七話です
 

あらすじ

主人公真琴は頭痛持ちの女子高校生。真琴は、頭痛の度に夢でヒカリに出会い、聞かされていた話があった。そして、高二になったある日、ヒカリから聞いていた敵と遭遇する。敵を倒すには、敵の保有者と接触状態で夢を共有し、その夢の中で敵を打ち負かさねばならない。同級生の友人『薫』と協力し、目の前に現れる敵と戦うことになるのだが……

 
登場人物

新野 真琴 : ショートヘアの女生徒で東堂本高校の二年生。頭痛持ち。頭痛の時に見る夢の中のヒカリと協力して精神侵略から守ることになったが、ヒカリに裏切られる。

北御堂 薫 : 真琴の親友で同級生、真琴のことが好き。冷静で優秀な女の子。真琴を救う為にラボでエントーシアンを取り込んだ。

渋谷 涼子 : 同級生でモデル。偶然、ロケ先で真琴と知り合いになる。【鍵穴】となっていたが、真琴に救い出された。薫と共に戦い、真琴をヒカリから救った。

浜松たまち :  真琴と同じクラスで【鍵穴】となってしまった女生徒。真琴と友達になることで救い出された。

品川 優花 : 陸上部で真琴と同じクラス。最初に【鍵穴】として発見された。

上野 陽子 : 剣道部の三年生。【鍵穴】となってしまい、別の意識体に入り込まれて騒動になる。

メラニー・フェアファクス : 北御堂の養育係、黒髪、褐色の肌のもつイギリス人

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 真琴は大男の指差す先に、田畑まさみがいるのを知った。田畑は真琴の方を睨んでいた。
「薫、涼子、たまち、あそこ見て」
 真琴の声で、全員が駅の方を見つめた。
「誰?」
「田畑まさみ、ね?」
「それで何なの?」
「こっちを睨んでるよね?」
「あっ!」
 と言って、真琴は走り出したが、直後に、電車が入線する音が聞こえた。真琴が駅につくより早く、田畑まさみは改札を抜けて電車に乗ってしまった。
「逃げられた!」
 真琴は、少し遅れてついてきた涼子に言った。
「あいつ何なの?」
 走ったせいでズレた伊達メガネを直しながら涼子はたずねた。
「エントーシアン?」
 真琴は首を振った。
「実はまだ何もわかっていないの」
 その時、真琴は突然駅の屋根の人物のことを思い出した。屋根の上を見る為、再び学校の方へ走りだした。
 薫とたまちは、逆走してきた真琴とすれ違ってしまった。
「今度はそっちに行くの……」
 たまちは息が切れて苦しそうだった。
「真琴、どうしたの?」
 薫がたずねると、真琴は答えた。
「屋根の上に」
「誰もいなかったけど」
「え? さっきはいたの!」
 真琴は駅の屋根が見えるようにあちこち歩き回っていたが、やがて諦めたように皆の集まる改札前に戻った。
 真琴は、あの白衣の大男に何度か助けられていた。おそらく、今回も何か助けてくれようとしたのだ。田畑まさみ、まだ何者ともわかっていないが、白衣の男が指差すことから、やはり敵対する存在ではないか、と真琴は思った。
「屋根の上に誰がいたの?」
「……」
 真琴は答えなかった。
 真琴には、おぼろげな期待があった。
 ただそれが否定されてしまうのが怖かったので、皆に話したくなかった。
「……」
「それなら…… 別に。誰でもいいんだけど」
 涼子が言った。
「それより田畑さんのことはどこまでわかってるの?」
「えっと、真琴と調べたところ、薬の入手について緑川にしつこく質問してたみたいね」
「薬? 緑川って誰?」
 薫はたまちの説明に質問した。
「薬ってのは、例の交通事故があったでしょ? 事故車の運転が、緑川の兄だったらしい」
「薬って、向精神薬だって話もあるね」
「田畑まさみは、入手経路を探していたんだとおもう」
「何の為に?」
「ボクは、そこまで考えなかった」
