学校につくと、真琴はパソコンの授業をする教室を確かめにいった。鍵は掛かっており、中を覗き込むと、それぞれのパソコンにもワイヤーが付けれられているようだった。
 たまちが、スマフォを取り出して何か見ている。
 真琴はその画面を覗きこんで言った。
「不思議。教室の外からでもWiFiは見えるのね」
 少し笑ってから、たまちは言った。
「確かにね。まさか授業の無い時も使えるとは思わなかったわ」
 一年の時に何回か受けた記憶があるのだが、どんなものだったか思い出せなかった。真琴も自分のスマフォを取り出し、WiFiにアクセス出来るのか試したが、南京錠のアイコンが表示されており、接続しようとするとパスワードが必要と表示された。
「けど、パスワード掛かってる。簡単に思い浮かぶパスワードを試してみたけど、無理だったわ。昨日言ってたみたいに、パスワードがバレてたら別だけど」
 たまちはスマフォの画面を見ながら、何かを確かめているようだった。
「後は…… うーん。外からじゃなければ出来るよね?」
 真琴は、たまちが何か抜け道を考えたのか、と思い、たずねた。
「外からじゃなければ?? その方法ならアクセス出来る?」
「中にあるパソコンを立ち上げてしまえばアクセス出来るでしょ? この教室に忘れ物があるから、とか言って鍵を借りれば入れるし、ベランダがあるから、外側に通じる扉を開けておけば、他の特殊教室から入れるかも」
「ああ、なるほど」
「後は、このWiFi自体にも問題あるわね。これ、ちょっと古い方式なの。ツールがあればパスワード破れるかもね」
「え? それホント?」
「自分でやったことはないけど。確かそうだよ」
 真琴は少し考えた。
「分かった。後は職員室の周辺ね。けど、ここからアクセスしたかどうか、ってどうやって調べたらいいの?」
「校内のどこから、とか、どのパソコン、ってところまで細かく診断するのは多分無理ね。職員室は昼休みにする?」
「そうね。そろそろ時間だし」
 真琴とたまちは自分の教室へと向かった。
 廊下を歩いていると、二人は緑川を見つけた。真琴は声を掛けようとしたが、状況に気付いてやめた。緑川は数人の男子生徒に囲まれ、今にも争いになりそうな雰囲気だった。
 向こうはこっちに気付いて、通り過ぎるのを待っているようだった。
 たまちが言った。
「どうしよう」
「……」
 真琴はメラニーに護身術を教わった時に改めて自分の運動神経のなさに気付いていた。つまりこれを力づくで止めることは出来ない。ましてたまちも一緒だ。たまちまで巻き込んでしまう。
 しばらく考えてから真琴は立ち止まった。
「そうだ緑川くん!」
 緑川を囲んでいる男子生徒が一斉に真琴を振り返った。
「や、やばいよ真琴」
 たまちは小声でそう言った。
 囲んでいた生徒の一人が緑川を肘でついて言った。
「緑川、女の子がお呼びだぞ」
 緑川は視線を床に向けたまま変えずに答えた。
「知らねぇよ」
「緑川がお前なんか知らねぇってよ」
「さっさと教室に引っ込め! クソがぁ!」
 真琴はビビったが、言葉を続けた。
「ほら、貧血で倒れた時に保健室に連れてったもらったじゃん。新野、新野真琴だよ」
 真琴達に一番近い位置にいた男が、走り出しそうになった。
「!」
 一番背の高い、落ち着いた感じの生徒が、走り出そうとした生徒の腕を掴んだ。
 掴まれた生徒は言った。
「追っ払えば済む話しだろうが」
「向こうはそんなことにビビってねぇよ」
 そして、緑川に向き直って言った。
「お前が助けた女の子だとさ。だから助けてくれんだと。ほら、行けよ」
 そして道をあけると、緑川は下を向きながらフラフラと歩み出た。
 囲っていた生徒達は何も無かったように踵を返して三年の教室の方へ去って行った。
 真琴はたまちに倒れるようにしがみついた。
「怖かった……」
「こっちも怖かったよ……」
 緑川はうつむいたまま、何も言わずに自分のクラスへと走り去ってしまった。
 たまちは言った。
「あ、なんだよ、あいつ、こっちに一言もないの」
 真琴は緑川の顔を見て、泣いているように見えた。そんなところは見られたくないだろう、だから一言も言わずに去ったのだ。
 たまちが言った。
「さあ、早く教室に戻ろ」
 真琴はうなずいた。


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