香坂を送っていき、クラスに戻ると間もなく授業が始まった。休み時間に美沙に聞いてみるが、やっぱり同じ答えしかなかった。なんであのWiFiにつなぐんだろう、とあかねと同じ疑問をもったようだった。
 美沙には、二人でまとめたノートを笹崎先生が一旦預かることになった話はしなかった。笹崎先生の話を美沙にするのは、何か気がひけたからだ。
 ただ、美沙と話している間にも、女バスの連中が声を掛けてきた。それらは多かれ少なかれ、投票の話だった。どうまとまったのか、とか、どうなるんだ、という話だ。あかねは、笹崎先生の名を出さずに、放課後話すから、と行って追い返した。
 聞き耳を立てていいるのか、見張っているのか、休み時間になると神林達が常にあかねの視界にいた。そのせいもあり、余計に女バスの子達に話が出来なくなっていた。
 放課後になって、あかねは急いで理科準備室へ向かった。
 理科室での授業がまだ終わっていなかったようで、笹崎先生はまだ理科室の方にいた。生徒も残っていて、実験器具を洗ったり、しまったりとバタバタしていた。
 授業はどうやら下の学年らしく、香坂の姿が見えた。あかねが手を振ると、香坂は小さく会釈をした。
 授業が終わると、笹崎先生があかねに気づいたようで、理科準備室で待つように手で合図された。
 あかねは理科準備室に回ろうとするところで、香坂が出てきた。
「先輩、何か判ったんですか?」
「あ、ごめん。まだなんだ」
「そうですか……」
 香坂は沈んだ顔になった。
 あかねは、悪いことをしたなと思った。私が顔を出したことで、期待させてしまったのだ。
 肩を落とした姿に、本当に申し訳ない気分になったあかねは、軽く体を寄せて、香坂の頭を撫でた。
「ごめんね」
「いいんです先輩」
 香坂は自然とあかねに抱きついていた。
 年齢は離れていないのに、まるで自分が母親のような雰囲気になっている。
「ほら、授業終わったんでしょ」
「もう少しこうしていたいです」
「あれ、岩波さん?」
 後ろから、笹崎先生の声がした。
 あかねは振り返らずに答えた。
「笹崎先生」
「どうしたの、香坂さん」
 香坂は顔を上げて、あかねから離れた。
 そして、あかねも笹崎先生の方に向き直った。
「岩波先輩に相談に乗ってもらっていたんです」
「そうだったの。そういえば二人ともバスケ部だったわね」
 今ここで笹崎先生に聞こうと思っていたことを話そう、とあかねは思った。
「先生、相談というのは、香坂さんの『リンク』に変なメッセージが来るように……」
 急に香坂はあかねの後ろに隠れるように回った。
 なんだろう、と思いながらも、言葉をつないだ。
「……なってしまって、なんとかならないかって」
 笹崎先生は、後ろに回った香坂の顔を見るように体を傾けて言った。
「そう。難しいわね。スマフォのOS分かるかしら?」


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