中居寺から学校を通り過ぎた終点の駅、西井ノ原にについた。西井ノ原は中居寺よりずっと都会的な街並みで、オフィスも多かった。こういうお洒落な通り沿いに、撮影スタジオもあるんだな、と予想していたのだが、涼子が示した場所へと進むと、そういう華やかな様子とは全く異なる、殺風景な光景が広がっていた。
 結局、スタジオのような敷地が必要なところは、便利だがその中でも地価の安いところに作るのだろう、と真琴は思った。二人はコンクリートで出来た壁沿いに歩いていくと、その壁に小さなボックスが付いた扉が見つけた。
「たまち、青い扉、だったよね」
「確認する。ちょっとまって」
 たまちはスマフォで確認してくれた。
「そうね。それを開けたら、今日のパスコードを打ち込んで」
 ボックスに蓋がついているのだが、蓋自体も簡単に開かないようになっていて、慣れない真琴はそれを開けるのに苦労した。
 どうやら、ボタンを押すとレバーが上がり、上がったレバーを回して引くらしい。引いた中には何か白い電子機械があって、たまちが番号を打ち込んだ。ピッピッという音がすると、青い扉がゆっくりスライドした。
 たまちが言った。
「秘密基地みたいね」
「ボクもそう思った」
 中に入ると金属の回転ゲートがあった。真琴はたまちに操作してもらって、QRコードを表示させ、回転ゲートの横についている読取機に当てた。
 たまちも同じようにしてから回転ゲートをくぐった。
 その先にあったのは、再び殺風景な倉庫が七、八あるような場所だった。倉庫は全てシャッターがしまっており、倉庫と倉庫の間の通路は、整理はされているが、なにか荷物の運搬につかうような平たい木箱のようなものが沢山置かれていた。人は歩いておらず、本当にここに沢山の人がいるのかわからなかった。
 たまちがまたスマフォで確かめながら、左右を見渡した。
「Dスタジオ、だからこっちだね」
 たまちに導かれるまま、真琴は倉庫と倉庫の間の道を歩いた。歩いていても、やはり人とすれ違うことは無かった。
 Dと書かれた倉庫に近づいてくると、やっと人を見かけた。どうやらそこは喫煙所のようで、簡単な屋根があって、真ん中に灰皿が立っていた。数人がタバコを吸いながら話していた。
 たまちが言った。
「あのひと有名人かな?」
「ボク、あんまりそういうの詳しくないんだよ…… 」
「あ、ここだよ」
「着いたら電話してって書いてあったね」
 真琴は、涼子に電話したが、ただいま対応出来ません、という自動応答だった。
 ここまで自動で入れるのに、ここからは入れないんだ、と少し面倒な気分になった。タバコを吸っていた人たちが、別の倉庫、いやスタジオなのだろう、に入る時に、首からぶら下げているパスを扉の横の装置にかざしていた。
 真琴はもう一度、涼子に電話すると、今度はすぐにつながった。
「ありがとう、早かったね。すぐ開けにいくから」
 涼子が扉を開け、二人を招き入れた。
 テレビなどでたまに映るスタジオ風景を見ているような気がした。本当に撮影場所の何倍かは脚立や、撮影道具や、何につかうのか判らない布や箱の類がたくさん並んでいた。
 ひときわ明るいところが、おそらく撮影する場所で、その空間だけを切り取ると、確かに雑誌の表紙や、テレビを見ているようだった。
 どうやら涼子以外にもモデルの人がいるらしく、涼子から静かにしてね、という説明を受けた。
 そうやって少しスタジオを見た後、三人は簡単な仕切りのある休憩所のような部屋へ行った。
「ここ元々、喫煙ルームだったみたいで、ちょっとヤニくさいけど我慢してね」
 真琴はタバコの匂いがどういうものなのか良くはしらなかったが、たまにかいだことのある、嫌な匂いがしたので、これがそのヤニの匂いなのだ、と思った。
「さっそくだけど私」
 涼子はいつになく真剣な表情で言った。
「薫に脅迫されたの」


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