真琴とたまちは、田畑のことをしばらく泳がせておくことに決めた。緑川は、聞かれたら答える、と言っていたが、田畑がわざわざ緑川に『私のこと聞いてくる奴いた?』と探ってくるとは思えなかった。真琴達の動きに気づかれるまでは、だが。
 田畑をそのまま放置する訳は、どちらかというとそういう理屈ではなく、真琴がお祖父さんを失ったショックが大きかったからだった。真琴は部屋で小火騒ぎがあり、パソコンを焼いてお祖父さんを失ってしまったのだった。
 学校の帰り、たまちが言った。
「真琴、私は良く知らないんだけどさ。あの日、お祖父さんのパソコンのある部屋の扉、開いていたよね?」
 何を言い出すんだろう、と真琴はたまちの目を見た。
「なんかそこが引っかかるのよね。誰かに放火されんじゃないか、って。いくらつけっぱなしだったからって、パソコンなんていきなり燃えるものかしら?」
「それって」
「誰かに入られた、とか。放火された、とか、そういうこと?」
 真琴はあの小火の後、消防の人と管理人で部屋の調査をしていた時のことを思い出した。
「そうか、そう言えば、パソコンは温度管理されてるから、つけっぱなしでも燃えない、みたいなことを消防の人が言ってた」
「そうでしょ? ちょっと変な感じがするのよ」
 もしそうだとして、わざわざお祖父ちゃんのパソコンを壊したくなる相手とは誰なんだろう、と真琴は思った。
 もしお祖父ちゃんが邪魔だ、と思うとしたら、やっぱりそれはエントーシアンなのだ。たまちとの戦いの時、品川さんや上野さんが助けにきてくれたのは、お祖父ちゃんのおかげだった。大塚さんとの戦いの時、ヒカリの声を薫に届けたのも、お祖父ちゃんだ。
 その力は小さいかもしれないが、エントーシアンと同じような精神体であるお祖父ちゃんは、ひょっとするととても邪魔な存在であったのかもしれない。そしてそれを焼き壊すことができるのは、【鍵穴】ということになる。
 今、一番【鍵穴】の疑いの高いのは、田畑さんだ。
「もし、お祖父ちゃんを…… というかパソコンを壊そうとする人がいるなら、きっとそれはエントーシアンだよね」
 たまちは頷いた。
「そうなんだけど。もう一つ」
 たまちは指を立てて、さらに続けた。
「鍵がかかっていた部屋には出入り出来ないよね? 外から放火されたならともかく、部屋にどうやって入ったか、が問題なのよ」
「けど、扉が少し開いていて」
 真琴は自分で言っていて気がついた。
 その扉は玄関から入った部屋内の扉だ。玄関の鍵は掛かっていたし、そもそもマンションの入り口は、キー操作するか、部屋側から操作しないと開かない。
「どうやったんだろう?」
「でしょ? そこがわからないのよね」
 二人は黙ってしまった。
 スマフォが振動したので、真琴は通知を見た。
「あ、涼子からだ」
「どうしたって?」
「ちょっとまって…… また予告だって」
 真琴がスマフォを読んでいる間、たまちも自分のスマフォを取り出してなにか操作していた。
「あたしにも入ってる」
「うん。どうしよう。これから6時間以内だって。ボクは行く」
「うん。私もいくよ」
 二人は中居寺の駅に引き返した。そして涼子が今いるスタジオへ向かった。


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