ちょっと前のハプニングで、たまちはまだシャワーも浴びていないうちから、少しのぼせたような状態になってしまい、居間のソファーで横になっていた。ロズリーヌは着替えに二階の部屋に行っていた。ここでメラニーと真琴が出て行くと、まともに涼子を警護出来るのはフランシーヌだけになってしまう。
「涼子、ちょっと」
 真琴は涼子に狙われているという立場だということを意識するように、と耳元で言った。
「風呂あがりぐらいのんびり…… ああ、判ってますから。大丈夫よ」
 涼子はあまり気に留めていないようだった。
 真琴はこのくらいの緊張感でいい、と思ってそれ以上言うのをやめた。
「じゃあ、シャワー浴びてきます」
 メラニーがフランシーヌにそう告げると、二人は居間を出た。
 脱衣スペースでお互い服を脱ぎ始めると、メラニーが言った。
「あの、真琴さん」
「はい」
「あっちを向いていてください」
「はい」
 真琴が反対方向を向くと、メラニーが下着を脱ぐような動きをしたのが分かった。どうやら恥ずかしいらしい。これから裸を見られてしまうというのに、脱いでいる時の方が恥ずかしいとでも言うのだろうか。
 二人は浴室へと入った。
 メラニーは特に隠すでもなく、照れもなかった。やはりさっきは『脱ぐ』行為自体が恥ずかしいのであって、裸が恥ずかしいのではないようだった。
 真琴はメラニーの素敵な体を目でトレースしながら、シャワーで体を流していた。
「真琴さん、じろじろ見ないでください…… ああそうだ。私が体を洗ってあげましょう」
 メラニーがボディタオルにソープを付けて泡だて始めた。
「いや、いいよ。自分でやるよ」
「湯を張っていないので暇なんです。嫌じゃなければやらせてください」
 そう言われると断りづらい、と思い真琴はうなずいた。
 メラニーの持っている折りたたまれたタオルが首筋から肩、胸へと降りてきた。痛くもなく、弱すぎもしない、まるで自分で洗っているような感じがした。
 お腹、そして上に上がって背中側の首筋から脇のした、背中を洗われているうち、軽く眠くなってしまい、立ったまま目を閉じてしまった。
 ほんの一瞬、体の力が抜け、意識を失った。
「大丈夫ですか?」
 メラニーの腕に支えられて、危うく立っているようだった。
 さっき、寝てしまったせいか……
「大丈夫よ。ゴメンナサイ。あまりに快適で寝てしまうから、やっぱり自分で洗うね」
「そうですか、それなら」
 メラニーからボディタオルを手渡された時、メラニーの手の甲に刺青のようなものが見えた。それは黒や青や赤といったものではなく、LEDのように発光しているような色に見えた。
 気になって、さり気なくメラニーの手を見たが、刺青はなくなっていた。無くなる? 刺青なのに? それとも気のせい? 確か、ああいうのは梵字? とかいうやつだ、サンスクリット語を記す文字、いや、仏教だっけ……
 真琴は足先まで洗い終わると、全身の泡を洗い流した。
「さあ、交代しよう。今度は、ボクが洗ってあげるね」
「ダメです。私は洗って頂けるような立場の者ではありません」
 さっきの方法でやり返そう、と真琴は思った。
「ボクの申し出は嫌なの?」
「……」
 真琴はボディタオルを一度丁寧に洗い、ボディソープを垂らし、入念に泡立てた。
 きっと真琴がいつも洗っているぐらいの調子でメラニーも洗っているのだろう、という確信があったので、気にせずいつものペースでタオルを動かし始めた。
「あっ……」
「え? ゴメン、痛かった?」
「いえ、そうではないのですが」
 真琴がまた顎のした辺りにタオルを当てると、メラニーは妙な声を上げた。
「どういうこと?」
「なんでもありません。大丈夫です」
 メラニーが真琴を洗った時は、正面は正面から、背中は背中側に立って洗ったのだが、真琴はメラニーの後ろから正面側を洗おうとしているからなのかも知れない。そういえば、妙に体が密着している。
 それだけではない。
 体が妙に軽い。
 真琴は右手でメラニーを洗いながら、自分の左手がどこにあるかを確認した。どうやらそれがメラニーが声を上げる原因だった。
 メラニーの左の乳房を弄っていたのである。
 次第に大きくなる声を聞きながら、タオルを捨て、両手がメラニーの胸を持ち上げるようになで上げ、指先が乳首に触れていることに気がついた。
 メラニーは振り返った。
 手の甲を真琴に見せるように顔の前へ突き上げると、さっきの梵字のような輝く刺青が浮かび上がった。
「なに?」
「こうします」
 メラニーはそのまま内側に捻り込むように真琴の顔面に拳を打ち込んだ。


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