崩れている壁の向こうに人影が見えた。
「……ふん。ちょっとビックリしただけだよ」
 壁の穴から田畑が入ってくると、
「こっちだってその程度のことは出来る」
 田畑は左手の拳を右のてで包み、胸の前で何度か叩くような仕草をした。
 田畑の視線が、真琴以外の何かを追っているような動きをしていることに気づいた。
「!」
 ヒカリが背後から近づいていたのだ。
 気付いた時には遅かった。後ろに回ったヒカリは体を抑えようと、真琴の腋から腕を通そうとした。
 しかし、今の真琴の腕の太さと、背丈の大きさに対して、ヒカリは小さすぎた。
 真琴が腕を払うと、ヒカリは崩れるように倒れてしまった。
「どうやら『ヒカリ』は戦力にならないようだな」
 真琴は田畑にそう言うと、田畑は言った。
「戦力にはならなかったが……」
 田畑が再びヒカリに何か合図したようだった。
「役には立ってもらう」
 真琴の顔面を撃ち抜くようなパンチが繰り出された。その腕は伸び、あっという間に二人の間合いをゼロにした。なまじ人間の姿をしている為、限界を超えて伸びてくる腕が薄気味悪く思える。
 真琴は体を低くしてかわそうとした時、背後にいるヒカリが目に入った。
 そして、慌てて手で相手のパンチを受けるように差し出した。
「!」
 真琴がズラした田畑の拳は、ヒカリの頬をかすめ、更にその先へ伸びて行った。
「お前が避ければ、そのままヒカリに当たるぞ」
 ヒカリは敵だ。
 だから、ヒカリをかばう必要はないんだ。
 真琴はその言葉を、心の中で何回も繰り返した。
 ここは心と同一の世界ではないのだろうか、この言葉はヒカリに届いているのだろうか。
 真琴は思った。
 ボクの味方になって、ヒカリ。
 ボク一人じゃやっぱりダメなんだよ。
 一緒に戦って。
 ヒカリは一人でも大丈夫なの。
 ずっと二人だったじゃない。
 お願い。
 ドン、と鈍い音が響いた。
 真琴が、田畑の蹴りに反応しきれず、脇腹で直接受けてしまったのだ。
 真琴とヒカリは弾き飛ばされたように、後ろへ転がった。
 ヒカリにはダメージが無かったようで、すっと立ち上がった。
「ヒカリ! 危ないからここから逃げて」
 真琴はヒカリにそう言った。
 ヒカリは倒れている真琴を見つめているだけだった。
「面白いな。お前たちは。憎しみ合っているんじゃないのか。後ろの女ことなんて、放っておけばいいじゃないか」
 真琴は脇腹を抑えながら、片手をついて立ち上がると、ドライバーからスティックを抜いて、キャップを回した。
 黄色いラインを選んでセットすると、ドライバーから声が聞こえた。
『ディフェンシブ』
 真琴を覆うアーマーの光る縁取りが、黄色く変わった。
「ヒカリが逃げないなら、守るしかない」
 ヒカリの前に回り、両腕、両足を軽く開いて立ちはだかった。



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