『あ、そうか、寝てるのかな?』
二分ほど時間がずれて、次のメッセージがあった。
『どのみちさっきので起こしちゃったよね。ごめんね。真琴の体の調子が良ければ、ラボに来ない? 家に車で迎えにいく』
ラボ。なにやらエントーシアンなのか、お祖父ちゃんのように意思を機械に移植する方法なのか、何かそう言ったものを研究しているところ。薫の父親が関係しているところ、だった。
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真琴はスマフォを持ち上げているのが辛くなって、体を横にした。
ちょっと前だったら、迷わずに行くと回答していた。
今は、体育祭までヒカリにはいて欲しい、という気持ちもある。まして母がくるなら、良いところを見せたい…… ありのままの自分をみせたい。このままずっとクラスメイトに嘘の自分をみせなければならない。
真琴は返事が出来ないでいた。
いきなり歯を抜く歯医者はいない。だからきっと一度言ったぐらいでヒカリを消去したりしない、真琴は根拠もなくそう思った。いや、根拠は歯医者は初診で葉を抜かない、だ。ラボが歯医者と同じことをするかなんて、誰にも分からないことだった。
画面を見つめている内、新しいメッセージがきた。
『真琴、もしかして起きた?』
頭痛がした。
『真琴、行ってはダメ』
スマフォが振動した。着信していた。薫だった。
『真琴、ダメよ』
真琴は応答した。
「薫?」
「真琴、一緒にラボに行こう。ヒカリをそのままにしておくと……」
「薫待って。ボク……」
薫の言葉を遮って、真琴はそう言った。
けれど真琴は言葉を続けられなかった。
「真琴?」
『ラボに行ってはダメ。ただ実験に利用されるだけ』
「薫…… 薫、会って。会って話したい。ラボじゃなくて」
『ラボは危険よ、エントーシアンを埋め込むなんてことは出来ないわ。適当な実験材料にされちゃうのよ』
電話をしながら、頬から枕に涙がつたって、染みていくのがわかった。
「……うん。解った。真琴、家で寝てて」
「え?」
「ラボの帰り、真琴の家に行くから」
回線が切れたノイズがした。
真琴はその答えに悲しくなったが、決断が先延ばしになったことで、安心感を感じた。
そして、再び寝てしまった。
頭が痛い。
頭が痛いよ。
誰か、なんとかしてよ。
真琴はソファにある、真琴用にはじめて買ってもらったクッションに顔を埋めるようにし、耳をクッションの端で挟むように手で抑えた。
外からのヒカリも音も、何もなくなったような世界だけがあった。
『真琴』
『ヒカリ、ヒカリちゃん? なの?』
『真琴、遊ぼう』
『ヒカリちゃん、ボク頭がいたいんだ。だから遊べない。あと、ママが仕事だから、ボクはお家でお留守番なの。だから遊べない』
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