体育館に入ると、いつも通りに部活が始まった。笹崎先生が来るか、それを待っているのかと思って緊張していたあかねは、そんな調子で始まった部活に拍子抜けしていた。
 体育館を軽く走りながら、皆でいつもの掛け声を出していた。
 町田と神林、山川も普通に部活に参加しているし、あかねに対して睨みつける訳でも、顔を合わさないようにするでもなく、普通に笑い、普通に接していることが不思議だった。
 あかねは、町田、神林、山川とは、もっと、憎しみあって当然だと思っていた。だから、私が部活に出るなら休むだろうし、逆に参加したいなら私を休ませるだろう、と思っていた。それなのに、まるで昨日の暴行はなかったかのように、平然と部活を続けている。
 こんな皆がいるところで、あからさまに敵対しているような姿勢でいては、怪しまれるだろうし、それは彼女たちの本意ではないのはわかる。
 彼女達のその態度が、あかねの方が、返って腹立たしく感じていた。
 アップが終わると、部長が何かに気づいたらしく、手を上げて集合を掛けた。
 部員全員がすぐに気づいた。
 笹崎先生が体育館に入ってきたのだった。
「練習止めてしまってゴメンナサイ」
 笹崎先生が話し始めた。
「まず挨拶した方がいいかしらね。普段顔を出していないし」
 橋本部長が号令を掛けた。
「気をつけ!」
「あ、そういう意味じゃないのよ」
 部長が笹崎先生に振り向くと、笹崎先生が言った。
「ごめんなさい。続けて」
「礼!」
「よろしくお願いします!」
 全員が頭を下げた。
「はい、じゃあ、みんな座って」
「……」
 橋本部長が何か言いたげに先生の方を振り返ったが、何も言わないまま、体育座りした。
「まずは私が誰か、皆に説明しないといけないかな、と思ってね」
 笹崎先生は話し始めた。
「正直に答えて。私が誰か知ってるひと。名前とか、担当学科とかじゃなくて。どうしてここに来ているのかということ」
 先生が部員を見渡した。
 あかねが見たところ、半分は手を上げているようだった。それのほとんどは、先輩方だった。
「そうよね。三年生はギリギリ知ってるかな。二年生、一年生は知らない人の方が多いよね。もちろん、部活に来ない私が悪いんだけど」
 笹崎先生は少しすまなそうに頭を下げた。
 あかねは、笹崎先生の一挙手一投足に注意を払った。
 単に投票の事をどう話すのか、だけではなく一対一の時には出来なかった、第三者視点から、先生の色んな所作やパーツを見ることが出来るからだった。
 笹崎先生は、あかねが朝着替えを覗き見していた時と同じで、ジョギングをするようなスポーツタイプのレギンスにショートパンツ、ピッタリ目のスポーティな上着を着ていた。
 いずれもフェミニンな色使いであかねはそういうファッションセンスと担当科目やスマフォ知識のギャップで萌えてしまいそうだった。


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