真琴は、Origamiからの帰り、薫に声をかけた。
「薫、薬の調査のことだけど」
「ごめんなさい」
「え? まだ何も言ってないけど」
 薫はスマフォを取り出して何かしきりにチェックしながらこう言った。
「今日はちょっと時間があったけど、また実験の続きをしなければならないの。本格的に何か手伝うことは出来ないわ」
「今日、各々が調べて来てって……」
「私も調べてみる。だから、真琴も調べてみて。自分の方法で」
「一人で、ってことね」
「ごめんね」
 薫は再びスマフォの画面に目をやると、すっと操作して電話に出た。
「はい、ちょっと遅れますが、これから伺います」
 真琴には良く分からない単語が幾つか交わされた後、薫は電話をきった。
「そういうことなの。ごめん。真琴」
「ううん、いいの」
 真琴は涼子かたまちを誘ってみるか、と考えた。
「明日も、朝は一緒の電車に乗れるから。それじゃ」
「え? ここで?」
「私、タクシーに乗るから。ごめんね。じゃあ」
 薫は手を振ってから、ロータリー脇のタクシー乗り場に向かっていった。
 真琴は自宅に帰る為、駅まで戻ってからバス停に並んだ。並んでいる時に、『リンク』でたまちを誘ってみた。
『薬について、一緒に調べない?』
 ちょっと前まで一緒に行動していたし、たまちは涼子のようにモデルとか仕事もないし、薫のように実験なんてこともない。部活もないのだから、真琴と一緒に動いてくれる、そう思っていた。
 バスに乗り、自宅に戻っても、たまちの『既読』すらつかなかった。
 送り間違えたか、と思い、何度か確かめるが、送り先はたまちで間違っていなかった。『リンク』に障害でもあるのか、と思って、『リンク』の運営会社のサイトもチェックしたが、障害やメンテナンスという情報もなかった。
 真琴は持って帰るようになった教科書を広げ、宿題と今日の復習を始めた。まだ習慣づいてはいなかったが、これをやることが学力向上の早道だ、と教わったのだ。
 一通り宿題と、習った箇所の復習が終わって、真琴は『リンク』を確認したが、たまちの既読はついていなかった。
 真琴は母からの夕飯の相談メールに返信してから、自分のハサミを持って鏡の前に向かった。
 合わせ鏡をして、耳の後ろや、襟足のところを軽く整え、前髪の右側を少しそぐように切った。左側の髪は、もう少し伸びれば、アシンメトリーでいい感じになってくる、と真琴は思った。
 トップも少し梳くように軽くカットすると、鏡の自分と向き合って、ため息をついた。
 どうやって『薬』のことを調べよう。
 他人頼みだった真琴は、どこからどうやって考えればいいかすら分からなかった。全く手の付け所が分からないのだ。
 だから、薫に断られ、今もたまちからの返事がないことで、それ以上どうしたらいいか分からなくなった。
 真琴はハサミを置くと、気晴らしにテレビをつけた。
 しばらくして、画像が映ると同時にいきなり大きな笑い声が響いた。真琴は瞬間的にチャンネルを変えた。変えたが、興味もないので、何を見ようかが決まらなかった。何周かチャネルを変えた時、真琴はリモコンを置いた。
 CMが終わると、それはニュース番組の途中らしく、ちょうどドラッグの事を特集していた。
「あ、これ……」
 真琴は少しテレビの内容に興味をもった。
『一部の店ではドラッグであることを知らせずに客に販売しており、問題となっています』
 背景の画像には場所が特定されないように、看板や人の顔に処理がされていたが、真琴にはそれがどこなのかがわかった。
 Origamiの通りをちょっと奥に入って、並行して通っている一本向こうの道沿いのはずだ。ちょっとした歓楽街になっていて、おじさんばかり歩いているところの端に、一軒だけダンスクラブがあり、若い連中が集まるらしい。
 テレビの映像には、資料映像、書いてあったが、わざわざこの話題の為に、こんな街の、小さなクラブの映像を流すだろうか。真琴は考えた。もし本当にこの店が薬を出す、という疑いがなければ、わざわざ映像を流さないのではないか、と。真琴はとにかく行ってみれば何か分かるかもしれない、入ってみようと考えた。
 真琴はそう考えることで少し楽になった。自分だけが調べることが出来ないで、周りのお荷物になっているような気がしていたからだった。これで堂々と、こんなことを調べたと言える。


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