ヒカリはまるで自由気ままに動き回り、真琴はそれをカバーするように田畑の攻撃を打ち払った。
 何回かに一回、ヒカリではなく直接真琴の急所を狙ってくるので、守っているヒカリの動きとズレが出来てしまう。ズレると今度はヒカリを狙って攻撃してくる。真琴は慌てて体を伸ばし、飛びついて攻撃を弾き飛ばす。
 そうやって真琴は跳ね回るヒカリを守り続けていた。
 終わりは見えなかった。
 真琴は次第にヒカリを守る意味があるのか、わからなくなっていた。
「ヒカリ!」
 真琴は言った。
「ヒカリ! ボクを助けて」
 何を言っているのだろう。
 ボクがヒカリを守っているのに。
「ヒカリ、ヒカリも変身して!」
 何を言っているんだろう。
 ボクはもう気が狂い始めたのかもしれない。そんなこと言ったって何にもならないのに。
「お願い!」
 そう言って、真琴は顔にくる攻撃を受けようと腕を顔の前にクロスさせた。
 しかし、田畑の伸びる腕は、スルリと向きを変えて真琴の腹を直撃した。
「!」
 真琴を覆っていたアーマーの黄色いラインが、急に輝きを失ったかと思うと、アーマーはブロックノイズのようになって消え去った。
 残されたのはお腹を抑えて倒れている素のままの真琴だった。
「守るどころか、本人が倒れてしまったじゃない」
 田畑は、ヒカリに向かって、真琴を殺るように指図した。
「……」
「やっちゃいなよ。そっちの体はあげるから」
 田畑はニヤリと笑った。
 ヒカリは静かに近づいてきて、足先で真琴を仰向けにした。
 真琴はまだヒカリの真意が分からなかった。足先の使い方は、これから殺そうという感じではない。けれど、助けようという気もなさそうだった。
 もしかしたら、何かを確かめようとしているんだろうか。
 ボクが本当に死にかかっているのか、どうか。
 弱っているのか、どうか。
 動物的な、勘のような何かが働いているのかもしれない。
「うっ!」
 仰向けになった真琴の上に、ヒカリは同じ向きでのしかかってきた。
 まるで幽体離脱の逆をするかのように。
 足先に乗られた強い痛みの後、ヒカリの足と真琴の足の影が一致した。
 ヒカリは私と融合しようとしているのだ、すなわちそれは真琴を殺すことと同じだった。
 みるみる内にその重ねた部分から一つに合体していった。
 足首、ふくらはぎ、膝、ふとともも……腰、すでに重なった所の感触は全てなくなってしまっている。頭が重なった瞬間に、残りの感覚もすべて奪われてしまうのだろう。
 真琴はまだ動く腕で、ヒカリの背中を押して抵抗した。
 しかし、腰が徐々に融合し始めると、単純な腕の力ではどうにも抵抗ができないほどの力であることが判った。
 もう、無理だ。
 真琴は諦めるしかなかった。



 ーーー
いつもありがとうございます。
お手間でなければクリックをお願いします→にほんブログ村