「セントラルデータセンターにいる軍に通報しないと」
「そうだな。そのスマフォにある加藤という人を呼び出してくれ」
鬼塚刑事のスマフォを操作して、加藤を見つけ、呼び出す。そして、そのまま鬼塚の耳に付ける。
『鬼塚刑事、どうしました?』
「そちらの車が向かっています。登録上、研究者が使用する車ですが、おそらく盗難されています。中に人質がいる可能性もありますので、慎重に対応をお願いします」
『研究者は誰?』
「白井健です」
『了解した』
「追いかけていますので、そちらで合流します」
『もうその車はこっちに来たようだよ。では後ほど』
「えっ? 白井車の位置を見てくれ」
私はナビを操作してターゲット車両の位置を確認した。
こっちの車からそうは離れていない。
「いえ、この表示が正しければ、まだ着いていないと思います」
「……」
鬼塚は無言でアクセルを踏み込んだ。
高い塔が見えてきた。
父の車にはまだ追いつけていない。その車の行先はセントラル・データセンターで間違いなかった。
何もない道を飛ばしていると、セントラルデータセンターが下まで見えてきた。
「鬼塚刑事……」
「ああ……」
「軍の人たちが……」
セントラルデータセンターで唯一残した入り口は地下だった。
らせんを描いて地下に入っていく入り口が見えてくる。
「車はここら辺にとめて、あるいて通路に入るぞ」
ブルっと震えがきた。
「今日は新庄先生が……」
「一人少ないといいたいのか。確かに最初に対応した時は三人だったが、中に入った時は二人でいけた。やれなくはないさ」
そうじゃない、今日はそのつもりできていない。病み上がりで、体調も万全じゃない。
そんな状態で、オレーシャを助けられるか不安になる。
「……」
鬼塚は車を止めた。
「この死体を見れば恐怖を感じるのは無理もない。俺だって怖い……」
セントラルデータセンターの地下通路へむかう一帯に、兵士の死体が横たわっていた。
鬼塚は歩きながら、うつ伏せに倒れている兵士を仰向けにして、顔を確認する。
「……」
「もしかして、この方が、加藤さんですか?」
「ああ……」
ちょっと前まで話をしていた人間が、ここで死体になっていることにショックを受けた。
「いや…… もう戦うのは、いや……」
「そんなことを言って、お前の学校の先生が今どうなっているか」
「……」
そうだ。車の中に誰も残っていないのか、それだけでも確かめないと。
楽しそうに合宿の話をするオレーシャの姿が思い出された。
「やります。それしかないんでしょ」
「そうだ」
地下通路の入り口に、鬼塚刑事が真っ先に入っていく。