ボクとヒカリはどうすれば、意識を分離出来るのかを考えていた。田畑との共通の夢の中ではなく、互いの意識同士のやりとりを使って。
 ヒカリは言う。
『弱ってきてから考えよう』
 真琴はその考えに反対した。
『それは危険な気がする』
『分離させる方法は分からないんだよ』
 二人の間を、田畑の伸びる腕が通り抜ける。
「ほら! とにかくおとなしくさせるのが先だよ」
「何をしようが分離なんかしない」
 田畑はそう言った。
 真琴はどうして自分たちの世代ばかり、しかもこの地域の女の子ばかりが【鍵穴】となっているのか疑問だった。
 田畑は特に、こちらが気づく前の短期間の間に全くどちらの意識か分からないほど癒着してしまっている。
 真琴はヒカリに言った。
「なぜこんなに短期間に融合してしまえるの?」
「短期間?」
 その声が聞こえてしまったらしく、田畑が先に反応した。
「……そう。あなた達、何も分かっていないのね」
 田畑は笑った。
「我々の勝ちだ」
 そう言うと田畑は四つん這いになった。
 何をしているの分からないまま、何も対応出来ないでいると、急に足下から田畑の手が飛び出して来た。
「しまった!」
 真琴とヒカリは足を掴まれて動けなくなっていた。田畑は単に四つん這いになっただけではない、手も足も地面に突き立てていたのだ。
「足はどこ!」
 ヒカリが後ろを向いた時は遅かった。
 手とほぼ同じ位置から、足が蹴りあがってきた。真琴もヒカリも、苦痛に顔を歪めた。
 真琴は戻ろうとする田畑の足を取り、抑え込んだ。ヒカリは、足を取っている田畑の手と腕を叩いてはずそうとしている。
「ヒカリ、ボクらの出会いはいつだった?」
 確か、小学校の頃からこの頭痛を知っている。だから、たぶん、小学校の頃……
「思い出話をするなんて、覚悟を決めたのかしら」
「まだ負けてないでしょ?」
 地面に引っ込まないように押さえている足が、逆に伸びてきて、真琴の体を蹴った。
「これでも?」
 田畑の足が何度も蹴り上げてきて、真琴の体を痛めつける。
「小学校の頃だよ。低学年、だった」
 七年前。
 思い出した。
 ボクとヒカリの違い。
 ヒカリから受けるこの頭痛。
 ボクは肉体の痛みを受ける。
 これだけは分離できないのだ。
 感覚を奪っても、肉体の痛みから逃れられない。
 これがヒント?
「肉体の痛み?」
「それが正解なのか、ボクには分からないんだよ」
 ヒカリが言った。
 しかし、やってみるしかない。



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