 薫が、カバンの中から小さなテディベアを取り出した。
 くまの顔が皆を向くようにして抱っこし、何やら人形の耳元に話しかけていた。真琴がそれが何なのか訊ねようとした時、くまが喋った。
「向精神薬か…… おそらく、エントーシアンは、向精神薬に、人の精神に入り込みやすくなるよう、誘起する効果がある、と考えたのじゃろ」
「ゆうき?」
「あ、キクちゃんの声……」
 真琴は思い出した。
 薫が救い出していた、と聞いた。こんなところに入っていたのだ。
「お祖父ちゃん???」
「おお。そうだ。ちなみに、これは実体ではない。化身じゃ。だからといって、単なるくま型の携帯電話程度のものでも、ない」
 くまの手足が、話しに対応して少し動いた。あまり良く動かない首を動かす時は、抱っこしている薫が少しアシストしている。
「何言ってるの?」
「そんなことはどうでもよい。薬を使って、一時的な鍵穴を開け、エントーシアンを呼び込み一度に大勢のエントーシアンを作るつもりなのかもしれん」
「お祖父様、エントーシアンは同時に現れるのでしょうか? 今までは一人ずつでした」
「確かに。エントーシアンが次の【鍵穴】を開けるには、他の人に深く接触しないと無理じゃ」
 真琴は、薫たちに埋め込んだ、ワクチンのようなエントーシアンは、【鍵穴】に近いのではないか、と考えた。
「エントーシアンが接触して増やすことは時間が掛かるが、薬を使って一時的な【鍵穴】を誘起することで、効率を上げようとしているのではないか、と儂は考える」
「そのまま乗っ取られちゃうの?」
 くまの縫いぐるみは手を振った。
「無理じゃ。どれだけ強い薬でも、いきなり乗っ取ることはできんじゃろ。だいたい、薬の効果は、本人が一番受けるが、入り込んだエントーシアンも薬の影響を受けてしまう。薬の作用が現れている状態で、田畑が本人を潰しに行くつもりに違いあるまい」
「田畑が接触するって、ってこと?」
「薬で本人の精神が弱っているだろうから、それは容易い話じゃ。呼び込み易くし、本人の精神も弱らせる。一挙両得ということになるの」
 真琴は縫いぐるみと、キクちゃんの声で爺しゃべりをすること、それらの違和感を今頃感じ、笑ってしまった。
「何が可笑しい?」
 縫いぐるみを抱えている薫が言った。
「田畑まさみは完全にエントーシアンになってしまったのでしょうか?」
「いや、見たところまだだな。本人が薬を使ったらどうなるかわからんが」
「本人というのは? どっち?」
 真琴の言った意味は通じていないようだった。
 真琴が困っていると、薫が付け加えた。
「田畑まさみ、なのか、田畑まさみという【鍵穴】に入ったエントーシアン、という意味ね?」
「そ、そう」
「そりゃ、田畑まさみ、じゃ。エントーシアンが肉体を抑えている時に薬を使えば、反対に弱るのはエン……」
 くまの縫いぐるみの手足がバタバタと動いて、ピタリと止まった。薫ははっとしたように慌ててスマフォを手に取り、何かを確認していた。
「ごめんなさい。一度にデータ通信を大量に行ったせいか、お爺さんの回線が止められたみたい」
「え?」
「えっと。説明が難しいんだけど。この縫いぐるみ、音声だけじゃなくて、リアルタイムにいろいろデータをやり取りしてるのよね」
「?」
 真琴にはなんのことだか良くわからなかった。涼子が、何かわかったように言った。
「縫いぐるみさんの連続データ通信には問題があるってことか」
「まあそんなところね」
「月7GBってやつ?」
 たまちが言った。
「どっちかっていうと3日で1GBってやつ」
「なるほど」
「?」
 他の皆は理解したようだったが、真琴にはやっぱりよくわからなかった。


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