ここは電車の中だ。
 あかねには、どれくらいの大きさのものがこのBITCHを表示させているのか、判らなかった。美沙が体育館で言っていたのはパソコンぐらいの大きさがあれば、と言っていた。
 あかねはみくを見るが、みくは荷物という荷物を持っていない。
 では、学校の体育館付近、山川らも出てきたマンションのあたり、そしてこの電車の中で表示されるBITCHとは何なのだろう。あかねは美沙にメールで疑問をぶつけた。
 返事はすぐ返ってこない。
 あかねは考えた。
 神林以外の人物が持っている可能性を考え、あたりを見回したが、何か変なものを持った人物がいる訳でも、まして川西がいる訳でもなかった。
 これ以上どうすることもできない。
 しかたがないので、あかねは一度忘れることにした。
 神林が扉の方へ移動したので、あかねもタブレットを鞄にしまって駅を準備した。次の駅だとすると…… 青葉だ。
 さっき聞いた、ミチと愛理の会話。
 そこに川西が結びつけば、もう川西のセクハラを訴えるのに遠慮はいらない。川西を助けよう、という連中は裏でつながっているからそうするだけなのだから。
 あかねは神林が降りるのを確認して、ホームへ降りた。みくがエスカレータを使うので、何人か挟んで後ろについた。
 そして共通乗車カードを使って、改札を出ようとした瞬間、チャイムがなった。
 みくが残高が足りないのか、入る時のタッチが認識されていないのか、とにかく、ゲートで引っかかったのだ。あかねは迂闊にも神林の真後ろから出ようとしており、至近距離で顔を向き合わせてしまった。
 あかねはもう頭の中が真っ白になり、目をつぶってしまった。
 ドン、と体がぶつかった。
「ちょっと、どいてよ、邪魔」
 逆ギレ? とムカついたらバレてしまう。
 そのまま目をつぶったまま、後ずさりすると、みくはあかねに気づかずに後ろを周り、そのまま駅員のいる改札へ回った。
 最低な不注意で起こった最大の危機を脱したあかねだったが、そのまま自分のカードをかざすと、チャイムがなった。
「チッ!」
 軽く渋滞が起こっていて、後ろの男性に舌打ちされた。あかねはうつむいてその場を離れた。みくが直接駅員のいるところに行っている為、あかねは自動精算機に向かった。
 コンビニで支払った時に残高を確認しておくんだった、とあかねは思った。
 幸い神林も引っかかっていたので、すぐに見失う事はなさそうだったが、こっちだけが引っかかったらヤバかった。あかねはさっさと精算して、ゲートを抜けた。
 みくは例のごちゃごちゃした小さいビルの並ぶ通りに向かっているようだった。
 大通りをの信号を待っていると、あかねは視線を感じて後ろを振り返った。あかねは以前やけになって一緒に散歩した、おっさんが見ているのではないか、と思い、男の人を探したが、あかねの方を見ている様子の人物は見つからなかった。
 なんだろう、確かに視線というか、つけられているような感じがする。
 あかねは神林を追いながら、自分の背後にも気を配りながら大通りの横断歩道を進んだ。神林が小さなビルの入り口に入ると、あかねは立ち止まった。あかねは大胆に後ろを振り返ったが、追いかけてきている人物を特定することは出来なかった。
 あかねは周りをよくみて、そのビルから出入りした時に見える位置を探した。自分の身を隠す場所だ。
 だが、あまり都合のよい場所がなかった。通りの端に喫茶店があったが、かなり距離がある。それに、神林が動き出した時に追いかけられるか疑問に思えた。
 しかし、ビルの近くの書店や家電販売店は窓はなく、外を監視するには向かなかった。ひたすらこの通りを行ったり来たりするしかないのか、とあかねが思っていると、目の前を山川が通り過ぎた。


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