次の日も二人は緑川を追いかけていた。今度は中居寺の駅までついていけたが、中居寺の駅ビルであっという間に撒かれてしまった。確かに男子トイレまで追いかけていたはずなのだが、全く分からない出口があったのか、それともそもそも男子トイレに入らなかったのか、何時までたっても出てこなかった。
 そして呆然と駅ビルの店をたまちと歩いていると、『リンク』で涼子に呼び出された。
「たまちはどうする? 涼子がオリガミで待ってるって」
「私も別に用事ないし、行く」
 二人は涼子のおじいさんが経営している喫茶店、オリガミに向かった。
 店に入ると、涼子は奥の席から、浮かない顔で真琴達に手を振った。
「どうしたの涼子、疲れてる?」
「うん、ちょっと寝れないような事態になってて」
 真琴は、『リンク』の書き込みから、涼子の仕事が立て込んでいることを知っていた。
「そういえば最近仕事が多くなってるんでしょ。大変だね」
「仕事だけのせいじゃないんだよ……」
「どういうこと?」
「実は」
 涼子は話し始めた。
「事務所のブログに、殺人予告されちゃった」
「え!」
 涼子は平然としていた。
「何、平気な顔してんのよ」
「色々あって、もう二周りぐらい回っちゃった感じなのね。だからもう驚かないというか……」
「け、けど、学校とか仕事とか普通にしてたじゃん」
「いや、まぁそうなんだけど、ちょっと事務所に泊まったりとか、警察来たりとか色々あってさ」
 涼子はアイスティーを口に含んだ。
「分かってきたんだけど、どうやら【鍵穴】が関わっているっぽい」
「え、なんで涼子が狙われるの? ボクを倒すのが目的のはずなのに」
「そうよね。直接倒そうとして、色々失敗しているから、私を掴まえる、とか、注意を私に引きつけておいて、とかを考えているのかもね」
 涼子は頬杖をついた。
「本当に協力者から一人一人始末する気かもしれないし」
 真琴は頬杖の手を取って言った。
「涼子はボクが守るから」
 たまちが言った。
「けど、なんで【鍵穴】だと? なんかわるようなことがあるの?」
「そうね。実際、エントーシアンを特定する方法はないわ。けど、どうやらブログの書き込みは私達の学校から行われていることが分かったの。ということで、仕事や事務所の関係でも、ファンという線も薄い。残ったのは、私達の関係、ということよ」
 たまちは納得したようだった。
「消去法というやつね」
「そういうことね。そういうことが判るまで、ぐっすり寝れなかったわ」
「ボクには分からないけど、涼子は度胸があるね」
「何も分からない方が怖いわ。理解出来れば、怖くても安心することもあるのよ」
 確かにそういうものなのかもしれない。全く分からないものは、どう対処していいか分からない。男性なのか、女性なのか、分かっても結果は違わないかもしれないが、少しでも情報がはっきりしてくれば、それだけ分かったような気になるし、それで安心出来る。実際は騙されているだけかもしれないが、そんなものなのだ。
「具体的に嫌がらせとか、危険なこととか、何かあった?」
「まだ何も。ブログの書き込みはあるけどね。警察も、どこまで調べてくれているのか分からないんだけど、情報はそこまで」
「業務妨害とかで生徒が捕まったりする可能性はあるわね」
「学校でパソコン使えるのって、先生ぐらいじゃないの?」
 たまちが、その質問に答えるように言った。
「学校からパソコンを使う、って考えると、何パターンかあるよ。まず今言ったように先生のパソコンね。ただ、先生のも基本は外へのネットは出来ないようになってるの。個人情報にアクセスされたら不味いからね。必要な時はもちろんアクセス出来るんだけど……」
 たまちは紅茶を一口飲んで、話しを続けた。
「後、部活で生徒もアクセスすることが出来るのがあるよね。ただ、回線が違ったはずだから、そこからの書き込みが『学校から』って特定出来るのかは知らない。一般の家庭と区別は付かない気がするけど」
「まだある?」
 たまちは頷いた。
「最後が、ITの授業をする教室ね。あそこにある端末は、インターネット出来るし、生徒がアクセスするならそれが一番身近ね」
「ふーん。たまち詳しいね」
 たまちは少し下を向いた。
「ちょっとだけね。あと、最後、抜け道はあるんだよね」
「どういうこと?」
「WiFiね。WiFiパスが割れているとしたら、私物のパソコンで、学校からアクセスすることは出来る」
「そこまで広がると分からないのと一緒ね。警察なら、先生のアクセスや、授業時間と書き込み時刻が同じかどうかぐらいは調べるだろうから、私達はその抜け道をあたってみる?」
「真琴にしてはいい判断ね」
「私がどこまで出来るか分からないけど出来る限り調べてみる」
「ありがとう」
 真琴はたまちの手も引き寄せ、テーブルの上で重ね合わせた。
「明日から調査よ!」


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