遅い時間のせいか、いつもなら女性店員のところが、男の人がそう言った。
「?」
 薫がメニュー表を開いて何か読んでいた。
「ああ、そのステーキを頼むとライスかパンはおかわり自由って書いてあったよ」
「じゃ、大盛りで」
「かしこまりました。すぐお持ちします」
 店員がライスの皿を持って帰ると、メラニーと薫が真琴を振り返った。
「そんなに食べるんだったっけ?」
「なんか凄いお腹減ってるの」
 たしかに自分でも不思議だった。
 もしかしたらヒカリが体を使うせいかもしれないし、あの変な機械に入れられてしまったせいなのかもしれなかった。ただ、とにかくいまはお腹が減っていて、ご飯を食べたかった。
 追加のライスも食べ終わり、薫もサラダを食べ終わると、全員で甘いものを頼んだ。甘いものを食べている間は、なぜかやたら薫はボクの体を触ってきた。
 そんな薫は時折頭を手で抑えていた。
 真琴はパンナコッタを食べ終わると、薫のおでこに軽く手をあてた。
「?」
「いや、熱でもあるのかな、と思って」
「ないよ」
「けど、頭抑えてるよね」
「頭痛がするの」
 真琴は薫の瞳をじっとみた。
 そうすれば何か薫の意識の奥が見えるような気がしていた。キラキラして店の明かりを映し出すその瞳をみていても、何も感じることはできなかった。
「そう。いつから」
「デザート頼んだあたりかな……」
 真琴は【鍵穴】と接触すると頭痛がする自分のことと薫の頭痛を重ね合わせていた。
 だとしても、ボクの頭痛はない。
 ボクと接すると【鍵穴】である相手の方が頭痛になる? そんなことはない。今まで絶対にそんなことはなかった。
 というか、ボクは、さっきから薫のことを疑いすぎだ。
 疑うべきは『ラボ』だ。
「薫!」
「どうしたの? 急に大きい声をだして」
「ラボって何なんだい。なんで今日はこんなことになったの?」
「……ごめんなさい。必ず説明するから。今回の件は特にまだ私にも分かっていないことが多いから、徹底的に調査する。だからもう少しだけまって」
 そう言って薫は目をふせてしまった。
「分かってなくてもいいから、どんなことをしているかを」
「ごめん」
 そう言ったきり薫は店をでるまで顔をあげなかった。
 ラボの追求をやめた。真琴には、薫が話してくれる時を待つしかなかった。
 その晩は薫の車で送ってもらい、朝までの短い睡眠をとった。
 目覚めると、頭痛に気づいた。
『ヒカリ?』
 体を起こしてから、軽く目を閉じて呼びかけた。
『ありがとう』
 髪の色の違う、制服姿の自分の姿が現れ、そう言った。
『なんのこと?』
『昨日の探査に耐えたことよ』



ーーー
いつもありがとうございます。
お手間でなければクリックをお願いします→にほんブログ村 小説ブログ ライトノベル(小説)へ
にほんブログ村