触れようと手を伸ばす。
私は無意識にその手を払った。
「なに今のっ!? どういうこと」
しまった、と私は思った。けれど、ツインテールに触れさせるわけには……
「おっぱい見せてもらうか、じっくり」
完全に先輩たちの反感を買ってしまった。
「ほら、おっぱい」
『おっぱい! おっぱい!』
全員でおっぱいコールが始めると、顔が熱くなるのを感じた。
何も考えられず、辺りの状況が把握出来ない。これ、完全に、いじめでしょ…… 酷いよ……
腕を取られ、先輩達にシャツを脱がされた。そして後ろに回った一人が、ブラのホックをはずしてくる。
「さあ、どんなおっぱいかな?」
耐えきれずにほおに涙がつたった。
「あっ……」
「やばくね」
「シャレでやってんじゃん、泣くなよ。シラケるだろ」
「寮監いねぇけど、新庄はいっからここらへんにしとかねぇ?」
長身に長い髪の先輩が、脱衣室の奥からやってきて、市川先輩の肩を叩く。
振り返った市川先輩の表情が歪む。
「|市川(イチ)、フォローよろしく」
「はっ(い)」
長身の先輩が一瞬、ニヤリと笑うと脱衣所にいた寮生はお風呂場へ消えていった。
脱衣所には私と市川先輩だけが残った。
無言で服を脱いでいく先輩。
私は外されかけたブラと、制服のスカートのまま、うつむいている。
「お風呂に入るか、入らないか決めなさい」
「……」
長いさらしを解くと、市川先輩の本来の体が現れる。
私の方に近づいてきた。
「入らないならそれでもいい。けど、臭くなるから部屋には入れないわよ。ほら、さっき渡した鍵返しなさい」
私は顔を上げて、市川先輩の顔を睨んだ。