影の動きから、扉から男が二人、入ってくるようだった。こちらに感づかれないよう、仕切りを閉めたのだ。
 真琴はどこまで時間を引き伸ばせれば、警備の人や男性教師が助けてくれるのだろう、と考えた。早く来てくれ、誰でもいいから助けてくれ。
 男子生徒は、大きな声を出した。
「だあれもいないのかあ!」
 仕切りに近づいてきた。
「だぁれぇもぉ……」
 別の生徒も声を出しながら、仕切りに手をかけた。
 バタン、と仕切りが倒れた。
 男子生徒の一人が、仕切りを引き倒した。
 ベッドがひとつ、男子生徒の前にさらけ出された。
「だぁれえ、も」
「いなぁい」
 真琴と保健室の先生は、二つ目のベッドの下に潜り込んでいた。ギリギリのスペースしかなかった。這って逃げたり、転がりでることは出来ない高さだった。これで見つかったら、逃げ場はない。
「べぇどに、べぇどにいくぅって」
「ぞぉだぞぉだ、ぞういっだだ」
 見るからに誰も寝ていないベッドのカバーを、一人の生徒が引き剥がした。
「いなぁい」
 もう一人の男子生徒はジャンプしてベッドに飛び乗った。
 ベッドが老朽化しているのか、もの凄い金属音が部屋に響いた。
 自分の手で口を抑えていたが、保健室の先生から思わず声が漏れる。
「(ヒッ)」
 小さな声であったが、男子生徒に感づかれたようだった。
「ひっ、って。ひってきこえぇたぁ」
 誰か助けて。
 真琴を頭痛が襲った。
 こんな時に……
 ヒカリは真琴の視界、ベッドと床の隙間から見える世界、にぼんやりと姿を重ねて現れた。
『ボクならこの状況を逆転出来る』
『いらない!』
 真琴は拒否した。
 二つめの仕切りが倒された。
 隣で同じように仰向けになっている先生は、小刻みに震えている。
「い゛るだろうぅ、ごごにい゛るだろう」
 彼らは正しく唇を動かすことが出来ないようだ。表情や体の動きが普通の神経を通じて制御されていないのでは、と真琴は思った。
「イヒャ、いひゃよ」
 真琴は声のする方を見た。
「!」
 真琴は、男子生徒に腕を強く引っ張られ、ベッドの外に引きずり出されていた。
「いひゃかよ」
 もう一人の生徒もベッドの上に上がって真琴を引きずり出した方へとやってきた。
「しぃね」
 男子は飛び上がって、足を曲げると、下りながら足を伸ばしてきた。
 着地目標は真琴の顔だった。
 ガツン、と大きな音がなった。
 真琴は体を折り曲げ、顔面を踏みつけられるのを回避した。
「おぉれぇ、おれぇもぉ〜」
 真琴はベッドの上の生徒に気付いた。
 男子生徒はベッドからジャンプして、真琴に跳びかかってきた。




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