真琴はゆっくりと目を開けた。
 両腕にはかなりの重量のものが乗っていて、腕がしびれていた。右は薫で、左には涼子の頭がのっていた。薫はまだ眠っているようだった。
「真琴」
 涼子が目を覚ました。
 真琴は涼子のに顔を向けた。
「痛っ……」
 真琴は腕と首に痛みを感じた。
「どうしたの?」
「首が痛い、腕も……」
「あっ、そうだよね」
 涼子が上体を起こすと、左腕が自由になったが、しびれのせいか、思うように動かない。
「ん……」
 薫の声が聞こえた。
 真琴は薫の方を向いて、薫が目を開けるところをじっと見ていた。
 真琴は目が覚めると同時に、いたずらでキスをしようとしたが、体が痛くて動けなかった。
「ふふ、無理しないで」
 と言って、薫が真琴にキスをした。
 薫は上体を起こすと、真琴の腕をとって引き上げるように真琴を起こした。 
「全身が痛い……」
 真琴が言うと、薫が答えた。
「こんな格好でずっといたからね」
「私達が両腕に乗っていたわけだから、しびれてしまうよね」
「ちょっとまって」
 真琴はあることに気付いた。
「なんで皆んな裸なの?」
「真琴、ここがどこだか分かってる?」
「浴室だからね」
 確かにここがどこか、と言われると浴室であるのは正しいようだった。
「全員裸、自然なことでしょ?」
 真琴はそう言われても理解が出来なかった。単純に言葉上、浴室なら裸でも不自然じゃない、ということを理解しただけだった。
 すると、ボンヤリとみていた正面の扉が開き、メラニーが顔を出して言った。
「あ、目が覚めたのですね! 皆んなに知らせてきます」
 涼子が真琴の腕を担ぐようにして、
「ほら肩を貸すから、起きよう」
「着替えないとね」
「ありがとう」
 真琴は二人に助けられながら立ち上がった。
 真琴は、腕がしびれて痛い為、着替えを薫と涼子に手伝ってもらった。二人に広げてもらったパンティに順番に足を入れる時など、どんな幼児プレイだという感じで、とても恥ずかしかった。それでも、腕はしびれているし、体に力が入らないのでどうにもならなかった。ずっと裸でいるよりマシだ。
 着替え終わると居間へ入った。
 たまちも、フランシーヌ、ロズリーヌ、メラニー、涼子、そして薫、皆んなが笑顔になった。
 何もかも戻った。
 真琴は幸せな気分になった。
「ありがとう、みんな」

 その翌日から、薫は学校に復帰した。真琴はこれで本当に全てがもとに戻ったと感じた。放課後、涼子、たまち、薫で一緒に帰ることになり、真琴は全員の前で言った。
「本当にありがとう、何か、皆んなにお礼をしないと」
 たまちが言った。
「いや、いいよ」
 涼子が言った。
「お礼はいいから皆んなでどっか旅行しようよ」
 薫が言った。
「打ち上げでOrigamiに行きましょうよ。一杯ずつおごってもらうってことで」
「実現可能そうなのはそれかな……」
「私もやっぱり何かほしい! 全員とキスとか!」
「旅行だよ! いっしょに旅行!」
「打ち上げでいいじゃない」
「実現出来るものにして」
 皆、言い争っているようだったが、笑顔だった。
 真琴はふと違和感を感じ、すこし冷静にその違和感を確認すると、駅の屋根に男が立っているのを見つけた。
 男は、白衣をきて丸眼鏡をかけていた。
 真琴に気付いたのか、男は指を差して何か示した。指の先には、同じ制服の女生徒がいて、真琴の方を見ていた。
 真琴はその女生徒の顔を知っていた。
 そこにいたのは、田畑まさみ、だった。


 六話 終わり

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