真琴はヒカリに状況を聞こうと思うのだが、全くヒカリにアクセス出来ない。いつも一方的に出てきて、一方的に消えていく。呼び出して来るときもある、こないこともある。いろいろと頭のなかで考えを巡らせるが、ヒカリは現れてこないし何も思い出せなかった。
 救急車はいつの間にか止まっており、音がしてうしろのハッチが開けられた。
 真琴は寝たまま車両から降ろされ、診察を受けた。意識、瞳孔の確認、血圧の測定、部屋を移して、心音の確認があり、問診があった。
「……そう。全身がだるいが分からないけど、相当暴れたらしいから当然なのかな」
 暴れた?
 真琴はその表現に驚いた。
 単純にヒカリがあの男子生徒をやっつけたのではないのか?
 それを暴れた? と表現するだろうか。
 もっと他に何かあったとか。
「暴れた…… って先生どういうことですか?」
「?」
「どういうことを聞いていますか?」
「君、もしかして、記憶が……」
「……」
 ヒカリ、頼むから教えて、このままじゃ検査で帰れなくなってしまう、真琴は思った。
 診察室の扉が開いた。
「真琴!」
 母だった。
「どうしたの? 何があったの?」
「お母さん、ちょっと待ってください。今、記憶が混乱しているようなので、そのことは後にしてください。安静に。いまは安静にすることが肝要です」
 先生が言ってくれて助かった。
 とにかく、いそいで情報を掴まなければならない。
「どういうことですか?」
「男子とやりあったようですから、もしかすると軽い脳しんとうを起こしているかもしれません。意識がハッキリしていますし、検査上問題はありませんが、現時点では記憶の混乱もありえます」「そうですか」
「今日は入院の形をとらさせていただきます。極端に疲労しているようですし、場合によっては点滴を少しした方が良いかも」
「真琴、口、見せて、あーん」
 不意打ちだったが、体が勝手に反応していた。
「ふーん、特に切れてたりはないのね。じゃ、ご飯食べれるでしょ?」
「ちょっとお母さん」
 先生はそう言って母を診察室の外へ引っ張り出した。
 二人がいなくなった診察室で、真琴は一人天井を見つめた。
 ヒカリは何故出てこないのか。
 真琴は自分の中に問うていた。

 翌日の午前中に簡単な検診があり、真琴は退院することが許された。体中の筋肉痛が、まだ寝ていたいと悲鳴をあげていたが、退院出来るだけであって、このまま学校に行くわけではない。今日は安静にしていなければならないのだ。
 真琴は、まだヒカリから失った時間の記憶を聞き出せていなかった。
 会計を済ませると、母がやってきて帰ろうと言った。
 真琴が立ち上がると、
「あんたの体育祭だけどさ?」
「!」
 そうか、このまま安静にしろと言われるなら。
 真琴はこのまま体育祭を休んでしまえる、と思った。
「え、もしかして、そんなにビックリすることじゃないでしょ? お医者さんは出てもいいって」
「う、うん」
「あ、そうそう。真琴がぶっ倒した男の達だけど」
「……」
「全員、あっちの医大で検査、入院してたみたいなのね。だから、お見舞いに行って、謝ってきたけど。なんか、みんな何も覚えていないみたい。不思議ね。 ……一人を除いて今日退院の見込みだそうよ」
「一人を除いて?」




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