真琴は鏡に映る自分の顔を見ながら、どうやってヒカリを田畑を引き離して戦うことが出来るのかを考えていた。
 方法を何度も何度も考えるが、全て失敗するイメージへつながった。
 真琴は、考えるのを諦めて、もう一度自分の記憶にある、最も強い姿で戦うことに決めた。
 化粧室を出ると、フロアへの重い扉を蹴り開け、真琴は中へ飛び込んだ。
「お前がエントーシアンか!?」
 急に音楽が鳴り止み、真琴の声がフロアに響いた。
 踊っていた人々の動きが止まり、一斉に真琴の方を振り返った。
「さっさと正体を現せ」
「くっ…… フフフ…… 何を言い出すかと思ったら……」
 田畑が笑いだした。
「勝てるつもりなんだね。あんたは一人だよ。ヒカリとやらはこっちの味方だ」
 真琴はこの『ナリキリ』を押し通すことに決めていた。
 だからヒカリが改めて敵だと知らされても動揺しなかった。
 フロアの蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「やはりお前がエントーシアンだったな」
 そう言って、バッグからドライバーを取り出し、体に当てた。
 ドライバーからベルトのよう金属が伸びて腰に巻かれた。
 すると右手に金属製細い棒が現れた。それはキャップされた万年筆か、ボールペンのようだった。
 キャップをねじって赤いラインと本体の矢印を合わせた。真琴はそれをドライバーのくぼみに差し入れると、静かに言った。
「変身」
 真琴の顔にパズルのピースが埋まるように仮面が作られていき、肩、胸、背中、肘、膝、足と次々にアーマーが体を覆っていった。
 どこからか、強い風が吹き、マフラーをなびかせた。
 田畑が言った。
「この世界では、姿形など無意味だぞ」
「それはどうかな」
 真琴は言うなり、フロアの天井へ飛び上がり、天井につくなり、天井を蹴って、田畑にキックを浴びせた。
 田畑は判断が遅れて、避けようと下がり始めにキックを喰らい、必要以上に後ろへ飛ばされた。
「これはボクがこの姿だから出来ることだ」
「別に格好を変えなくても出来るんだよ」
 田畑も同じように天井すれすれにジャンプすると、直前で前転し、真琴と同じように天井を蹴って蹴り込んできた。
 真琴は体をひねり、いなすように拳でその蹴りを払った。
「分からないのか。これはボクの不利な体重をカバーし、運動能力を高めているのだ」
 真琴はそう言うと、右、左と交互に拳を繰り出した。
「元の体のパンチ力とは比較にならないぞ。喰らったら、壁をぶち抜いて向こうまで吹っ飛ぶ」
 田畑は、上体をそらし、腕で払い、フットワークで下がりなら真琴の攻撃をかわした。
 真琴は一瞬左足の踏み込みを遅らせ、さらに一歩奥に踏み込むと、右ストレートを放った。
 田畑は逸らした上体が戻るところの為、避けきれないと判断し、腕を十字に合わせてブロックした。
「ん!」
 左腕を引きつけ、右腕を限界まで振り切ると、田畑はブロックしたまま吹き飛んだ。
 吹き飛んだ田畑は、厚いフロアの壁を破り、姿が見えなくなった。
「これで終わりか」


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