女バスの顧問なのだから、これくらい当然、ということをやってのけただけだったが、歓声と拍手が巻き起こった。
 あかねはほっと胸をなで下ろすと同時に、先生のシュートがちゃんと見えてなかったような気がして、目をこすった。
 シュートというか、笹崎先生のゴール近くでのジャンプが、何かふつうのジャンプとは違って、何かフワっとしたジャンプにみえたのだ。
 あかねの脳内で補正されただけではなく、何か本当にそういう要素があるような気がする。体が落ちてくる時の空気抵抗というか、体重がありえないくらい軽いとか。
 部長は落ちてきたボールを拾うと、今度は反対にいる先生にパスした。
 先生は逆から走り込んできて、逆手でレイアップした。そしてまたシュートが決まった。
 いや、フワっとしているというか、ジャンプ力がすごいのだ、とあかねは思った。単純に対空時間が長いのだ。だからフワっと見えるのだ。これは、遠山美樹先輩の動画をみた時に感じた事だった。
 橋本部長も期待以上に先生が出来るからか、もう一度先生にボールを渡すと、ディフェンスの動きを始めた。先生と部長の1ON1だ。
 笹崎先生がドリブルから、横へ動いて前を塞いだ部長をかわすようにくるりと方向を変えたかと思うと、またすぐにゴールへ向きを変えた。部長が一瞬対応が遅れたところで、強引にジャンプシュートを打った。
 ボールは高い弧を描いてスッポリとリングを通過した。
 着地と同時にもう一度ふわりと、先生の肩で長い髪がはねる。部長は驚いたような顔の後、ニッコリとほほえんだ。
 部員の歓声と拍手はさっきの倍どころか、三倍、四倍になっていた。
 ヤバい。
 あかねは興奮していた。
 美樹先輩のプレイを見て以来の気持ちだった。
 あくまで女の子らしく、かつ、バスケットのプレイとしても成立するレベル。
 もともと女バスの連中は、あかねと同じように遠山美樹先輩のプレイにひかれてここにいる連中が多いのだろう、と思っていたのだが、それが今日のこの笹崎先生のプレイへの歓声や拍手で確信に変わった。
「はぁ……はぁ……」
 呼吸が乱れている笹崎先生は手をあげてから、言葉を繋いだ。
「はぁ……ちょっと……休憩。休憩したら説明するから」
 体を屈め、手を膝について息を切らしている。
「先生やりますね。すこし油断してました」
 部長が近づいて、そう言った。
「油断しててもらわないと、現役じゃないんだから、二度とあんなの出来ないわ」
 先生は少し顔を上げてそう言うと、微笑んだ。
 あかねはドキドキした気持ちが止まらなかった。これから笹崎が説明することで部員がどういう反応を示すか、とかそういうことは頭の片隅にも残っていない。
 あかねの視線は、笹崎先生に釘付けだった。
 うっすらと汗をかいた肌と、深く呼吸する度に見える体の起伏を飽きることなく見続けていた。いっそ近づいてその息づかいそのものを唇ですくい取ってしまいたい気持ちになった。


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