「あなた、誰?」
 涼子がソファーの背もたれから上半身を出し、そう言った。ソファーから見えるかぎり、涼子は服を着ていなかった。
「ボクだよ! 涼子、助けて! メラニーが」
 ソファーからたまちも涼子と体を合わせるような向きで、体を起こしてきてからこう言った。
「だから、誰?」
 たまちの小さい乳房が見てとれた。
「たすけ…… て……」
 何をしているの、たまち、涼子。
 ボクは誰を頼ればいいの? ここは夢ではないの? 半ば気が遠くなってきた。
 とにかくここにいても何も起こらない、真琴はもう一度居間から出て、玄関から外へ出ることにした。裸だったが、しかたがない。
 顔を上げると、玄関にはロズリーヌとフランシーヌが立っていた。
 二人共、しっかりとメイドの格好をしていた。本式ではない、日本式のコスプレ風だった。
「そこをどいて、ボクは外に出ないと」
「裸では外に出れないわ」
 フランシーヌが言った。
「そうだね。いくら露出度が高い私でも、服なしに外には出ない」
 ロズリーヌが言った。
「……」
 真琴はたった一人、今頼るべき人の名前が浮かんだ。
 その瞬間には叫んでいた。
「か!お!!る!!!」
 ロズリーヌとフランシーヌの先にある玄関扉の中央が、白く光ったかと思うと、次の瞬間、粉々に砕け散った。爆風はまったく真琴に届いていないのに、扉の破片は真琴の方へ飛んできた。
 開いた扉の先は、白かった。
 凄い光量のせいかもしれない。
 なんにせよ、真琴には、白い、としかわからなかった。
 そしてそこに人影が見えはじめた。
 ロズリーヌとフランシーヌは玄関の光りの中に飛び込んでいった。
 フランシーヌが光りから戻ってきた時には、血まみれになって意識を失ったように倒れた。
 ロズリーヌは、すこし時間がかかったが、同じように戻ってきて倒れてしまった。
 光りが再び夜の闇へと戻ると、壊れた扉の前に長い髪の女性が立っていた。その姿が完全に認識出来るようになると、真琴は息を呑んだ。
 長い髪のその女は、背格好と顔、髪型こそ薫だったが、見たことがない、革の黒い衣装だった。
 この革の服って、ボンデージ? 真琴は理由もなく恐怖した。
「か、薫、なの?」
「ああ」
 女はそう言ってうなずいた。
「助けて……」
「腕、もがれてザマァねぇな」
 言葉が信じられないくらい汚かったが、声は薫そのものだった。
「かおる! 助けて」
「マジックダイバー、エントリーと言え」
 真琴は薫の目が怖くて、ビビってしまった。
「早く」
「マジックダイバー、エントリー」
 真琴の乳房の間、少し左よりの部分が光り輝いた。心臓の位置だ、そう思った真琴が自分の胸を見ていると、薫の手が光っているところに差し込まれた。
 激しい痛みとともに、真琴は喉や肺側から出たと思われる血を口から吐いてしまった。
「取れねぇぞ、お前」
 真琴はうつむいて咳き込むと、更に多くの血を吐いた。そして痛みに立っていられなくなって、膝から落ちるように座り込んでしまった。
「取れねぇ、って言ってんだろ」
 薫が左手で真琴の髪を引っ張って上を向かせると、再び真琴の光っている胸の真ん中に手を突っ込んできた。
 再び激しい痛みが真琴を襲った。
 それと同時に、真琴が吹き上げるように血を吐いた為、薫の顔や体に鮮血がかかってしまった。
「やっと取れたか」
 薫の右手には血だらけのバトンが握られていた。


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