涼子はスタッフに呼ばれ、撮影に戻った。たまちと真琴も撮影場所に移動して、涼子の撮影を見ていた。
 真琴はさっき涼子が言ったことを思い出していた。
『私を殺す、というのが本当に薫が言ったのか、真犯人が言ったのかを見極めればどうやって残りの二十何時間を過ごせばいいのか判るんだけど。問題はそれが判らないから、確率が五分五分なことね』
 つまり薫が言ったのだとしたら、脅しをすることで警戒すれば目標が達せられる、ということだ。この二十何時間をおとなしく過ごせ、というメッセージと受け取れる。
 真犯人のメッセージだとすれば、この二十何時間の間に、涼子を狙える位置にいるということだ。例えばこのスタジオの中にいる誰かが犯人という可能性だってある。そうなってしまうと、ただ単に篭っているのは逆効果になる。徹底的に怪しい人物と距離を置かなければならない。
 真琴は脅迫のメッセージに何かヒントがないかを考えた。
『これから二十四時間。その間にあなたを殺す』
 どういうことだろう? 二十四時間ではなくて、二十四時間マル? だろうか。
 撮影が終わったのか、涼子がこちらに近づいて来た。
「…こと」
 その間に、は『そのあいだに』ということだろうか? もしかして次の『あなた』という呼びかけ方に何か意味が……
「真琴!?」
「え? 何何?」
「聞いてなかったの? 篠峠さんが真琴を入れたらどうか、って言ってるの。雑誌のイメージ写真なんだけど、どう? やる? すこしお金もでるわよ」
「え? ボク? はずかしいよ」
「この前なんか、水着で、テレビ出たじゃない。大丈夫大丈夫。衣装もメイクもしてくれるから」
 たまちが手を合わせ、真琴に言った。
「私からもお願い。真琴」
「たまちまで、どうして?」
「モデルなんてかっこいいじゃん! 雑誌出たら買うから!! 出なよ! 記念になるよ!」
 結局、真琴は周りの人におされて、涼子と一緒に撮影をした。
 はじめ真琴は、涼子が言ったように、ポーズはスタッフやカメラマンさんに従って、なんとなく手足を動かしているだけだった。だから、カメラの側からどう見えるのか、とか自分がいったいどういう表情をしているのか、全く意識の外にあった。
 真琴は次第にスタッフやカメラマンの人の汗が見えてくると、そんな人達の真剣な表情に応えようと思った。涼子がやることをまねしてみたり、涼子がやっているように、不明なところを質問してみたりした。真琴が上手くやれると、涼子も、スタッフの人も、たまちも、カメラマンさんも、皆が笑顔になった。だんだん、夢中になるのが分かった。
 そんな集中した時間が過ぎると、いつの間にか普段食事をする時間を過ぎていた。
「やるじゃん真琴、才能あるんじゃない?」
「ボクは言われた通りにするのが精一杯だよ」
「そこがいいんじゃない?」
 たまちが、涼子と真琴にタオルを手渡そうと待っていた。たまちは言った。
「二人共かっこ良かったよ」
「ありがとう」
 涼子がそう言ってタオルを受け取ると、真琴も同じようにタオルを受け取ろうとした時、ふっ、と意識を失った。


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