はっ、と意識すると、あかねは目を細めていた。サングラスの下なので、多少細めれば本人と気づかれないだろう、と思っていたからだ。
 山川はアニメによくあるような、リアリティのない、短いスカートのメイド服を着ていた。幸い、山川はスマフォを見ながら歩いていたので、あかねに気づいてはいないようだった。
 そして、そのまま神林が入っていったビル入っていった。
 あかねは、この通りをうろうろしていると、全方向から来るかもしない三人を相手に隠れなければいけない、と考えた。せめて方向を絞り込まないと危険だ。
 考えたあげく、離れているが角の喫茶店に入って外を見ることにした。そこしかなかったし、喫茶店のようなところであれば、店内を先にチェックしてしまえば、多方向から見つかる心配はない。注意すべきは出入り口のみだからだ。
 あかねはそう思って通りを進んで、喫茶店のオートドアを開けて入った。
「あかね?」
 あかねは後ろから声をかけられた。
 神林みくの声だった。
 まさか……
 気が付かないフリ、知らないひとの名前だと思い込んで、あかねは、それを無視した。
「あかねだよね?」
 背中に手をかけられた。さすがにこれを無視することは出来ない。あかねは振り向かずに言った。少し低い声にしてみる。
「ひとちが……」
「何言ってるの。あかねでしょ?」
 あかねは振り向くと、みくに『パッ』とサングラスを取られてしまった。
「やっぱり!」
 その瞬間、あかねは平手打ちを食らった。
 店内の客が、一斉に二人の方を見るのがわかった。
「あんたのくるとこじゃないんだよ」
 『ここは全国チェーンの喫茶店だ』と言い返してやりたかったが、痛みと驚きと恥ずかしさが入り混じって、あかねには声がだせなかった。
「ほら!」
 神林が大きな声を出した。
 あかねは、涙が出てきた。
 平手打ちの痛みではなく、自分の行為が神林を傷つけた、と思ったからかもしれない。とにかく、涙が頬を伝った。
 もうここを逃げ出すしかない。
 この尾行はもう終わり。だって本人にバレてしまったのだもの。
 あかねは、早足で店の外に出て、一度も振り返らず駅の方向へとあるいた。
 涙が溜まっていて、何が見えているか、よくわからないまま駅につき、なんとか帰りの電車に飛び乗った。たまたま空いていた座席に座ると、涙をハンドタオルで拭った。そしてそのまま、目をタオルで押さえたまま、数駅が過ぎていった。
 あかねは、気分が落ち着くと、カバンからタブレット端末を出して、WEBメールを確認した。そして、さっきの出来事をメールに書き込んで送信した。
 すると、通信が止まっていた通信が動きだしたように、受信箱にメールが表示された。
 開いてみると、美沙からだった。
『こっちはまだ学校です。もしものことがあるので、やまと君に反対側の出入り口を見てもらってます。
BITCHだけど、もしかすると、WiFiテザリングなのかも。学校の時は、『リンク』の企業ページの真似ができるようなWiFiだった、って予想してたからパソコンかな、と思ってたけど。電車とかならきっとスマフォのテザリングでも、そういうWiFiの表示だせるよ。
もし、BITCHが複数あるなら、最初にあかねが動画を見たものと、私達が学校で見つけようとしていたもの、そしてあかねが電車でみたもの、はそれぞれ別なのかも。とにかく、気をつけて』
 あかねは読み終わると、ふとさっきのWiFi設定の画面を見て、ぞっとした。
 なぜなら、またBITCHが表示されていたからだった。


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