続いて真琴は、男子生徒の開いた足の、前に出ている右足を狙って蹴り込んだ。
 男は蹴りをスッとかわしたかと思うと、瞬間に間合いをつめていた。
『マズい』
 ヒカリの声と同時にお腹に大きな衝撃を受けた。
 間合いをつめたダッシュ力をそのまま利用し、真琴の体に掌底打ちを繰り出してきたのだ。
 真琴は寸前で気づいて、少し体を引きつつあったとは言え、その打撃で四、五歩ほど後ろに吹き飛んだ。
『ヤバい。打撃の重さが違う……』
 ヒカリがそう言うと、頭痛が強くなった。
『真琴、ゴメン、譲って』
『イヤだ! ボクの体だ! やめろ!』
 真琴は抵抗したが、腹部に走る強烈な痛みから逃げようとする意識が働いてしまった。
 真琴の目の前は暗闇に包まれた。
 音すらない世界。
 立っているのか、座っているのか、寝ているのか…… どこにも触れていないような、浮かんでいるのか落下しているのか。
 すべての感覚がなくなっていた。
 ヒカリに体を奪われたのだ。
 何も想像することが出来ないまま、真琴の意識はフリーズしてしまった。

 しばらくして目が覚めると、そこは車の中だった。よく分からない設備が装備されている。普通の車ではない。目の前には白赤のヘルメットを被った男がいて、何かボクに呼びかけている。
「気が付きましたか? お名前を」
「新野真琴です」
「わかりました」
 そう言って男の人はうなずいた。
 真琴は、起き上がろうと意識したが、全く体が反応しなかった。
 ヒカリに感覚を奪われているわけではなく、すべてコントロール下にあるのは感じていた。
 しかし、ピクリとも動かない。
 少し拘束するようなベルトが巻かれていることは感じた。しかし。それにしても。
 やがて真琴の意識が充足してくると、それが極度の披露によるものだと分かった。
「あなたは他の生徒と違って特に怪我はないようです。ただ酷く疲れて立ち上がれないようです。だから、動こうとしなくていいです」
 運転席側の無線機から病院の名称が聞こえる。
 救急車か。真琴は思った。
「ご両親への連絡は、学校の方にしてもらっています。ご心配なく」
「あの……」
「あ、しゃべらないでじっとしてください。病院で、先生の診断が終わるまでの辛抱ですから」
 腹部に打撃を受けて、完全にブラックアウトした以降、記憶が全くない。全身の強烈な疲労感から、ヒカリがなんとか切り抜けたとしか考えられない。これだけ疲労していると、戦いで傷を受けたとしてもハッキリとは分からないだろう。ただ、骨折や酷い打撲とかはなかったようだった。




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