あかねは全く意図しない展開から、香坂美々(こうさかみみ)と手を繋いで学校へ向かっていた。家の近くで、女バスの後輩である彼女に突然抱きつかれ、相談にのることになったのだった。
 あかねは、歩きながら話しを聞いていたが、気持ちはそれどころではなかった。香坂の容姿が気になっていたのだ。香坂の髪、香坂の顎から喉へかけてのライン、美しい肌…… なんというか、それらすべてが、香坂美々という女の子が、あかねの好みのタイプだ、ということなのかもしれない。
 あかねはあることを思いだした。この子は、昨日何度も繰り返し『おかず』にしたアイドルグループの子に似ている。妹にしたいタイプというのか、顔に対する瞳のバランスから受ける幼いような顔の雰囲気が、あかねの琴線に触れた。
 胸はそんなにある方ではないのだが、腰、おしり、ふとももへのラインを見ていると、自分の足を擦りつけたくなる。
「先輩?」
 その言葉で、あかねは、ようやくそんな考えを終わらせ、美々の答えを待つような表情に向かって喋り始めた。
「……そう。そんなことがあったのね。けど、その『リンク』のメッセージのIDは紗英じゃないんでしょ?」
「けど、内容的に紗英しかいないんです」
「そっか。じゃあ、なんかそういう脅しが出来るIDをワザワザ入手して、使ったってこと?」
「川西とグルなんですよ、きっと!」
 美々と繋いだ手が、いつの間にか恋人つなぎになっていることに気づいた。
「ただ、ちょっと今は騒がない方がいいわ」
 あかねは指を自然に伸ばして普通の手のつなぎ方に戻そうとした。これ以上、この子と触れていたら、学校にいる間中、悶々となってしまう。
「何故ですか?」
「今、意見書を集めているでしょ。変に騒ぎになると、この後の投票が潰れてしまうわ」
「え? 本当にそんなことになりますか?」
 あかねは、美々の言葉より繋いだ手を離したくてしかたなかった。
「川西派、と呼んだらいいのかな。その子達はどうも騒ぎを起こしたくてしかたないみたいよ。この前も変なメッセージを送って来たじゃない? だから、きっと作戦なんじゃないかと思うの」
「ああ…… この前の川西が書いたような、変なメッセージの件ですか?」
「そう。騒ぎにならないように、もう少しだけ待ってくれないかな。騒ぎになって、先生とかまで巻き込み始めると、きっとこの投票とか、そういう話しじゃなくなっちゃうよ」
「けど、川西がしている悪いことは変わらないじゃないですか」
「そうだけど。大人に任せてるとまた『なあなあ』になってしまうでしょ。被害者側の気持ちも考えて、とか言って。ここはキッチリ女バスとしての意見をまとめるべきなのよ」
「わかりました」
 美々がつないでいる手を、もう一方の手で包むように触れてきた。あかねは、不意に昨日の自慰のことを思い出してしまった。この可愛らしい手で私に触れて欲しい、そんなことを考えてしまった。
「先輩!」
「は、はい!」
「本当にお願いします。お願いします!」
 あかねの手を握ったまま、祈るように手を顔の前で合わせた。
 あかねはどうしていいかわからなかったが、もしかしてもう一度この子をハグ出来るかしら、と思って待ち構えていた。
「では、用事があるので先に学校行きます、また部活で!」
 と言って、香坂美々は走り去ってしまった。あかねはしばらくそこで、繋いでいた方の自分の手を見つめていた。


 ーーー
いつもありがとうございます。
お手間でなければクリックをお願いします→にほんブログ村