真琴は全部の感覚を働かせ、体を乗っ取られていないか確認した。
 それは頭痛の原因がヒカリか、田畑なのかを確認する為だった。
 今、奪われている感覚はない。
 とすれば、さっきまでの田畑とは違う。田畑の【鍵穴】から這い出てきたエントーシアンが、田畑本人と入れ替わりつつある、ということだ。
 表面上、本人と、エントーシアンで、その行動があからさまに変わらない。この田畑という人物は、本人の意識の時から、エントーシアンと同じような言動をとっているかのようだ。
 いや、その表現は本末転倒だ。
 本人の行動と同じような行動をエントーシアンがとる、というべきだ。
 田畑まさみの精神とエントーシアンが癒着してしまっているのだろうか。
 そういう点が、今まで戦った娘(こ)達とは質が違う感じがしていた。
 真琴は、田畑の押し付けてくる体を押し返しながら、唇以外での直接接触強化の為、背後に手を回し、田畑のパンティに手を突っ込んだ。入れる時点でキツかったから、相当意識しない限り抜けないだろう。
 次にはく時、下着がゆるんでるかもしれないけれど……ごめん。
 そう思うと、真琴は夢の中へ没入していった。
 クラブ・ヴェトロのフロアには、中央で踊る、肩出しの服の田畑まさみがいた。
 意味不明で、音だけがやたらおおきい音楽の中、首、肩、腕はだらんと力が抜けたようなのに、足腰だけがリズムに合わせてうごめいている。
 そこに緑髪の真琴が現れた。
 緑髪の真琴も、同じステップで踊っているが、違うのは上半身もそれなりに音楽に合わせて動きを付けていることだった。
 真琴、緑髪の真琴、田畑まさみ。
 緑髪の真琴(ヒカリ)が、田畑の味方なのか、こっちの味方なのか、向いている方向もバラバラで、判別出来なかった。
 こちらは一人。
 まずはヒカリが敵だ仮定する。
 次に、田畑の姿をした者が、本人か、エントーシアンか。
 エントーシアンだとすると、二対一。確実に負ける。
 エントーシアンでなければ立場は逆転するが、田畑本人は戦力にはならないだろう。そう考えると、結局、ヒカリとの一対一の勝負になる。
 ただ、田畑のエントーシアンが来るのは、遅かれ早かれ間違いないのだから、不利にならない為に、速攻で決着をつける必要がある。
 けれど、ヒカリが味方なら、有利不利が完全に逆転する。
「ヒカリ!」
 真琴は呼びかけていた。
「ヒカリ! 返事をして」
 そう呼びかけられた緑髪の真琴は、目を閉じてダンスに集中しているのか、反応する様子がなかった。
「迷ってるのかよ」
 後ろから、声を掛けられた。
 真琴は振り返ると、驚いてしまった。
「え?」
 ロン毛の白シャツだった。
 手足も長く細いが、体も細かった。
「迷ってるのか」
 何故、この男がここにいるのだろう。
「どっか行ってよ!」
「考えてみればすぐ分かるよ。どのみち戦わなければならないって」
「この状況で、人類の為に戦えるのは、結局君ひとりだ」
 男もフロアへ歩いて行くと、音楽に合わせて体を動かし始めた。
 なんだっていうんだ。
 ボクはひとりで戦え、ということか。
 なんでそんなこと知っているんだ。
「あんた何者!」
 可能な限り大きい声をだした。
 聞こえたのか聞こえないのか、分からなかった。男はヒカリと同じように目を閉じてフロアで踊っていて、真琴の問いかけには答えなかった。


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