「またさっきの鍵か。ちょっと見てこい」
 君島はさっきの扉の状態を見に行かせた。
 これはある種フラグだ。ドラマによくあるパターンだ。最初の錠の故障がフリで、今度のは誰か、ボクの味方が助けにくるのだ、そうに決まっている。
 一方で、もしそうだとしたら出来すぎている、とも思った。
 渋谷が助けにくるとか、メラニーが、とか、熊が白衣を来たような丸眼鏡の男が…… とか。とにかく都合のよい展開になるとしたら、もしかすると、ここは現実ではなく、夢なのではないかということだ。
 だとして、いつから夢だった?
 真琴は台の上に縛りつけられ、強い光に目がくらみながら考えた。
 田畑に薬を飲まされた時から、夢の中のままなのかもしれない。その根拠はヒカリに体を制御されると、通常より運動能力があがる、ということだった。
 そんなことがあったなら、もっと早くそういうことが起こってもいいはずだった。ヒカリと真琴の関係では今起こったかもしれないが、上野さんや品川さんにそれが起こっていても不思議はなく、そうだとしたらもっと世間の注目を浴びているはずだ。
 だから、最近起こった非現実的な内容は夢の中なのかもしれない。
「どうした、何をやっているんだ。もし、錠が直らないなら、代わりにお前達二人で見張りをしろ。あいつが戻ってこないとこのマシンが動かせん」
 部屋には君島と真琴だけが残された。
 君島が機械を扱えないことで、少しイメージとのズレが出来た。悪の科学者的な口ぶりだったのに、肝心の機械の操作は人任せで、自分が何一つ出来ないとは……
「泣き叫ぶわけでもないということは、もう諦めたのか?」
「ボク達はお前なんかに負けない」
「ボク達だと? 格好いいことを言っても、この状態からは抜け出せないさ。ヒカリがここに来たとしてもな」
 君島はそう言って真琴の額を指で突いた。
「んっ……」
「……なんだ。何かしたのか?」
 君島は額をついた右手を見つめた。
「何かしたのか?」
 真琴は分からなかった。
 だから何も答えなかった。
「おい! 一体この手に何をしたんだ」
 君島は右手を振り始めた。
 ヒカリ、何かした? 真琴は心の中に問いかけた。
「スミマセン」
 男が一人戻ってきた。
「電気錠が直らないので、代えのものを持ってきてもらうのですが、それまではそとに見張りを立てることにしました」
 なんだ、誰かが救ってくれるのだと思っていたのに。真琴は、心の奥で、丸眼鏡に白衣を着た男が救ってくれることを期待していた。ただ、それは現実的な救済だった。さっき考えた通り、ここが夢ならば、薫か涼子が、もっと非現実的なやり方で助けがくるはずだ。
「クソぅ! この指が」
 君島は右手首を左手で抑えるように握っていた。
「お前のせいだ! お前のせいだからな」
 君島は、真琴のそばに近づき、左手で抑えている右手が、真琴の下半身にゆっくりとおろされた。
「右手が…… 右手が……」
 そういいながら、君島の右手は真琴の体を這うよう動き、そしてジーンズのボタンをはずした。
「何するのよ!」
「お前がこの指に何をしたのか答えるのが先だ」
「何もしてない!」



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